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大いに盛り上がっている電気自動車「FIAフォーミュラE選手権」も残すところあと3ラウンド、4レース。シーズン5(2018年〜19年)の第10戦はドイツ、ベルリンのテンペルホーフ空港(約2.3km)で開催されます。今回も「J SPORTS」では5月25日(土)に行われる予選、決勝の模様を生放送でお送りします。
さて、ついに今季初の複数回優勝ドライバーが現れました。これまで8人の異なるウイナーが誕生するという「フォーミュラE」史上に残る大混戦のシーズンになっていましたが、第9戦モナコは昨年のチャンピオン、ジャン・エリック・ベルニュ(DSテチータ)が今季2勝目を達成。シーズン前半はノーポイントのレースが続き、チャンピオン争いからは完全に脱落したかに思えたベルニュがなんとシリーズランキング首位に躍り出ました。
モナコではルーキーのオリバー・ロウランド(日産)が今季2度目の2位表彰台を獲得。またも日産は優勝できませんでしたが、ロウランドはランキング8位まで上昇し、ポイント差を考えると年間ランキングでトップ5に入れそうなところまでやってきました。なかなかオーバーテイクが難しかったモナコで、パスカル・ウェーレイン(マヒンドラ)のミスを誘い出し、ポジションをあげることに成功したロウランド。今季のルーキーの中で最も活躍しているドライバーはロウランドと言えます。さて、今回のベルリンでは待望の初優勝を手にできるでしょうか。
ベルリンのコースは昔の空港を使ったサーキットで、滑走路ではなく、かつて旅客機が駐機していた敷地に作られたコースになります。他の市街地サーキットに比べるとコース幅は広い方なのでコーナリングしながらのブレーキング勝負でバトルも多いレイアウト。そういう意味では接戦の「フォーミュラE」では今季から導入された「アタックモード」をうまく使い、バトルの局面で勝負強さを見せられるドライバーがチャンピオン争いを牽引することになりそうですね。
ランキングを見てみましょう。ランキング首位は今季2勝のジャン・エリック・ベルニュ(DSテチータ)=87点。僅か1点差で2位につけるのは、ベルニュのチームメイトであるアンドレ・ロッテラー(DSテチータ)=86点で、DSテチータはこれでランキング1−2。チームチャンピオンシップではもちろん首位となっています。
ランキング3位は前戦までランキング首位だったロビン・フラインス(ヴァージン)=81点。4位にアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(BMW)=70点、5位にルーカス・ディグラッシ(アウディ)=70点、6位にミッチ・エバンス(ジャガー)=69点、7位にジェローム・ダンブロージオ(マヒンドラ)=65点、8位にオリバー・ロウランド(日産)=59点と中段あたりはポイント差もかなり接近状態。フラインス、ダ・コスタ、ディグラッシがモナコで無得点に終わったことで、トップ2の「DSテチータ」の2人は残り4戦のチャンピオンシップをやや有利に戦える状況になってきました。
ベルリンのテンペルホーフ空港は過去4レースが開催され、ウイナーは毎回違います。優勝経験があるのはジェローム・ダンブロージオ(マヒンドラ)、セバスチャン・ブエミ(日産)、フェリックス・ローゼンクビスト(現インディカー)、そして昨年のウイナー、ダニエル・アプト(アウディ)の4人。優勝はないものの、このコースで表彰台の常連になっているのが、ルーカス・ディグラッシ(アウディ)です。昨年も2位表彰台をディグラッシは獲得しました。一方でランキング首位のジャン・エリック・ベルニュ(DSテチータ)は昨年の3位が最高位となっています。
地元ドイツのドライバーとしては唯一、ダニエル・アプト(アウディ)が優勝経験者ですが、「フォーミュラE」はドイツ人ドライバーが多く、今後「フォーミュラE」の中心となっていきそうな母国ドイツの自動車メーカーへのアピールという意味でもドイツ人ドライバーたちがどんな活躍を見せるか非常に楽しみですね。
そんな中で注目はやはり日本でもお馴染みのアンドレ・ロッテラー(DSテチータ)でしょう。ロッテラーは「フォーミュラE」はまだ2シーズン目ですが、ありとあらゆるカテゴリーのマシンを乗りこなしてきた器用なロッテラーにとって、1点差のランキング2位で母国レースというのは千載一遇のビッグチャンス到来といったところでしょう。ランキング2位につけているとは言え、今季実はまだ一度も優勝がないロッテラーは何が何でも優勝を狙ってくるでしょうね。優勝はなくともリタイアは一度も無しで着実にポイントを持ち帰ってきたロッテラーは流石のベテランといった印象です。これぞルマン24時間ウイナーで、SUPER GTやフォーミュラニッポンでチャンピオン獲得経験があるドライバーの真骨頂。荒れたシーズンだからこそ活きてくるステディな走りは初のタイトル獲得に向けた最大の武器と言えます。
ヴェルニュが連勝を飾ってチャンピオン街道へのアタックモードに入るのか、それともチームメイトのロッテラーが一矢報いるか、「DSテチータ」同士のチームメイトバトルも楽しみですが、8位のオリバー・ロウランド(日産)、同点で9位のダニエル・アプト(アウディ)あたりまで大逆転の可能性は充分にあるので、一気に流れを帰ることができるかもしれません。
まさに天下分け目の戦いとなりそうなドイツでの戦いをお見逃しなく。
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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