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モーター スポーツ コラム 2018年8月9日

SUPER GT 第5戦レビュー

SUPER GT by 秦 直之
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予想に反し、MOTUL AUTECH GT-RとHOPPY 86 MCがPP獲得

au TOM’S LC500

SUPER GT第5戦、夏の富士ラウンドはこれまで300kmで争われてきたが、500マイル(約800km)で争われることとなった。昨年を限りに伝統の一戦、鈴鹿1000kmが終了したため、これがSUPER GTとしては最長のレースとなる。連日の猛暑で、ただでさえハードなコンディションの中、長丁場のレースがどんな展開になるのか大いに注目された。

予選でポールポジションを獲得したのは、MOTUL AUTECH GT-R。Q1を松田次生がトップでクリアし、Q2でもロニー・クインタレッリが最速タイムを記した。驚くべくは、ウエイトハンデは62kg相当で、実際には燃料リストリクターを1ランク絞られた上で、45kgもウエイトを積んでいることだ。ストレートの長い富士で、エンジンパワーが規制されれば、とうてい勝ち目がないという通説を覆した。この速さの理由を松田は「クルマのフィーリングは非常に良くて、実際に燃リスの影響でセクター1は辛いんですが、セクター3はミシュランタイヤの威力で、すごく良かったから」と語り、クインタレッリは「このコースでは、特別な力が入るんだ!」と。果たして、決勝でもこの速さが維持されるのか注目だ。

2番手はフォーラムエンジニアリングADVAN GT-R のJ.P.デ・オリベイラ/高星明誠組で、3番手はau TOM'S LC500の中嶋一貴/関口雄飛組が獲得。前回のウィナーでポイントリーダーでもある、DENSO KOBELCO SARD LC500のヘイキ・コバライネン/小林可夢偉組は、Q1突破ならず、11番手からのスタートとなる。

GT300ではFIA-GT3が圧倒的に有利とされる中、松井孝允/坪井翔/近藤翼組のHOPPY 86 MCが最前列からのスタートに。Q2でトップに立った坪井にとっては、これが初めてのポールポジション獲得となる。「松井選手がQ1でいいタイムを出してくれて、ただでさえ初めてのQ2で緊張が半端なかったのに、すごいプレッシャーまでかかりましたが、的確なフィードバックのおかげで、いい走りができました」と坪井選手。GT500もそうだが、今や富士ではストレート重視はもちろんのこと、コーナーでの速さも磨き上げないとポールが奪えないようになったようだ。

2番手は春の富士を制している、ARTA BMW M6 GT3の高木真一/ショーン・ウォーキンショー組が、そして3番手はGAINER TANAX triple a GT-Rの星野一樹/吉田広樹組が獲得している。

レース前半の主役をGT-R勢が射止める

MOTUL AUTECH GT-R

決勝レースでホールショットを決めたのは、もちろんMOTUL AUTECH GT-Rのクインタレッリ。フォーラムエンジニアリングADVAN GT-Rの高星に並びかけられるも、しっかり1コーナーの立ち上がりで引き離していた。それでもしばらく、この2台のトップ争いが続く中、その後方でさっそく仕掛けに出ていたのがCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの千代勝正。しかし、au TOM'S LC500の関口に3周目の1コーナーで抜きにかかるも、逆転は許されなかった。

その後、千代はオーバーシュートもあって順位を落とす中、序盤にオーバーテイクを重ねていたのがカルソニックIMPUL GT-Rの佐々木大樹だった。予選5番手からスタートでふたつ順位を落としていたが、徐々に順位を上げて20周目の1コーナーで、KeePer TOM'S LC500のニック・キャシディをかわして4番手に浮上する。一方、2番手も23周目に入れ替わる。関口が高星を1コーナーでオーバーテイク。高星は26周目の最終コーナーで、佐々木にもかわされていた。

その間にも、トップを走行していたのがクインタレッリ。しかし、一時は7秒としていた差が2秒を切るまで、関口に迫られていたこともあり、32周目には上位陣ではいちばん早く、MOTUL AUTECH GT-Rはピットに入って松田に交代し、3番手でレースに復帰する。これでトップに浮上したau TOM'S LC500は、37周目に中嶋と交代するも、右リヤのタイヤ交換に手間取ったこともあって松田のみならず、それより3周早くヤン・マーデンボローに代わっていた、カルソニックIMPUL GT-Rにも前に出られてしまう。

