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モーター スポーツ コラム 2018年10月11日

【スーパースポーツ世界選手権 第11戦アルゼンチン プレビュー】南米の新設コースで加熱するチャンピオン争い!

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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ジュール・クルーゼル(ヤマハ)

ジュール・クルーゼル(ヤマハ)

「スーパースポーツ世界選手権」の第11戦は舞台を南米に移し、アルゼンチンのサン・ファンで10月12日(金)~14日(日)に開催されます。「J SPORTS」では日本人ライダーの大久保光(おおくぼ・ひかり)が出場するこのレースを10月14日(日)に生放送でオンエアします。

今回は南米アルゼンチンに新たに建設されたサーキットでの開催です。MotoGPのアルゼンチンGPを開催するサーキットとは違いますし、新設サーキットということで全くその戦況は読めません。コースレイアウトは1周4.2kmで2本のストレートがあるストップアンドゴーサーキットのように見えますが、何せこけら落し的要素のイベントだけにどんなレースになるかは未知数です。

今季も残り2戦となっているだけに、新設コースでのレースがこのタイミングでやってくるのはチャンピオン争いをするライダーにとってみれば非常にチャレンジングなことと言えるでしょう。そんな中、今季の主導権を争っているサンドロ・コルテセ(ヤマハ)とジュール・クルーゼル(ヤマハ)の対決は、前戦・フランスでクルーゼルが地元のファンの前で優勝し、コルテセが2位。これでランキング首位のコルテセとランキング2位のクルーゼルのポイント差は11点に縮まりました。今回のアルゼンチンでさらにクルーゼルがポイント差を詰めるということになれば、最終戦はコルテセにとって非常にプレッシャーの大きいレースになるでしょう。だからこそ、今回はクルーゼルの走りに大いに注目です。

残り2戦でチャンピオン候補は全部で6人居ます。サンドロ・コルテセ(ヤマハ)=169点、ジュール・クルーゼル(ヤマハ)=158点、ランディ・クルメナッハー(ヤマハ)=140点、フェデリコ・カリカスロ(ヤマハ)=132点、ラファエル・デローサ(MVアグスタ)=128点、ルーカス・マヒアス(ヤマハ)=119点で、ランキング6位のマヒアスはトップから50点差ですから逆転王座の可能性は今回優勝することが絶対条件となります。地元フランスで3位表彰台に上がったディフェンディングチャンピオンのマヒアスが残り2戦、王者としての意地を見せてくるかに注目しましょう。

序盤のタイで優勝したランディ・クルメナッハーもチャンピオンへの条件では正念場を迎えています。表彰台も第4戦のオランダ以来となっていますから、逆転は厳しい状況です。一方でフェデリコ・カリカスロはイタリア、ポルトガルと連勝を飾り、前戦・フランスでは今季2度目のポールポジションを獲得。決勝の結果は伴いませんでしたが、勢いづいていますから今回のレースでどれだけのパフォーマンスを披露してくるか楽しみです。

全員が初めてのコースだけに伏兵の登場にも期待。そんな中、孤軍奮闘する日本人ライダー、大久保光(カワサキ)は3戦連続の9位フィニッシュを果たしています。ここ2戦、チームメイトのエクトル・バルベラ(カワサキ)よりも前でフィニッシュをしていることは非常にポジティブと言えるのではないでしょうか。今季のベストポジションでのフィニッシュを果たすチャンスが巡ってくるかもしれません。攻めの姿勢で頑張って欲しいですね。

新設コースでの戦いは真のスーパースポーツ使いは誰かを決めるレース。深夜2時10分からという、かなり深い時間からの放送になりますが、ぜひライブでお楽しみください。

さて、前戦・ポルティマオのレースは序盤から波乱の展開となりました。チャンピオンを争うサンドロ・コルテセ(ヤマハ)とジュール・クルーゼル(ヤマハ)が2周目に接触、転倒。クルーゼルはコルテセの転倒に巻き込まれる形となり、そのまま再スタートできず、痛恨のリタイア。コースの縁石を叩いて悔しがる姿が印象的でした。シーズンも終盤に来て、なんという不運でしょう。

クルーゼルの悪夢のような状況はコルテセが再スタートを切って、5位まで追い上げたことでさらに最悪の状況になりました。これでクルーゼルがノーポイントに終わり、サンドロ・コルテセ(ヤマハ)=149点、ジュール・クルーゼル(ヤマハ)=133点で16点差にポイント差が広がりました。前線までは5点差の接戦だったことを考えると、終盤戦に来てこの差が付くのはクルーゼルにとって非常に痛い状況です。

「スーパースポーツ世界選手権」は激しいレースで非常に見応えがありますが、あの展開の中でもトップライダーたちはきっちりとフィニッシュまでバイクをもっていきます。ランキング首位のサンドロ・コルテセ(ヤマハ)は今シーズン1度もリタイアしておらず、全てのレースで 6位以内のフィニッシュを成し遂げています。一方、ジュール・クルーゼル(ヤマハ)は今季3度の優勝を飾っていますが、2度目のリタイアということで、これが16点の差になってしまっているということです。今回に関してはクルーゼルが可愛そうすぎますが。

とはいっても、残り3戦。まだまだ逆転するチャンスはクルーゼルにあります。今回は地元・フランスのレースですから、クルーゼルにとっては応援を受けての素晴らしい走りに期待したいですね。彼はやはりホームコースであるマニクールが得意です。これまで「スーパースポーツ世界選手権」ではマニクールで3勝を飾っているのです。今季からヤマハYZF-R6に乗っていますが、2012年にはホンダで優勝、2014年と2016年はMVアグスタで優勝。果たしてヤマハでも優勝を飾れるかというところです。

一方のコルテセはグランプリを長く戦ってきましたが、フランスGPが開催されるのはル・マンのブガッティサーキットということで、マニクールでのレース経験は近年ありません。そういう意味では追う立場のクルーゼルは勝たなければならないレースになります。

また、ランキング3位は2連勝を飾ったフェデリコ・カリカスロ(ヤマハ)の129点。クルーゼルに4点差に迫っていますから、こちらはレース終盤戦で流れを一気に引き寄せています。トップのコルテセからも20点差ですから、大逆転のチャンピオンの可能性も秘めています。クルーゼルにとってもカリカスロにとっても絶対に落としてはいけないレースです。

地元といえば、昨年のチャンピオン、ルーカス・マヒアス(ヤマハ)も忘れてはいけません。今季は表彰台がわずかに2回と苦戦していますが、前戦のポルティマオではポールポジションも獲得しました。ただ、2戦連続のノーポイントに終わり、トップのコルテセからは46点差。2連覇は厳しい状況になっています。

今季はヤマハが上位を独占してきたシーズンで、すでにマニュファクチャラータイトルはヤマハが獲得しましたが、ポルティマオではなんとホンダのカイル・スミスが2位表彰台。そして3位表彰台の常連となっているMVアグスタのラファエル・デローサがまたもや3位と、久しぶりに表彰台を3つのメーカーが分け合うという形になりました。

その中にカワサキも加わって欲しいところですが、カワサキ勢の中でランキング最上位だったアンソニー・ウエストがドーピングテストで使用禁止の薬物が検出されたことで出場停止になってしまいました。そして、ソフォーグルの後釜として加わったエクトール・バルベラもスーパースポーツ初陣のポルティマオでは10位と振るわず。カワサキ勢にとっては苦しいレースが続いています。そんな中で日本人ライダーの大久保光は2戦連続のシングルフィニッシュとなる9位。苦しい中でも結果に繋がり始めているので、残り3戦はさらなる上位フィニッシュに期待です。

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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