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今年もSUPER GTは、岡山国際サーキットから幕を開けた。予選までは天候に恵まれたものの、決勝では一転。まさに悪天候のため、大荒れの展開に……。アクシデントが相次ぎ、セーフティーカー(SC)ランと赤旗の頻発で、ついには途中終了となってしまう。
絶えずエキサイティングな展開が、SUPER GTの特徴でもあっただけに、このような幕切れは少々どころか、かなり予想外ではあった。その中で生き残り、かつ結果を残せたのは、それがすなわち強いチームの証明なのかもしれない。
ニッサン勢復活! MOTUL AUTECH GT-RがPP獲得
予選の行われた土曜日は4月半ばとしては低めの温度ではあったものの、しっかりとドライコンディションが保たれた。GT500のQ1でトップだったのは、公式テストで絶好調、岡山と富士で最速だった佐々木大樹とジェームス・ロシターの駆るカルソニックIMPUL GT-R。ロシターが1分17秒103をマークし、MOTUL AUTECH GT-Rの松田次生が1分17秒165と、僅差で続く。
しかし、続くQ2ではMOTUL AUTECH GT-Rのロニー・クインタレッリが、1分16秒602とレコード更新なるタイムを出してトップに浮上。カルソニックIMPUL GT-Rの佐々木は1分16秒876で、あと一歩及ばず。MOTUL AUTECH GT-Rのポールポジションが決定した。
昨年、特にシーズン後半戦は苦戦を強いられたニッサン勢だけに、躍進を遂げられた理由としてクインタレッリは、「ドライバーが成長した(笑)。実際、すべてが良くなって、車体のセットアップ、エンジンも良くなって、もちろんタイヤも。レギュレーションで大きなことはできないけれど、細かいことの積み重ねが機能した」からだという。
3番手は連覇を狙う、山本尚貴/ジェンソン・バトン組のRAYBRIG NSX-GTが獲得。どうやら公式テストでのホンダ勢、苦戦は意図的なものだったのが明らかに。その一方で、レクサス勢はQ1突破できたのは平川遼/ニック・キャシディ組のKeePer TOM’S LC500だけで、Q2でも7番手に甘んじた。
GT300はQ1が2グループに分けられ、Aグループのトップは埼玉トヨペットGBマークX MCを駆る吉田広樹で、1分25秒393をマーク。そして、BグループではARTA NSX GT3の高木真一が1分25秒448でトップに立つ。
続いて行われたQ2では、ARTA NSX GT3をドライブするGTルーキーの福住仁嶺が、1分24秒889でポールポジションを獲得。そしてK-tunes RC F GT3を新田守男とともに走らせる、やはりGTルーキーの阪口晴南が1分24秒905を記録して2番手につけることとなった。3番手は埼玉トヨペットGBマークX MCの脇阪薫一が獲得。「GTは初めてですが、チームや高木さんにいろんなことを教えてもらい、いいクルマに仕上げてくれたので。ただ、Q1で高木さんがトップだったから、ちょっと緊張しちゃいましたけど」と福住は語っていた。
豪雨の中、RAYBRIG NSX-GTがトップに浮上!
土曜日までは好天に恵まれた岡山国際サーキットだったが、日曜日の天候は一転。それも当初の天気予報では、土曜日の未明から雨が降り始めるも、日曜日の早朝にはやんで決勝のスタートまでに路面は乾くとの予想だったのだが、これが大幅にずれ込んでしまう。実際に降り始めたのはお昼前。だが、これがマシンをグリッドに並べる頃には、いったん止んでいたから始末が悪い。そのまま天候キープを望む向きも多かったのだが……。
スタートを間近に控え、雨はまた降り始め、SCスタートでのレース開始が発表される。そして3周の先導の後、本格的にレースが始まっていく。トップはもちろんMOTUL AUTECH GT-Rのクインタレッリ。その後方では2番手争いが激しく、RAYBRIG NSX-GTの山本が、バックストレートでさっそくカルソニックIMPUL GT-Rの佐々木をかわしていた。が、その直後、GT300にアクシデントが発生。SCが導入される。
11周目にレースが再開すると、クインタレッリに山本は迫り、2コーナーで早くも逆転に成功。さらに勢いを増した雨にタイヤが十分対応できず、クインタレッリはさらにKEIHIN NSX-GTの塚越広大にもかわされてしまう。苦戦を強いられているのは佐々木も同様。13周目にARTA NSX-GTの伊沢拓也に抜かれた後、13周目のモスSでまたしてもGT300にアクシデントが発生。SCが導入されて間もなく、赤旗によってレースは中断となる。
ホンダ勢に明暗が……。優勝はARTA NSX-GTが獲得!