38周目にMOTUL AUTECH GT-Rはトップに返り咲くも、やがてカルソニックIMPUL GT-Rが近づいてくる。必死に逃げていた松田だったが、堪えきれずマーデンボローにトップを明け渡したのは55周目のコカコーラコーナー。松田は64周目の1コーナーで中嶋にも抜かれ、3番手に後退した後、69周目に再びクインタレッリに交代する。

カルソニックIMPUL GT-Rが71周目にピットに入ると、au TOM'S LC500がトップに浮上。そして74周目に関口に代わるも、またしても右リヤのタイヤがうまくはまらず。これが致命傷となってもおかしくはなかったのだが……。77周目からは再びカルソニックIMPUL GT-Rの佐々木がトップを走行。一方、関口はクインタレッリを間に挟んで3番手につけていた。4番手は、平川亮と代わったばかりのKeePer TOM'S LC500を駆るキャシディだ。

レース折り返しの89周目、逃げる佐々木と松田の差は約8秒。これがさらに広がっていったのは燃料リストリクターが絞られている分、コーナーで補うべくタイヤを酷使しているのは間違いない。その間にじわじわと差を詰めてきたのが関口。ピットでの遅れをコースで取り戻したばかりか、98周目には松田をストレートでぶちぬいて2番手に浮上する。

101周目、MOTUL AUTECH GT-Rは松田に交代。交換したタイヤはかなり磨耗していたこともあり、それまでとは異なるタイヤを装着したようだ。そして、トップを走っていたカルソニックIMPUL GT-Rは108周目にピットイン、TOM'Sの2台も続いてピットに入ると、114周目にマーデンボローはトップに返り咲くこととなる。

ピットでの遅れを帳消しに。au TOM'S LC500が大逆転で今季初優勝!

LEXUS TEAM au TOM’S

111周目にau TOM'S LC500がピットイン、今後はロスなく中嶋がコースに送り出され、松田の背後につける。117周目のレクサスコーナーで、勢いに乗る中嶋は松田をインから抜いて2番手に浮上。松田は125周目の1コーナーで、KeePer TOM'S LC500の平川にも抜かれ、4番手に。126周目、明らかにタイヤの苦しい、MOTUL AUTECH GT-Rは4回目のピットストップを行う。果たして残り50周あまりを走りきれるのか、気になるところではあった。 そんな後続の激しい順位変動を尻目に、マーデンボローは30秒近いマージンを得ており、もはや安全圏に入ったものと思われた。143周目にカルソニックIMPUL GT-Rは最後のピットを終えて、あとは佐々木がチェッカーを受けるのみに。やがてライバルもピットに入れば、トップに返り咲くはずだった。

しかし、149周目にカルソニックIMPUL GT-Rは突如スローダウン! 吸気系のトラブルに見舞われたためだ。メカニックの懸命の作業によって、レース復帰はなるも2周の遅れを抱え、優勝争いから脱落……。その1周前に中嶋から関口への交代を済ませていた、au TOM'S LC500がトップをキープすることとなった。一方、MOTUL AUTECH GT-Rは、やはり149周目に5回目のピットストップを行うことに。レース前半の主役だったGT-R勢は、相次いで後退を強いられていた。

しかし、ゴール寸前のau TOM'S LC500にも、ヒヤリとする光景が。ブレーキの負担が大きくなって、関口はKeePer TOM'S LC500のキャシディに接近を許していたからだ。しかし、そこはチームメイト同士である。忖度とまでは言わずとも、変にバトルして共倒れになってしまえば元も子もない。いや、むしろ関口が意地を見せたと言うべきだろう。いずれにせよ、TOM'Sの1-2フィニッシュは意外にもこれが初めて! そして平川とキャシディはランキングのトップに立つこととなった。

「今回、勝たないと終わるな、と思っていたので、優勝できてホッとしています。ただ、12号車(カルソニックIMPUL GT-R)にトラブルがあったから勝てたようなもので、2位でもしょうがないと思っていました。この勝利はご褒美みたいなものですね」と中嶋が言えば、関口も「2回もピットで少し遅れたんですが、人間なんだからミスもある。わざとやったわけじゃないから、少しでも追い上げていこうと、気持ちを切り替えたのも良かったのかもしれません」と、レース後にはそろって安堵の表情を見せていた。

