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「FIMスーパーバイク世界選手権」の2019年シーズンがいよいよ始まります。開幕戦は今年もオーストラリアにあるフィリップアイランドでの開催。「J SPORTS」では今年も全戦を生中継。他のモータースポーツに先駆けて2月22日(金)~24日(日)に開催される開幕戦の模様を2月24日(日)に生放送でオンエアします。
さて、今季最大の話題はなんといっても清成龍一(ホンダ)の参戦でしょう。あの「Kiyo」としてヨーロッパで愛される日本人ライダーがスーパーバイク世界選手権に帰ってきます。清成はすでに36歳。超ベテランライダーとして10年ぶりにフル参戦を果たすことになりました。スーパーバイク世界選手権への日本人ライダーのフル参戦は青山博一以来7年ぶり。待ちに待った日本人ライダーのフル参戦復活です。
それにしても昨年11月にこの発表があった時は驚きました。噂に上がっていたモリワキエンジニアリングのスーパーバイク世界選手権への参戦は本当で、イタリアのミラノ国際モーターサイクルショーで突如、モリワキがHRC(ホンダワークス)と組んで参戦を発表。なんとその場でライダーとしての清成龍一の起用が発表されました。
清成龍一というライダーを詳しく知らない方も中にはいらっしゃるでしょうから簡単にご紹介しておきましょう。清成は2003年に事故で急逝した加藤大治郎の代役としてMotoGPにデビュー。ホンダが将来を見据えて育成したい逸材として、翌2004年からイギリスのスーパーバイク選手権(BSB)に参戦。鈴鹿8耐仕様のワークスマシンを与えられ、イギリスで大活躍を見せます。清成のアグレッシブな走りは目の肥えたイギリス人の心を掴み、あっという間に超人気ライダーに。2006年、2007年と2年連続でイギリス・スーパーバイク選手権のチャンピオンに輝きました。
そして翌2008年からはいよいよスーパーバイク世界選手権に参戦。イギリス・ブランズハッチのレースで2勝を飾るなどし、2シーズンで合計3勝を飾りました。その当時はイギリス人のアナウンサーが「頑張れ、Kiyo!」と応援実況をしてしまうほどイギリスでの人気が凄まじいライダーでした。
そして2010年からは再びイギリス・スーパーバイク選手権に戻り、2010年にチャンピオンを獲得。2012年はロードレースアジア選手権SS600に参戦しましたが、彼自身はイギリスでのレースにこだわり、2013年から再び英国へ。以降、ホンダ、BMW、スズキと渡り歩き、2017年にモリワキのライダーとして全日本ロードレースJSB1000クラスに参戦しました。鈴鹿8耐では4度の優勝を成し遂げ、現役ライダーとしては最多勝を誇っています。
36歳という年齢を考えると誰も予想だにしなかった10年ぶりのカムバックですが、実は今回の復帰は用意周到に仕組まれた計画でした。その舵取り役を担ったのがモリワキレーシングの森脇緑マネージャーです。彼女はモリワキエンジニアリングの創業者、森脇護の娘で、モリワキがオリジナルマシンMD600をロードレース世界選手権「Moto2」に供給していた時代に、その最前線で活躍した人物です。
グローバルな考えを持つ森脇緑は将来的な世界選手権への参戦を計画していました。そこで清成龍一にモリワキへの加入を打診。その準備として全日本ロードレースJSB1000への参戦を行いました。JSB1000でモリワキはピレリのタイヤを使用していますが、実はこれもスーパーバイク世界選手権参戦に向けた重要な準備。チームとしてピレリのタイヤを理解し、清成を走り慣れたピレリで走らせることで将来の復帰に向けた道筋を繋げていったのです。
そして、今季、モリワキと清成は「モリワキ・アルティア・ホンダ・チーム」としてHRCがバックアップしたホンダCBR1000RRで参戦。今のスーパーバイク選手権は電子制御の開発を含めてメーカーワークスからの支援がないと十分な戦闘力を発揮できないため、モリワキ独自の参戦ではなく、既存チームとのコラボ、ホンダワークスとの協力関係という選択をしたのは賢明と言えます。
とはいえ、今季のホンダは劣勢だった昨年までの状況から体制を変えて追う立場。ライバルメーカーも強力な体制を築いていますから、状況はそうそう簡単ではありません。
まず、ドゥカティが伝統のL型2気筒を捨て、ついに4気筒マシン「パニガーレV4」をデビューさせます。このパフォーマンスには大いに期待したいですね。というのもベース車両としての評判が高いからです。そんなドゥカティはチャズ・デイビスに加え、昨年までMotoGPで活躍したアルバロ・バウティスタを起用。フィリップアイランドの事前テスト初日からいきなりのトップタイムをマークしました。
そしてチャンピオンのカワサキは今季からジョナサン・レイに加えて、鈴鹿8耐でも抜群のコンビネーションを見せたレオン・ハスラムを起用。ドゥカティに対抗する形で「カワサキZX-10RR」を2019年モデルへと進化させてきました。
さらに上り調子のヤマハは今季もマイケル・ファン・デル・マーク、アレックス・ロウズの体制を維持。熟成が進むマシンで今季も期待です。そしてヤマハは新たなサテライトチームとして「GRT Yamaha」が新たに参戦。ここに昨年のスーパースポーツ王者のサンドロ・コルテセ、さらにドゥカティから移籍のマルコ・メランドリが乗ります。経験豊富な元グランプリライダーのパフォーマンスにも期待が高まります。
まさに群雄割拠なスーパーバイク世界選手権の2019年。今季はレースフォーマットも変わります。ごく簡単に説明すると、3レース制が採用されます。土曜日にレース1、そして日曜日の午前中に「スーパーポール・レース」なる超スプリントレースが開催され、上位9人には午後のレース2の着順通りのグリッドとボーナスポイント(最大12点)が与えられます。そして午後からレース2という形。「スーパーポール・レース」を含めて3レース開催されるということで波乱はこれまで以上に起こりやすい状況で、早々とチャンピオンが決まってしまう傾向が強かったスーパーバイク世界選手権で、この新システムがどう機能するかも興味深いですね。
注目どころ、お伝えすべきことがいっぱいで、とても書ききれない今季のスーパーバイク世界選手権。まずは開幕戦、我らの応援対象、清成龍一の活躍に期待しようではありませんか!
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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