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プロダクションバイクレースの最高峰「FIMスーパーバイク世界選手権」は第8戦、イギリスラウンドを迎えます。熱いレースファンがライダーを歓迎するドニントンパーク・サーキットでの伝統の戦い。「J SPORTS」では7月5日(金)〜7日(日)に開催される第8戦の模様を7月8日(月)にオンエアします。
さて、前戦のイタリア・ミサノでのレースを終えて、今シーズン破竹の11連勝でシリーズをリードしてきたアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)と4年連続のスーパーバイク世界選手権王者であるジョナサン・レイ(カワサキ)のポイント差がなんと16点に縮まりました。
序盤戦のバウティスタの猛烈な勢いを考えれば、ちょっと信じられないことですが、今年は約半分のポイントが与えられる「スプリントレース」が加わったことで、メインレースのどちらかをノーポイントで終えると即追いつかれるという構図が生まれています。周回数が短い割に意外に多くのポイントが付与される「スプリントレース」は、勝利数では1勝と加算されるため、長年2レース制のフォーマットを見慣れたファンからはあまり評判の良いものではありませんでしたが、このポイントの縮まり具合を見ると、意外と面白いポイントシステムなのかもしれませんね。
ポイントが一気に縮まった理由はミサノのレース2でアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)が序盤のトップ走行中に転倒。なんとか2点を得る14位までは追い上げたものの、このレースでジョナサン・レイ(カワサキ)が優勝したことでポイント差がレース前の41点差から一気に16点差に縮まったわけです。このポイント差は一気に逆転可能なギャップです。
そんな中、今回はジョナサン・レイ(カワサキ)のホームであるイギリスでのレース。アルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)にとってはアウェーであり、チームメイトのチャズ・デイビス(ドゥカティ)が居るものの、地元のファンはチャズの活躍を応援することになるでしょう。
ドニントン・パークは1周4kmの短めのサーキットでコース図を見るとシンプルなレイアウトのサーキットに見えますが、まるでジェットコースターのようにアップダウンする高低差の激しさが特徴です。2009年まではMotoGPイギリスGPが開催されていましたが、イギリスらしいハードボイルドなコースと言えるでしょう。
「スーパーバイク世界選手権」ルーキーのアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)ですが、グランプリライダー時代に経験があります。125cc時代にはポールトゥウイン(2006年)、250cc時代には最高位2位というリザルトを残しています。しかし、4ストロークのMotoGPに昇格した2010年にイギリスGPはシルバーストーンへと移ったため、ビッグバイクでの経験は無し。バウティスタは10年ぶりにドニントンにチャレンジすることになります。性能調整の影響もあり、若干の焦りからか転倒してしまったバウティスタはプレッシャーの中、ドニントンでランキング首位を維持できるでしょうか?
一方でジョナサン・レイ(カワサキ)は2017年に1勝したのみ。実は昨年まで独走劇でいつも勝っているイメージのレイが唯一あまり勝てていないのがドニントンパークなのです。ドニントンにはかつてのチームメイト、トム・サイクス(BMW)がドニントンマイスターとして君臨しており、4年連続でのレース1、レース2優勝を達成するほどの強さなのです。今季BMWに移籍し、前戦ミサノでは雨の中、今季初の2位表彰台を獲得しているだけに、ライバルはマイスターのサイクスを警戒してくるでしょう。特に雨が降ったら、またも大きな番狂わせが起こることは間違いありませんね。
レイのチームメイト、レオン・ハスラム(カワサキ)にとってもホームコースになりますから今季初優勝にも期待です。先日のミサノではカワサキはジョナサン・レイ(カワサキ)、トプラック・ラズガットリオーグル(カワサキ)、レオン・ハスラム(カワサキ)となんと今季初の表彰台独占。鈴鹿8耐でもカワサキワークスでトリオを形成する三人はまさに上り調子。カワサキが台風の目になるでようか。
そして、昨年のドニントンで見事に2連勝したのがマイケル・ファンデルマーク (ヤマハ)です。しかし、前戦・ミサノのフリー走行中にハイサイドで宙を舞い激しく転倒。手首などを骨折し、ミサノのレースを欠場することになってしまいました。その後の鈴鹿8耐のテストもキャンセルすることになり、せっかく良くなってきた流れが一気に止まってしまいましたが、本人はドニントンパークのレースへ出場するためにリハビリを行なっているそうです。もし仮に出場が難しい場合は元GP500ライダーのニール・マッケンジーの息子、タラン・マッケンジーが代役になるようです。
そして、左肩を負傷して欠場中のレオン・キャミア(ホンダ)はここまでの2戦を高橋裕紀(ホンダ)に託しましたが、今回の地元ドニントンパークとアメリカラウンドは代役を立てずに欠場という運びになりそうです。その分、イギリスに多くのファンを持つ清成龍一(ホンダ)に頑張ってもらいましょう。
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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