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耐久の富士は、真夏のレースも500マイルの長丁場に!
元F1ドライバーコンビ、DENSO KOBELCO SARD LC500をドライブする、ヘイキ・コバライネン/小林可夢偉組が優勝を飾った、タイのチャン・インターナショナルサーキットでのレースから約1か月。SUPER GTは、ここからシリーズ後半戦に突入する。第5戦の舞台は富士スピードウェイで、シリーズ初の500マイルレースとして開催される。
500マイルといえば、約800km。鈴鹿1000kmが昨年限りで幕を閉じたこともあって、この第5戦がシリーズ最長のレースということになった。ドライバーは3名登録が許され、またドライバー交代を伴うピットストップの義務づけは4回。近頃は『耐久の富士』をキャッチフレーズとしているからこその改革と言えるだろう。いずれにせよ、SUPER GTの富士としては、未知の領域に突入する。
5月のレースとの違いは、距離もさることながら気候とウエイトハンデである。日本全国を記録破りの猛暑が襲い続けているが、おそらくレースウィークの富士も例外にはならないだろう。厳しい暑さがマシンを、ドライバーを、そしてタイヤを徹底的に痛めつける。特に最近は、富士もコーナリングスピードの高さが重視されるようになってきたので、タイヤにかかる負担はかなり大きそうだ。トラブルが起こらないことを祈るばかりだが、さりとて安全策ばかり採っていれば勝負には出られず、そのせめぎ合いがメーカーからしても難しいところ。
タイの無念を富士で晴らすか、au TOM'S LC500!
また、5月のレースからすれば、ことGT500に関しては優勝こそ松田次生/ロニー・クインタレッリ組のMOTUL AUTECH GT-Rが飾ったものの、2位となったコバライネン/坪井翔組のDENSO KOBELCO SARC LC500を筆頭に5位までレクサス勢が独占。6位に佐々木大樹/ヤン・マーデンボロー組のカルソニックIMPUL GT-Rがつけ、8位に野尻智紀/伊沢拓也組のARTA NSX-GTがようやく現れるという、ホンダ勢が苦戦を強いられていた。
しかし、シリーズも4戦を経てランキング上位陣には、ウエイトがずしり。ランキングトップのDENSO KOBELCO LC500は70kg相当のウエイトを積み、レクサス勢は大半が50kgオーバー。もはや簡単に上位独占というわけにはいかないだろう。それでもなお、レクサス勢が有利とするなら、ウエイトに苦しんでいないチームといえば……。
そう、中嶋一貴/関口雄飛組のau TOM'S LC500がいる! 前回のレースで見せ場を作った、あの男のいる! 関口が可夢偉を果敢に攻め立てたレース終盤は、まさに最高のハイライトになった一方で、最終ラップにまさかのガス欠ストップ。マシンから降りてコースサイドで見せた苦悩の様子は、まだ誰もが記憶に留めているはずだ。この日のため、リベンジのために、勝利の女神が演出したドラマだと思ってもいいのかも。
ニッサン勢では本山哲/千代勝正組のCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rが、まだ18kgを積むだけとあって、ここも注目すべき一台だ。装着するミシュランの、富士、夏の相性の良さは実証済。ここまでなぜか結果を残せずにいるチームにすれば、逆襲を果たすに絶好の機会ということになる。一方、ホンダ勢ではEpson Modulo NSX-GTのベルトラン・バケット/松浦孝亮組が、わずか6kgのウエイトであり、昨年の鈴鹿1000kmを思い出せば……。真夏の長丁場に強いチームとして、あの時の再来を期待しても良さそうだ。
GT300は今度こそ! Hitotsuyama Audi R8 LMSに何事も起こらねば
GT300は前回の勝利でGAINER TANAX GT-Rを駆る、平中克幸/安田裕信組がランキングのトップに立った。富士とGT-Rとの相性は決して悪くなく、5月のレースは1周目の追突でほぼ最後尾まで落ちながら、追い上げて表彰台を得たことで、そのことは実証されるが、さすがに74kgものウエイトハンデを背負っていては、確実にポイントを取りに行くレースにせざるを得ないだろう。
ならばということで、優勝に名乗りを挙げるであろう存在が、星野一樹/吉田広樹組のGAINER TANAX triple a GT-Rである。平中組とはタイヤの違いこそあれ、同じチームとあってデータは豊富。不運なレースが続いて、ウエイトは2kgしか積んでいない以上、「もう、ここで勝たずして、いつ勝つんだ!」ぐらいの意識でいるはずだ。
一方、5月のレースを制したARTA BMW M6 GT3の高木真一/ショーン・ウォーキンショー組は、52kgと微妙なところ。ドライバー、チームともども勝つ気満々だろうが……。今回はストレートパフォーマンスより、燃費に優れるチームが長丁場であるからこそ、有利にレースを進めるのではないか?
たとえば、4回義務づけられたピットストップを、スタートから間もなく行ってドライバー交代のみで、ロスを最小限にするという。実際に昨年の鈴鹿1000kmでは、LEON CVSTOS AMGの黒澤治樹/蒲生尚弥組が、それを勝因のひとつとしていたことは忘れてはならない事実である。この作戦のもうひとつのメリットは、混戦を避けてマイペースで走り続けられること。もし、そんな作戦を採ったチームがいたなら、よほどのトラブルを抱えていない限り、下位に沈んだと思わず、かえって注目してほしい。
だが、ズバリ本命は、という質問には、リチャード・ライアン/富田竜一郎/篠原拓朗組のHitotsuyama Audi R8 LMSと答えたい。ここまでのレース、すべて速さを見せつけながらも、不運なトラブルに泣き続け、まだ積んでいるウエイトは2kg。何事もなければ、今回こそ勝ちに行けるのではないだろうか。また、レギュラーの永井宏明と佐々木孝太に加え、第3ドライバーに織戸学を加える、TOYOTA PRIUS apr GTも注目すべき一台と言えるだろう。このチームも不運続きで未だノーポイント。織戸の持つオーラが、マシンの潜在能力を引き出したら……。乞うご期待である。
秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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