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モンテ、スエーデンと二つの特殊路面を終わり、今年初めてのグラベルを迎えますが、その特性から3つ目の特殊路面と言えるほど毎年波乱があります。コースの特徴として、全走行距離に対するSSの割合が30%以上であること、標高が一番高いとこで2700メートル以上ありエンジンパワーが大幅に低下すること、路面はサファリやアクロポリスほど悪くありませんがかなりラフであるため、特に二回目の走行では足回りへのダメージが予想されることなどです。リエゾンが短いことは選手たちが次のSS前に行う点検、整備、時には修理の余裕が限られることとなります。エンジンパワーの低下はミスを取り返す時間が限られること。今年初めてのグラベルラリーで選手たちは目一杯走行したい一方、特に2回目走行では予想を超えた荒れた路面からの入力で足回りの故障を受けやすいのです。シーズン前半にはよくある現象ですので、激しくメーカーポイントを争っているトヨタとヒュンダイは足回りの故障に充分気をつける必要があるでしょう。
ロングSSもあります。D-2には31.57キロが2本、D-3には32.27キロが2本あります。勝負どころで故障を防ぎながらの激走が見ものです。シーズン3戦目ですがメーカーポイントはトヨタ58、ヒュンダイ57、シトロエン47で接戦です。
このラリーの歴史は他の老舗のイベントより比較的浅く、1979年創設、2004年にメキシコ政府の絶大な支援を得てWRC参入しました。ローブが2006年から2012年まで6連勝しています。このラリーのお楽しみはセレモニアル・スタートの光と音の雰囲気、そして市中のSSSです。古い地下道も使います。 世界遺産の旧市街でここまでやらせてくれるのは驚きです。国家的行事になっているからでしょう。
エントリーリストを見ると、トヨタはタナク、ラトバラ、ミークの3名、ヒュンダイは今回ローブ出場なしでヌーヴィル、ミケルセン、ソルド。シトロエンはオジェ、ラッピの2名。フォードはスンニネン、エヴァンスの2名です。WRCグループ10台はちょっと寂しいです。もっと寂しいのはWEC2。タイトルが懸かっているのにR5は僅か6台でヨーロッパからのエントリーは1台だけ、残りは中南米のみです。エントリー総数が23台というのも寂しい限りです。WRC2には全戦参加義務がないので資金に余裕のないセミプロ・チームは車両や機材の運賃、スタッフの交通費や諸経費を考えると遠隔地の参加には二の足を踏みます。同じ世界選手権のF1との大きな違いは興行に要する資金の調達です。
オーガナイザーもスーパースペシャルのような隔離された環境では入場料を取れますが山の中のSSではお金の取る方法がありません。主催者も参加者も(ファクトリーは別)この資金不足から脱却しなければなりません。大陸を超えた遠隔地からの参加が増えて初めて“世界”選手権と言えます。目下招聘運動中のラリー・ジャパンも同様な事態が予想されますので、JAFなどが自動車文化の意義付けをしてもっと実質的な援助をするようにしてくれないかなど、エントリーリストを見ながらこんなことを感じました。
ラリー概要は次のとおりです。
SS本数 | SS km | Liaison km | Total km | |
---|---|---|---|---|
Day 1 (3/7) | 1 | 1.14 km | 111.43 km | 112.57 km |
Day 2 (3/8) | 7 | 114.19 km | 245.56 km | 359.45 km |
Day 3 (3/9) | 10 | 138.37 km | 210.62 km | 348.49 km |
Day 4 (3/10) | 3 | 60.17 km | 121.82 km | 181.98 km |
Total | 21 | 313.87 km | 688.62 km | 1002.49 km |
全走行距離1000キロの忙しいラリーです。メキシコはコンパクトの設定が得意で、総走行距離850キロで366キロのSSをこなした実績があり、これは歴代WRCの記録となっています。
福井 敏雄
1960年代から欧州トヨタの輸出部員としてブリュッセルに駐在。1968年、トヨタ初参戦となったモンテカルロからラリー活動をサポート。トヨタ・モータースポーツ部のラリー担当部長、TTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ)副社長を歴任し、1995年までのトヨタのWRC圧勝劇を実現させた。
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