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モーター スポーツ コラム 2019年7月29日

ガチンコ24時間スプリント。GT3規定が作り出したサバイバル・スパ24時間はとんでもないレースでした。

モータースポーツコラム by 平野 隆治
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まさにガチンコの24時間スプリント。72台ものエントリーを集めていた2019年のトタル・スパ24時間に今回初めて訪問し、そのレースを目の当たりにすることができたが、各メーカーのワークスドライバーたちが乗り込むプロクラスを中心に、降り続く雨のなかとんでもないレースが展開されていった。

もともと、このスパ24時間で使用されるGT3というカテゴリーは、アマチュア向けに生まれたものだった。各車の性能差をコントロールした徹底したバランス・オブ・パフォーマンス、ワンメイクタイヤ、そしてドライバーカテゴライズ。現在ヨーロッパはもちろん、世界的に当たり前となっている「みんな平等にチャンスがある」考え方をもとに開催されているレースだ。道具の性能はみんな一緒。ピットインの速さも基本的に決められており、基本的に差がつかないレースなのだ。

ではどこで差をつけるかといえば、ドライバーがスプリントの走りをずっと続け、コース上で1秒を稼ぎ続けること、天候を読み切り、最適な作戦の解を出し続けること、そしてミスをしてタイムを失わないこと。これを徹底してやり続けられた者だけがポディウムに登ることができる。非常にシンプルだが、とてつもなく奥が深い。特に今回は悪天候だったこともあり、それを痛切に現地で感じることができた。


今回日本人ドライバーもグッドスマイル・レーシング&タイプ・ムーン・レーシングの00号車メルセデスAMG GT3をドライブした谷口信輝/片岡龍也、KCMGの35号車日産GT-R NISMO GT3をドライブした千代勝正/松田次生と4人が参加していたが、こちらのレースに慣れている千代を除き、このレース、そしてヨーロッパの“文化”に驚くコメントが多く聞かれた(特に初挑戦の松田から)。日本では厳格にとられるトラックリミット(コース幅をはみ出してはいけないこと)、周回遅れに出されるブルーフラッグの解釈等々。

そんな文化や規定から生まれてきたのが、ヨーロッパならではのコース幅を大きく使った走り、そしてはじめから終わりまで続けられる僅差の争いに繋がるのだと感じた。純粋にドライバーとチームの力が試される。もちろん日本のレースも同様だが、ここではやはり“種類が違う”と感じられるのだ。

観客動員という面からすれば、ル・マン24時間やニュルブルクリンク24時間には及ばないものの、それでも非常に多くのファンが訪れているのを目の当たりにしたし、彼らはこのGT3という規定での絶えないバトル、迫力を大いに楽しんでいる様子だった。また、ヨーロッパのスタードライバーも数多く参戦しており、それがまた魅力にも、そしてバトルの激しさにも繋がっていたように感じる。


先述したとおり、今回日本人ドライバーは4人が参加していたが、結果こそともなわなかったものの、その走りはコースサイドで観ていても決して負けていない。ただ、ヨーロッパを舞台に戦うためには、先ほど述べたとおりの1秒を稼ぎ出すための、“許されるズル”や、そしてレースの感覚を養わなければ、このレースで勝つことはできないだろう。チームも同様で、やはり日本とはちょっとずつが違う。

その違いはヨーロッパと日本という根源的な文化圏にも由来していると思う。その意味でも、できればぜひ日本人ドライバーやチームにも、日本のファンにももっとこのレース(もしくはこの規定を使ったシリーズ)に参加して欲しいと感じた。

このシリーズで活躍できるドライバー、チームは、いずれも他のレースでも強さを誇っている。シンプルだからこそ、強さが磨かれるのではないだろうか。そして自然を活かしたこのスパ・フランコルシャンというトラックこそ、その実力試しにはふさわしいと感じる。

松田と決勝後話をしていると、「ル・マンやニュルもいいですけど、やはり本当に同じ条件で戦うここで勝つ日本車、日本人ドライバーを観たいですよね」と語ってくれた。ポルシェ、メルセデス、アウディ、BMW、ランボルギーニ、フェラーリ、アストンマーティン、ベントレー……。蒼々たる顔ぶれがそろうこのレースに、ガチで挑むジャパンパワーをもっと観てみたい。今季参戦してくれた、期待を抱かせてくれた4名のドライバー、グッドスマイル・レーシング&タイプ・ムーン・レーシング、ニッサン、ホンダにさらなる挑戦を期待しつつ、初めて体験したスパ・フランコルシャンを去ろうと思う。そして、彼らが来たる鈴鹿10時間でリベンジを果たしてくれることにも期待しよう。

文:平野隆治

平野 隆治

平野 隆治

1976年横浜市出身。モータースポーツ専門誌、サイトの編集部員を経て、2015年からモータースポーツを中心にした“自称なんでも屋”に転身。SUPER GTは10年以上ほぼ全戦現地で取材をこなしてきた。

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