40分以上の中断を経て、レースはまたもSCの先導によって再開。19周目にグリーンシグナルが灯される。中断中もマシンはストレートに止められたため、もちろんタイヤ交換は許されず。せめてピットでの待機で作業が許されていれば、状況にも変化が生じただろうが、弱まることを知らぬ雨に、もはやクインタレッリはなす術もなく……。伊沢の先行を許してしまう。
これで上位はNSX-GTで独占……だったのだが、なんと24周目の1コーナーで、山本と塚越が接触! スピンしたRAYBRIG NSX-GTはサンドトラップの餌食になってしまう。これで4度目のSC導入に。さらに雨がひどくなる一方であったことから、31周目に再び赤旗が。それからほぼ30分後に、レースの中止が発表された。
また、トップだったKEIHIN NSX-GTは、RAYBRIG NSX-GTとの接触が「危険なドライブ行為」と判定され、ペナルティが課せられて14位へと降格。繰り上がってARTA NSX-GTが優勝を飾り、2位はMOTUL AUTECH GT-Rで、3位はカルソニックIMPUL GT-Rが獲得した。レース周回が規定の75%に満たなかったため、ハーフポイントとなっている。
「絶えず雨の量が多く、ウォータースクリーンでほとんど前が見えず、どこを走っているのか分からなくなるほどで、コース上に留まるのに必死でした。前のニッサン車2台を抜いたことで転がり込んできた勝利ですが、ホンダ同士のことなので素直には喜べないというか。でも、Q2で野尻(智紀)選手が5番手を獲ってくれたからの結果なので、幸先の良いスタートが切れたと思うこととします」と伊沢。
K-tunes RC F GT3がチーム地元の岡山で逆転勝利
GT300では最初にSCがコースを離れた直後に、アクシデントが発生した。5番手を走行していたHOPPY 86 MCが1コーナーでスピン。ADVICSマッハ車検MC86マッハ号の平木湧也が避け切れず接触。2台はともにリタイアとなってしまう。車両回収のため、SCが導入される。バトル再開は10周目。
トップを争うARTA NSX GT3の高木、そしてK-tunes RC F GT3の新田のペースは明らかに後続を上回り、早々に引き離すことに。そんな中、12周目の1コーナーで縁石に乗って、わずかながらも姿勢を乱した高木を、新田は逃さずとらえ、トップ浮上に成功する。
そして13周目のモスSで、2度目のアクシデントが発生。星野一樹の駆るGAINER TANAX triple a GT-R、そしてJ.P.デ・オリベイラの駆る話題のニューマシン、D’station Vantage GT3を含む3台が激しいクラッシュを喫したのだ。クラッシュパッドやパーツが激しく散乱したことから、SC出動となり、間もなく赤旗が出されてレースは中断。それぞれマシンのダメージはひどかったが、ドライバーは無事だったのは不幸中の幸いだった。
約40分間の中断の後、再びSCの先導でレースは再開されて、19周目から再びバトルが。新田と高木が逃げる状況に変化はなく、3番手を行く埼玉トヨペットGBマークX MCの脇阪も、やがて単独走行になっていく。対照的に激しさを増していったのは、リアライズ日産自動車大学校GT-Rの平峰一貴、GAINER TANAX GT-Rの平中克幸、SUBARU BRZ R&D SPORTの山内英輝による4番手争いだった。この戦いを制したのは、山内で23周目にポジションを上げた。その直後に、GT500のトップ争いで接触があり、4回目のSCランが。
結局、天候の回復が見込めないことから、31周目に赤旗が出され、マシンはストレート上に止められたまま、約30分後にレース終了が発表された。優勝はK-tunes RC F GT3が獲得。新田はGT300最多の21勝目をマークし、そして決勝を走ることはなかったものの、坂口がデビューウィンを飾ることとなった。2位はARTA NSX GT3が、そして3位は埼玉トヨペットGBマークX MCが獲得した。
「走っていても、かなりコンディションが悪くて、本当に厳しいレースでした。最初のうちは前からのウォータースクリーンで、路面コンディションが分からなかったほど。高木選手が少しミスした時に、思い切って抜くことができました。何度もSCが出て、2度も赤旗でレースが中断されましたが、そのたびに集中力を切らさないように、と自分に言い聞かせていました」と新田。そしてその走りを見守っていた阪口は「こんなに時間が流れるのが、遅いと感じたのは初めてです。僕のデビューウィンより、チームのホームコースで勝てたのが、本当に嬉しいです」と語っていた。
次回のレースは5月3〜4日に、富士スピードウェイで500kmレースとして開催される。開幕戦は波乱の連続だったが、次は爽快なバトルが相次いで繰り広げられることを期待したい。秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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