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モーター スポーツ コラム 2019年3月20日

フォーミュラE第6戦・中国~5人目のウイナー誕生で上位4人が2点差の大混戦

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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フォーミュラE第6戦・中国~5人目のウイナー誕生で上位4人が2点差の大混戦

大人気の電気自動車レース「FIAフォーミュラE選手権」はビッグマーケットのアジアを転戦中。シーズン5(2018年~19年)の第6戦は初開催となる地、中国・三亜(サンヤ)での開催です。「J SPORTS」では3月23日(土)に行われる予選、決勝の模様を生中継でお送りします。

中国本国での「フォーミュラE」開催は3シーズンぶり。このシリーズが始まった当初は首都・北京で開幕戦が開催されていましたし、歴史的なオープニングレースも中国での開催でした。しかし、シーズン3、4では香港が開幕戦の舞台となり、中国本国での開催は消滅していましたが、今季は香港との連戦で新しいデスティネーション、三亜(サンヤ)で復活することになりました。

三亜(サンヤ)は南シナ海に浮かぶ海南島(ハイナントウ)の南端にある都市で、中国のハワイと呼ばれているリゾート地です。海を隔ててお隣はベトナムということで、食文化も東南アジアと近く、蒸した鶏を乗せたハイナンライスが有名。現地ではビールを飲んで観戦したい温暖な場所ですね。

1周およそ2.2kmのストリートコースでの開催ですが、スタートとフィニッシュのラインがかなり離れたところにあるのが特徴。コーナーは11あり、2本の長いストレートの先にあるフルブレーキングポイントがオーバーテイクのチャンスとなるでしょう。また前戦・香港でも物議を醸し出した「ゴッツンコ合戦」になりそうな予感です。

さて、その香港ですが、アンドレ・ロッテラー(DS・テチータ)にプレッシャーをかけ続けたサム・バード(ヴァージン)が優勝かと思いきや、バードに度重なるラフプレーの制裁が下り、5秒のペナルティ。正式結果はエドワルド・モルタラ(ヴェンチュリ)の優勝となりました。「ヴェンチュリ」にとっては「フォーミュラE」初優勝で、初年度から参戦するチームが棚からぼた餅ではありますが、ついに勝利を獲得しました。マカオGPの優勝などストリートコースマイスターとも称されるエドワルド・モルタラ(ヴェンチュリ)にとっても嬉しい「フォーミュラE」初勝利でした。

さぁこれで、今シーズンは戦を終えて、なんと5人のウイナーが誕生。前戦・香港の前以上にポイントランキングも大混戦となっています。ランキング首位はサム・バード(ヴァージン)=54点、2位にジェローム・ダンブロージオ(マヒンドラ)=53点、3位にルーカス・ディグラッシ(アウディ)=52点、4位にエドワルド・モルタラ(ヴェンチュリ)=52点と上位4人のポイント差はわずか2点という接戦ぶり。5位のアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(BMW)も47点と近いところにつけているので、そろそろシーズン折り返しのタイミングを迎える中ではなかなかないシチュエーションになっています。

そんな中、予選のポールシッターも5戦終えて5人。アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(BMW)、サム・バード(ヴァージン)、セバスチャン・ブエミ(日産)、パスカル・ウェーレイン(マヒンドラ)、そして前戦・香港ではルーキーのストフェル・バンドーン(HWA)が獲得と、ランキング上位の顔ぶれとはまた一味違うメンツが揃っています。元F1ドライバーのストフェル・バンドーン(HWA)が躍進したというのは前線の印象的なポイントだったと言えますね。

さて、勢いに乗っているのは一体誰なんでしょう?本当に分からなくなりました。強いチーム、他を圧倒する速さのドライバーというのが存在せず、誰しも勝利を狙える位置にあるというのが今季の「フォーミュラE」。走りの勢いという意味ではサム・バード(ヴァージン)の元気良さが目立ちますが、彼もこれ以上のラフプレーはシリーズ後半に向けてペナルティを取られたくないですから、しばらくは大人しくクレバーなレースを展開せざるを得ない状況です。

そんな中、チームとしてホームレースとなるのが中国国籍の「DS・テチータ」。2018年王者のジャン・エリック・ベルニュ(DS・テチータ)、昨年はメキシコで「フォーミュラE」史上初の1-2フィニッシュに貢献したアンドレ・ロッテラー(DS・テチータ)を擁する強豪ですが、今季は昨年のような巧みなレース運びができず、まだ未勝利。しかも、ジャン・エリック・ベルニュ(DS・テチータ)がランキング11位、アンドレ・ロッテラー(DS・テチータ)がランキング12位という大苦戦。チャンピオン争いという意味では黄色信号が点滅中です。

「テチータ」は中国のベンチャーキャピタルが出資するレーシングチームで、シーズン3(2016年-17年)から「Team Aguri」のリソースを引き継いで参戦しています。当初は中国人ドライバーのマー・チン・ホワも起用するなど中国色が強いチームでしたが、やがてジャン・エリック・ベルニュ(DS・テチータ)に加えて、元F1ドライバーのエステバン・グティエレス、元WECドライバーのステファン・サラザンなど有力ドライバーを起用するように。そして、昨年からは日本でもおなじみのル・マン24時間レースウイナー、アンドレ・ロッテラーを起用してチームとしてもチャンピオン争いができる体制を整えました(昨年はチームランキング2位)。

昨年まではルノーのパワートレインを採用していましたが、今季から「テチータ」はDSオートモービルのパワートレインを使用するワークスチームに。昨年、ヴェルニュとチャンピオンを争った「ヴァージン」がDSオートモービルからアウディに鞍替えしながらも好調なのとは裏腹に、「DS・テチータ」になった今季は昨年までのような勢いがありません。前戦・香港ではアンドレ・ロッテラー(DS・テチータ)が勝利目前まで行きましたが、不運も重なっています。ホームレースとなる「DS・テチータ」が息を吹き返すレースになるのでしょうか?

そして、日本の「日産」も2戦連続のノーポイントと速さを活かしきれないレースが続いているのが何とも残念。しかしながら、今季ルーキーのオリバー・ロウランド(日産)が元チャンピオンのセバスチャン・ブエミ(日産)を上回る速さを見せているのは好材料です。まずはしっかりフィニッシュするレースを。このままだと日本の日産ファンが怒っちゃいそうです。

新コースということで、不確定要素も多い中国・三亜でのレース。またまた6人目のウイナーが生まれるのか、それとも2勝目をあげるドライバーが生まれるのか。ここで日産が勝てば、さらに「フォーミュラE」は面白くなると思いますよ。

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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