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悪天候によって残念ながら決勝レースの開催が中止となった「全日本スーパーフォーミュラ選手権」の第2戦・オートポリスから2週間、5月26日(土)~27日(日)にスポーツランド菅生(宮城県)で第3戦が開催されます。J SPORTSでは予選、決勝ともに生中継。場内実況と同じ現地からの放送をお届けします。
それにしても忙しい5月です。ゴールデンウィークに「SUPER GT」富士、2週目には「スーパーフォーミュラ」オートポリス、3週目には「SUPER GT」鈴鹿と続き、今回の「スーパーフォーミュラ」菅生。4週連続で、国内トップカテゴリーの4輪レースが開催されるという超過密スケジュールに。「SUPER GT」と「スーパーフォーミュラ」の両方に参戦するチームのスタッフの疲労もピークに達していると思われる中で、波乱のレース展開になることが多く「マモノが棲んでいる」と形容される菅生での戦いです。
前戦・オートポリスは前述の通り、雨と霧の影響で決勝レースの開催が中止。予選では平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL/トヨタ)がポールポジションを獲得し、グリッドペナルティを受けるも1ポイントを獲得。そのペナルティも消化した事になり、オートポリスで笑ったのは結果的に平川だけとなりました。平川はこの1ポイントを今後の残りのレースでチャンピオン争いに活かせるかですが、開幕戦を接触、リタイアによるノーポイントで終わっているところにレース中止。開幕戦でポイントを取れていないドライバーにとっては菅生の成績次第では逆転が難しくなりそうな展開です。だからこそ、この菅生での第3戦は重要度の高いレースになります。最も気分に余裕を持って挑めるのは開幕戦でポールトゥウインを達成した山本尚貴(TEAM 無限/ホンダ)でしょう。
ただ、ここ菅生は怒涛の走りで開幕戦2位表彰台を獲得し関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL/トヨタ)が得意とするコースです。関口は2016年に異次元の走りを披露して優勝。昨年、2017年も優勝し、2年連続のウイナーに。新・菅生マイスターとしてその地位を固めつつあります。開幕戦・鈴鹿の速さを見ても、先週の「SUPER GT」での怒涛の追い上げを見ても、関口は国内レースで今年最も乗れているドライバーの一人。ライバルたちにとって驚異のスピードを見せつけるか注目です。
また、開幕戦で3位表彰台に上がったものの、レースペースを考えればスタートでのミスが悔やまれる野尻智紀(DOCOMO TEAM DANDELION RACING/ホンダ)は先週の「SUPER GT」鈴鹿で優勝。コースレコードもマークする絶好調ぶりを見せての優勝でしたから、すっかり流れを取り戻した感があります。とはいえ、中止になったオートポリスではグリッド降格ペナルティを受けた平川に代わってポールからのスタート予定だっただけに、このビッグチャンスが不運にも天候に阻まれてしまったのが残念です。しかし、菅生は野尻がスーパーフォーミュラにデビューした2014年に初優勝を飾ったサーキット。鈴鹿、オートポリスと速さの面では好調ぶりが見えているので、野尻も外せない優勝候補と言えるでしょう。
今季はホンダとトヨタの両エンジンユーザーの差がほとんどない状態ですが、1周の距離が3.7kmと短く、タイトな菅生ではさらに全車が接戦になりそうな予感。1ミスがノーポイントにつながる気の抜けない戦いの中で、疲労の溜まったメカニックたちの仕事ぶりが勝敗を分ける可能性も充分に考えられます。そういう意味では底力を発揮できるチームとそのドライバーはレースで浮上のキッカケを掴む事になるでしょう。
そんな中、今回も新たなドライバーが参戦します。「TEAM 無限」(ホンダ)の福住車にレッドブル育成ドライバーのダニエル・ティクタム(イギリス)が乗る事になりました。ティクタムは昨年のマカオGPで初挑戦ながら優勝。これは史上最もドラマチックな展開となったトップ2台の連鎖クラッシュの影響を受けてのラッキーなものでしたが、彼は昨年、年間としては下位カテゴリーのフォーミュラルノー2.0に参戦していたドライバーです。シーズン途中からGP3に参戦しましたが、F3の経験もほとんどなく、初挑戦のマカオであの位置を走っていたのですから大したものです。
そんなダニエル・ティクタム(TEAM 無限/ホンダ)にとっては初経験となるビッグフォーミュラのレースです。スピード域もタイヤのグリップもこれまで経験してきたカテゴリーとは異なるレベルの環境下で、事前のテストドライブもない中での走り。かなりハードルが高そうにも思えますが、今のスーパーフォーミュラは速さに定評のあるドライバーなら上位に肉薄できる、非常に完成度の高いマシンであるだけに彼の実力に興味津々です。
少しどころか、かなり古い話になりますが、菅生でのビッグフォーミュラデビューで思い出すのが27年前の「全日本F3000」。このレースで初出場ながら2位表彰台を獲得したのが当時、チームル・マンから参戦した後のF1ワールドチャンピオン、ミハエル・シューマッハでした。彼はF3マカオGPでミカ・ハッキネンとの戦いを制して優勝。これまた歴史に残るドラマティックな大会のウイナーとなりました。シューマッハはすでにF1と同じ3.5Lのエンジンを積む、メルセデスのグループ Cカーでレースをしていましたが、当時のF3000は3メーカーによるタイヤ戦争でグリップ力はF1を超えていたと言われる難しい時代。そんな中でキラリと光る走りを見せたシューマッハに今回デビューするティクタムを「F3マカオGPウイナー」という肩書きだけで重ねてしまうのは酷でしょうか。
「マモノが棲んでいる」と呼ばれる菅生。ティクタムが関口雄飛を超えるモンスター級の速さを見せたとしたら、きっと多くの人がシューマッハがデビューした時の衝撃を思い出す事になるでしょう。
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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