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大激戦の電気自動車レース「FIAフォーミュラE選手権」はヨーロッパでの連戦。シーズン5(2018年〜19年)の第8戦はフランスの首都、パリで開催されます。今回も「J SPORTS」では4月27日(土)に予選、決勝共に生放送でお送りします。
さて、「フォーミュラE」のウイナーはいったい何人にまで膨れあがるのでしょう?ヨーロッパラウンドに入ってからも、その流れは止まらず。第7戦・ローマではミッチ・エバンス(ジャガー)が初優勝を飾り、7戦終えて7人のウイナーが誕生することになりました。ここまで来ると、もうプレビューコラムを書いていても誰を軸にレースを見るのをオススメするべきか、本当に分からなくなるほどの凄まじい大混戦ですね(汗)。
1シーズンで多数のウイナーが誕生するというケースは他のレースでもよくあることではあります。例えば、F1ですと、1シーズンの最多勝者数は11人。この記録は1982年に記録されたもので、レースがコンペティティブだったというよりはターボエンジンの登場によってF1のレースが変革期にあったこと、マシンに対する負荷が大きくなり、信頼性が確立されていなかったことが多数の異なるウイナーを産みました。
この年は連続するレースで9人の異なるウイナーが誕生する、というF1史上最多タイの記録が生まれた年であり、近年のF1では2012年の7人が最高(史上3番目)です。2012年のF1は開幕戦から7人の異なるウイナーが誕生しましたが、開幕戦から毎回違うウイナーが誕生するというのは滅多にないこと。まさに今季の「フォーミュラE」はそんな状況になっているわけです。
ここまでのウイナーはアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(BMW)、ジェローム・ダンブロージオ(マヒンドラ)、サム・バード(ヴァージン)、ルーカス・ディグラッシ(アウディ)、エドワルド・モルタラ(ヴェンチュリ)、ジャン・エリック・ヴェルニュ(DSテチータ)、ミッチ・エバンス(ジャガー)の7人ですが、勝てる力があるはずなんだけど勝っていないドライバーはまだまだ居ますよね。
前戦・ローマではポールポジションからスタートし、惜しくも勝利を逃して2位になったアンドレ・ロッテラー(DSテチータ)。シーズン2(2015−16年)のチャンピオン、セバスチャン・ブエミ(日産)。昨年、優勝を飾ったダニエル・アプト(アウディ)。F1から転向してきたパスカル・ウェーレイン(マヒンドラ)。そして、前戦・ローマでようやく表彰台に登ったストフェル・バンドーン(HWA)など優勝候補のドライバーが名を連ねているところが今季の「フォーミュラE」の凄さです。
そんな中で今回のパリ市街地での開催は地元フランスのジャン・エリック・ヴェルニュ(DSテチータ)に期待がかかります。先日ニュースでも大きく報じられた通り、パリのシンボルとも言えるノートルダム大聖堂が火災によって焼失しました。多くの市民が心を痛める中、地元フランス出身の元F1ドライバーであり、「フォーミュラE」のディフェンディングチャンピオンであるジャン・エリック・ヴェルニュ(DSテチータ)は何としてでも勝たなくてはいけないレースです。
シーズン4のチャンピオンに輝いたヴェルニュは昨年のパリではポールポジションからの優勝を飾っていますし、ここでの勝利をきっかけにチャンピオンシップを優位な形で進めて行くことになりました。自信を持って挑めるコースだけに、ファンブーストの人気もきっと彼に集中することでしょう。
そしてフランス出身のドライバーとしてはトム・ディルマン(NIO)も忘れてはいけません。彼は自動車産業の街ミュールーズの出身で、昨シーズンは「フォーミュラE」と併行して「スーパーフォーミュラ」に参戦。スポーツランド菅生では印象的な走りを見せて4位入賞を果たしました。非常にポテンシャルの高いドライバーです。ディルマンは今季から「NIO」に移籍し、本腰を入れて「フォーミュラE」に参戦しましたが、トップ争いに加わるには至っていないのが残念。しかし、チームメイトのオリバー・ターベイ(NIO)は2回入賞を果たしていますから、環境が厳しいわけではないはずです。地元フランスでのレースを浮上のキッカケにできるでしょうか。
そして、「日産」は日本国籍のチームですが、昨年まで「ルノー」として活動していましたし、活動の母体になっているのはフランスの名門「ダムス」のプロジェクト「e.dams」ですから、実質的にはフランスは地元と言えます。今季まだ表彰台がないセバスチャン・ブエミ、そしてルーキーながら2位表彰台を獲得したオリバー・ロウランドが今度こそスーパーハッピーな結果を残せるかにも注目が集まります。セバスチャン・ブエミはシーズン3でポールポジション獲得の実績もありますから期待大ですね。
1周およそ1.9kmのパリ市街地コースはまさにパリのど真ん中を走る美しいコース。ノートルダムの火事は非常に残念でしたが、美しい建築や美術館が多数ある観光都市パリを元気付ける走りを「フォーミュラE」のチーム&ドライバーに期待したいものです。
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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