3位は14番手スタートだったKEIHIN NSX-GTが獲得。そして、練習走行の大クラッシュで予選を走れず、決勝をまともに走れるか分からなかった、ZENT CERUMO LC500はトップと同一周回の8位でゴールしている。

ARTA BMW M6 GT3が今季2勝目をマーク、ランキングでもトップに

ARTA BMW M6 GT3

GT300のスタートでHOPPY 86 MCの坪井は、ストレートの速いARTA BMW M6 GT3の高木に並ばれるも、なんとか逆転を阻止。そして、1周目を終えた時点で早くも義務づけられた4回のピット作業を済ます車両が4台も。これは燃費に優れるからと、ライバルとタイミングをずらすことで混戦を避けようという狙いによる。

トップ争いは坪井と高木、そしてGAINER TANAX triple a GT-Rの吉田によって、しばらくの間繰り広げられた。しかし、坪井がトップを走ることを許されたのは7周目まで。高木が8周目の1コーナーで逆転し、そこから先は徐々に逃げて行くことに。逆に坪井は8周目に吉田にもストレートでかわされてしまう。高木は30周目にウォーキンショーと交代。すでにドライバー交代を済ませていた車両の中では先頭で、ARTA BMW M6 GT3がコースに戻ることとなる。

41周目にウォーキンショーがトップに返り咲いた時、2番手を走行していたのはHOPPY 86 MCの松井だった。31周目のドライバー交代と合わせて、タイヤを右側の2本だけの交換に留め、ロスを最小限としていたが、それでもARTA BMW M6 GT3との差は20秒にも及んでいた。これをウォーキンショーはさらに広げたこともあり、66周目に行われた2度目のピットストップ後も、トップで高木はコースに戻ることが許された。その時点でも2番手はHOPPY 86 MCで、その2周前の近藤への交代時には、今度は左側のタイヤ2本の交換に留めていた。

88周目、レクサスコーナーで近藤を、グッドスマイル初音ミクAMGの片岡龍也がパス。ARTA BMW M6 GT3の圧倒的な速さに影が薄かったものの、徐々に順位を上げていたのだ。タイヤはすべて4本交換の効果も大きかったのではないか。一方、HOPPY 86 MCは90周目の最終コーナーでコースアウト。直後にピットに戻って松井に交代するも、タイヤはなんと無交換だ! 97周目の100Rでスピンを喫し、あわやコンクリートウォールにヒットの一幕もあったが、ぎりぎりのところで回避。相当タイヤは厳しくなっているのは間違いないが、我慢して走り続けよう……ということなのだろう。

101周目、そして130周目にルーティンのピットストップを行なって、その直後のみグッドスマイル初音ミクAMGの先行を許したARTA BMW M6 GT3ながら、やがて大差をつけてトップに返り咲いたのは言うまでもない。3番手に浮上していたのは、嵯峨宏紀と平手晃平の駆るTOYOTA PRIUS apr GT。平手はフレッシュタイヤで攻め、嵯峨は無交換で守って、着実に順位を上げてきたのだ。これに続いたのはHOPPY 86 MC。122周目の最後の交代では、初めて4本交換で松井をコースで送り出す。なんとかそのポジションは保ちたかった、HOPPY 86 MCながら、153周目にLEON CVSTOS AMGの先行を許す。それでも富士では苦戦必至と言われていたMCで入賞果たしたのは、シリーズを考えれば重要な意義を持つはずだ。

難なく逃げ切り果たしたARTA BMW M6 GT3は、これで今季2勝目を挙げるとともに、高木とウォーキンショーがランキングトップに浮上。「前回のタイでは悔しい思いをしたんですが、それがかえって良かったかもしれません。もし、今回ウエイトをもっと積んだ状態で挑んだら、たぶん勝てなかったでしょう」と高木。

2位のグッドスマイル初音ミクAMGは、これが意外にも今季初表彰台。そして3位のTOYOTA PRIUS apr GTは今季3回目の表彰台獲得で、ランキング2位を死守することとなった。4位はLEON CVSTOS AMGで、5位はHOPPY 86 MC。6位のマネパランボルギーニGT3は、最後尾からのゴボウ抜きを達成。1周目のピットストップも大躍進の理由のひとつとなっていた。

秦 直之

秦 直之

大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。

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