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2019年の全日本スーパーフォーミュラ選手権の第2戦が5月18日、19日に大分県のオートポリスで行われ、16番手からスタートした関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が大逆転で優勝を果たした。
レース序盤に導入されたセーフティカーの際にほとんどのマシンがピットストップを行なったが関口はコース上に留まることを選択。レースが再開されると同じ作戦を取っていた国本雄資(KONDO RACING)を抜き去り、1周あたり約1秒ずつ後続を引き離す快走をみせた。40周目にピットインしソフトからミディアムに交換するが、実質的なトップのポジションをキープしコースに復帰。本人曰く「ヒヤッとする場面は何度かあった」というものの、外から見ればほとんど危なげない走りで今季初勝利を飾った。
関口らしい快進撃が随所に見られた今回のレースだが……。その裏ではレースの進行面で混乱が続く1日となった。
当初は18日(土)午後に行われる予定だった公式予選は悪天候のため、19日(日)の朝に順延となった。しかし、日曜日を迎えると天候は変わらず大雨と強風というコンディション。その中でコースオフする車両が多発し、3度の赤旗中断になる波乱の予選となった。その結果、ほとんどのマシンがタイムアタックをできずに終わり、8台が予選不通過となった。さらに予選終盤にはセッション再開を各車が待っている際に山下健太(KONDO RACING)がピットエンドラインの白線を超えて待機列に割り込み、罰金2万円のペナルティになったことも物議を醸した。
こういった混乱の中で予選が終了したこともあり、セッション終了後から1時間30分後(11時07分)に出された予選の暫定結果に対していくつかのチームが抗議。その結果、暫定結果が改定されることになったが、14時00分から始まる決勝レースがすぐそこに迫っておた。
通常、スーパーフォーミュラでは決勝レースに向けたスタート進行が45分前から始まることになっているが、その段階で決勝のグリッドが確定していないという事態が発生。「暫定結果の改定はまだか?」「自分たちのグリッドはどこになるのか?」と情報を求め、各チームのマネージャーらがコントロールタワーの1階に集まるなど、現場は大混乱となった。
それでも、レースは予定通り13時15分からスタート進行の第1ステップとなる8分間ウォームアップが始まり、決勝も14時00分から行われることになった。結局、暫定結果の改定はスタートまで1時間を切った13時05分、正式結果は13時23分、グリッド表は13時24分に発行された。その約30分後にはレーススタート……まさにドタバタの状態で決勝レースが始まっていった。このように各チームが混乱する光景を見ながら、筆者も思わず「このまま本当にレースを始めていいのか?」とグリッド上でつぶやいてしまった。
これについては、レース後の記者会見でも話題となった。優勝した関口や2位の山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)らは「怒ったり、批判するのではなく、みんなで話し合って見直していく必要がある」と揃ってコメントした他、優勝チーム監督である星野一義監督も「第3戦の前に全部のチームが集まって、全部(話し合いなどを)やらないといけない」と、再発防止のための行動を起こしていく必要があると語った。
今回、何故このような混乱が起きたのか? どのような改善策を今後見出していけばいいのか? それについては、しっかり当日の状況を精査していく必要がある。もちろん、ドライバー・チームからの意見だけでなく、シリーズプロモーターであるJRP(日本レースプローモーション)、レースのオーガナイザーであるオートポリス、さらには大会の審査委員に関わるJAFなど、この大会に関わった全ての関係者の視点から、原因と対策を考えていかなければならない。
ただ、これらを解決していくには、途方もない時間と労力がかかる。本当にイチから議論をしていたら、第3戦SUGOまでに結論が出ないというのが、正直なところかもしれない。
ただし、絶対にあってはならないのは“何もせずに次の大会を迎えること”だ。
今回のことについて「もう終わったことだからいいじゃないか」と議論されずに終われば、またどこかで同じ混乱が引き起こされてしまう。それでは、いつまで経ってもこのシリーズは成長していかない。
最近ではF1やインディカーへステップアップしていったドライバーも多く世界中から注目が集まり始めているスーパーフォーミュラ。だからこそ、レースのレベルだけではなくシリーズの運営面に関しても、数年前とは比べ物にならないくらいレベルの高いものを周りから要求され始めてきている。それゆえに、こういった混乱が少しでもあると目立って見えてしまい、周りからも非難の声が上がってしまいがち。ただ、その声に目を背けずに、どんなに大変なことであっても立ち向かっていかなければいけないのが最高峰カテゴリーだからこその宿命だと思う。
その壁を超えられずに“単なる国内フォーミュラカテゴリー”となるのか、それとも“世界に誇れる日本の最高峰フォーミュラカテゴリー”になるのか。そういう意味で、スーパーフォーミュラというシリーズは新たな“壁”に直面しているのかもしれない。
いずれにしても、この第2戦オートポリスで起こったこと、関係者たちが経験したことは……絶対に無駄にしてはいけない。
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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