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電気自動車レース「FIAフォーミュラE選手権」はヨーロッパラウンドがスタートします。シーズン5(2018年~19年)の第7戦はイタリアの首都、ローマで開催。昨シーズンに続いて2回目の開催となるローマ市街地での戦いを「J SPORTS」では4月13日(土)に予選、決勝共に生中継でお送りします。
さて、ここまで5戦を終えて5人のウイナーが誕生となっていた「フォーミュラE」ですが、中国・三亜で開催された第6戦ではまたもや新たなウイナーが誕生。地元・中国国籍のチーム「DSテチータ」のディフェンディングチャンピオン、ジャン・エリック・ヴェルニュがついに今季初勝利を成し遂げました。
ヴェルニュは開幕戦の2位以来の久しぶりの表彰台。そして悲願の今季初優勝でランキング3位に浮上しました。混戦模様は熾烈を極めていますから、いつでもチャンピオン争いに加われる状況に。これは面白くなってきましたね。
そして、昨年、ヴェルニュとチャンピオンを争ったサム・バード(ヴァージン)がリタイアで無得点に終わり、バードはヴェルニュに54点・同点に追いつかれてしまう事態に。6戦終えて、6人のウイナーが生まれる大混戦はもちろんですが、誰一人2回以上表彰台に登ったドライバーはおらず、強烈なシーズンになっています。
そんな中、ランキング首位に三亜で3位に入ったアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(BMW)=62点が急浮上。1点のビハインドで、2位にジェローム・ダンブロージオ(マヒンドラ)=61点。以下、ジャン・エリック・ヴェルニュ(DSテチータ)=54点、サム・バード(ヴァージン)=54点、ルーカス・ディグラッシ(アウディ)=52点、エドワルド・モルタラ(ヴェンチュリ)=52点と続きます。第7戦・ローマの結果次第ではさらなる大混戦になりそうな状況になってきました。
巨大自動車メーカーのワークスチームで上位6人に居るのは、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(BMW)とルーカス・ディグラッシ(アウディ)だけというのも全くの予想外です。「ジャガー」や「日産」は前半戦とても苦しんでおり、「ジャガー」に至ってはついにチャンピオン経験者のネルソン・ピケJr.をアレックス・リンにリプレースすることになりました。
とはいえ、「日産」は新人のオリバー・ロウランド(日産)が三亜でポールポジションを獲得。決勝ではヴェルニュに先行されてしまいましたが、2位でフィニッシュし、「日産」にとってようやく初の表彰台を獲得することになりました。これはヨーロッパラウンド開始に向けてはポジティブな要素になったと思います。ヨーロッパの初戦となるローマで「日産」が勝利できれば、さらにシーズン5は面白さを増すでしょう。
さて、今回はローマ市街地での開催となりますが、昨年のポールポジションはフェリックス・ローゼンクビスト(現インディカー参戦中)で、サム・バード(ヴァージン)が優勝。そして表彰台はディグラッシ(アウディ)とアンドレ・ロッテラー(DSテチータ)が獲得という結果になった昨年のレースでしたが、今季はマシンもレースフォーマットも大幅にかわっているのと、勢力図にも大きな変化があるので、正直言って昨年のデータはアテになりません。
では、イタリアで注目すべきドライバーは誰でしょう?実は、意外なことに今季の「フォーミュラE」には地元イタリアのドライバーが居ないのです。イタリア人ドライバーに向いてそうな印象の「フォーミュラE」ですが、今までイタリア人で勝利したドライバーは皆無。かつてはヤルノ・トゥルーリが自身のチームを持って、ヴィタントニオ・リウッツィらが走っていましたが、今季はイタリア人がゼロ。さて、イタリアの地元ファンは誰を応援することになるのでしょう?
それは決まっています。元フェラーリのF1ドライバーである、フェリペ・マッサ(ヴェンチュリ)です。マッサはブラジル出身ですが、F1でイタリア文化に溶け込み、シューマッハやライコネンの相棒として自分自身もチャンピオン争いを展開したドライバーですね。フェラーリファン=ティフォシに愛された男として今もフェラーリの歴史を語る上では欠かせない一人と言えるでしょう。
マッサは今季から「フォーミュラE」にデビューしていますが、特に前半の3戦は精彩を欠く状況で、なかなか電気自動車レースにアジャストすることができず、プラクティスが極端に少ないレースフォーマットにも順応できていないように見えました。しかしながら、ここ3戦は続けて10位以内の完走を果たし、きっちりとポイントを獲得しています。
棚ぼたではあってもチームに初優勝をもたらしたエドワルド・モルタラ(ヴェンチュリ)の活躍と比較されがちなマッサですが、「ヴェンチュリ」のチームとしてのパフォーマンスは高いレベルにあると言えるので、イタリアのティフォシたちの声援を受けてマッサが表彰台を獲得するとなれば、盛り上がることは間違いなし。本人が上り調子であることを考えても、フェリペ・マッサ(ヴェンチュリ)は7人目のウイナーとして相応しい存在感の持ち主と言えるでしょう。
果たして、7人目のウイナーは誕生なるのか、それとも初めて2勝目を飾るドライバーが現れるのか?6月半ばまで続くヨーロッパラウンドの「フォーミュラE」は見逃せない戦いです。
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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