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世界3大耐久レースの一つであるデイトナ24時間レース。昨年はF.アロンソの参戦が話題となったが、今年一番の注目は電撃的に参戦を表明した小林可夢偉だろう。しかもF.アロンソと同チーム、強豪コニカミノルタ・キャデラックDPi-V.R.からの参戦。初参戦で優勝も大いにあるという状況は注目せざるを得ない。初のデイトナ24時間に挑む今の心境を伺った。
欧州とは異なる耐久レース。大事なのは最後の1時間
J SPORTS:
今日はチームスポンサーのコニカミノルタさんへ訪問しましたが、熱狂的に迎えられましたね。
可夢偉:
長年コニカミノルタさんがチームをスポンサードしてくれているお陰で、日本人に対してはファミリー的な暖かい感覚で付き合ってくれるので、いい関係を取れています。コニカミノルタさんは世界で4万人以上もの社員がいるとのことですが、それだけ大きい会社の本社にこのように迎えて頂き、日本人ドライバーとして、日本のスポンサーと供にデイトナを戦うことを凄く誇りに思いました。改めて気が引き締まりましたよ。
J SPORTS:
デイトナのテストが終わったばかりですが、感想は?
可夢偉:
テストでどれだけのパフォーマンスが出せるのか難しい面もあったのですが、自分の中でやらなければならない事に優先順位をつけトライしました。まずはサーキットと車に慣れ、しっかり準備すること。そしてWECでもチームメイトですが、フェルナンド(アロンソ)や周りのドライバーとコミュニケーションを図り、ドライバーがやらなければならない方向を定める、という2点をメインに行った3日間でした。
レースまで時間がありますが、ドライバー、チームともに宿題を持って帰っています。ドライバーはオンボードをみて改善的すべき点を洗い出し、24時間を戦うのでチームは車の速さだけでなく信頼性を高めたり、ピットストップのローテーションを組んだりと色々ありますよ。
J SPORTS:
可夢偉選手の個人的な課題を教えてください。
可夢偉:
デイトナは欧州の耐久とはルールが違います。イエローが出るとき、フルコースイエローが無いのでセーフティーカーが出てしまうと、どれだけ順位が離れていようがマージンは無くなりグループが一緒になってしまう。そういう意味ではいかに最後の1時間のために良い車を作っていけるかが大事なんですよ。そこに向けたセッティング、最初の1~2時間ではなく、最後の23~24時間目に向けたセッティングが一番大事なんですよ。
ドライバーとしてはWECと比べGTクラスとの速度差があまり無いことだったり、コースのインフィールドが狭いのでトラフィック処理をいかにリスクなくやるかが課題ですね。 最後のスティントを担当するドライバーは多少リスクを冒さなければならないですが、それまでの担当は車の準備をするというイメージでリラックスしながら、リスクをとらないという方向で臨みたいです。
日本メーカーがライバル。どこが勝ってもおかしくない
J SPORTS:DPiのマシンは初めて乗られるわけですが、キャデラックに乗ってみた感想は?
可夢偉:
シャーシはダラーラ製なので、車自体に特殊な操作や特有な動きはなくニュートラルに乗りやすいですよ。デイトナのサーキットは実質コーナーが6つのみなのでコースに慣れるというのも難しくなかったです。そのためタイヤと車をいかに使うかが勝負のカギになってくると思います。エンジン系統は他の車を乗ったことがないので、なんとも言えませんが、過去連覇をしているチームですから信頼性は問題ないと思いますよ。あとは自分のパフォーマンス次第でしょうね(笑)。
J SPORTS:
ライバルにはマツダ、アキュラ、ニッサンと日本メーカーが揃っていますがどのように見ていますか?
可夢偉:
各メーカーはこのレースに勝負をかけているのが伝わりますよ。残念ながらライバルが全て日本メーカーという謎の状況だから複雑ですよね(苦笑)。マツダは運営しているのが“耐久の名門”ヨースト・レーシングですから、強いですよ。ドライバーも僕がWECで戦ったときにポルシェやaudiに乗っていたドライバー(オリバー・ジャービス、ティモ・ベルンハルトなど)を揃えていますからね。アキュラも凄い陣容です。本当にどのチームが勝ってもおかしくはないですよ。
J SPORTS:
サーキットの特徴を教えてください。
可夢偉:
凄く古いですよ。何年改修してないんや~、ってほどガタガタです(笑)。10年以上前のオンボードと比べてみてもサーキットは何も変わっていないですから。アメリカではこれが当たり前なんですが、このガタガタでミスをしやすい。24時間を走るという意味ではコース上のミスをいかに減らすかがポイントですから、気を付けないと。
J SPORTS:
海が近いので砂もありますよね。
可夢偉:
砂ではなく海風による水分が天敵です。海風で湿気が凄いんですよ。朝になると霜がおりるんです。霜で突然グリップがなくなるのが厄介ですね。
J SPORTS:
そうなると路面状況がカギですね。
可夢偉:
気温は昼夜で20℃ぐらい変わるんですよ。20℃変わるってことは、必ず朝方に霜が発生しますからね。本当に難しいですよ。
J SPORTS:
別カテゴリーになりますがGTクラスではLEXUSやNSXも出たり、日本メーカー車両の活躍も見どころの一つですね。
可夢偉:
日本のGT3車両がアメリカ系のドライバーと組んでどういう走りをするのかを注目したいですね。ニック(ニック・キャシディ)はGT3のドライブは初めてだと思います。また国内外を含めて色んな車両が見られますが、耐久レースならではのポイントを見て欲しですね。例えば朝は早かったけど、夜は遅いなど時間帯的な速さや特性をどの車も持っていますから。
勝つことだけが目標
J SPORTS:
チームメイトについて教えてください。
可夢偉:
フェルナンドはもちろんよく知っています。彼の方がデイトナの経験は上なので色々教わっていますよ。ジョーダン(ジョーダン・テイラー)はデイトナに20年以上参戦している大ベテラン。生まれもサーキットの近所ですし、なんせ生れて初めて見たサーキットがデイトナですよ(笑)。ずっとそこでレースをしているという経験はチームにとって有効ですよ。レンガー(レンガー・ヴァン・デル・ザンデ)は信頼できるパートナーですよ。去年はデイトナでポールを取っていますし、F3時代は欧州で一緒に走っていましたから。
J SPORTS:
最後にデイトナに向けた抱負を。
可夢偉:
このチームに乗ると決まった時、チームのオーナーからは可夢偉をチームに呼んだのは勝つためだからと言われました。僕もその気持ちで臨んでいますので、シンプルに勝つことだけを目標にデイトナに挑みます!
J SPORTS 編集部
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