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モーター スポーツ コラム 2018年5月24日

【スーパーバイク世界選手権 第6戦ドニントンパーク プレビュー】~レイが地元で60勝の最多勝記録達成なるか

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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ここ数年で最もエキサイティングなシーズンとなっている「FIMスーパーバイク世界選手権」の第6戦はイギリスのドニントンパークサーキットでの開催です。5月25日(金)~27日(日)に開催されるレースの模様をJ SPORTSでは5月28日(月)にオンエア。また、J SPORTSオンデマンドでも配信します。

今回はイギリスでの開催ということで、「スーパーバイク世界選手権」のカレンダーの中で最も盛り上がるイベントになるでしょう。近年MotoGP(グランプリ)はスペインやイタリアで人気がありますが、市販車ベースのレースが人気なのはイギリスです。元々「マン島TTレース」を代表とする公道を使ったレースが国民的イベントとして数多く開催されてきた歴史があり、国内選手権の「英国スーパーバイク選手権」はグランプリや世界選手権の影に隠れているようにも感じがちですが、英国国内では興行としても成功しています。

グランプリでは近年イギリス人が最高峰クラスで勝利することは少なく、2016年のカル・クラッチローの優勝は35年ぶりのイギリス人による最高峰クラス優勝でした。そんなクラッチローも元々は「英国スーパーバイク選手権」と「スーパーバイク世界選手権」(2010年に参戦)を経てMotoGPに参戦したライダーですから、やはりイギリスとスーパーバイクは密接な関係があります。

「スーパーバイク世界選手権」ではイギリス人ライダーが11回チャンピオンを獲得。これは過去30年の歴史の中で最多の記録です(2位はアメリカの9回)。11回のイギリス人によるチャンピオンの内、最多はカール・フォガティの4回。フォガティは1990年代の「スーパーバイク世界選手権」を代表する選手で、ドゥカティのファクトリーライダーとして活躍しました。フォガティに次ぐ3回は現役のジョナサン・レイ(カワサキ)となり、今季4連覇を飾るとなるとレイはフォガティの偉大な記録に並ぶことになりますが、その前にレイは最多勝記録でフォガティの記録を超えそうです。

前戦・イモラではドゥカティのお膝元での開催ながら、ジョナサン・レイ(カワサキ)が2連勝を達成。これでレイはカール・フォガティが持つ「59勝」という最多勝記録に並び、タイ記録となりました。2010年代の「スーパーバイク世界選手権」を象徴するライダーであり、史上最強のスーパーバイクライダーとの呼び声が高いレイが地元イギリス・ドニントンパークで新記録達成かという状況になってきました。

ただ、ここドニントンパークでは「スーパーバイク世界選手権」に参戦するイギリス人ライダーにとっても地元開催ということで、そう簡単にはレイも勝たせてもらえません。レイは昨年のレース2で優勝を飾りましたが、最強の3年間を過ごしたカワサキ時代を含めても僅か1勝しかできていないのがとても意外な感じがします。

アップダウンが激しくジェットコースターのような勇気が試されるコースのドニントンパークのマイスターと言えば、同じイギリス人のトム・サイクス(カワサキ)です。サイクスは2013年から2016年までの4年間、ドニントンパークでのレースを全て勝利しており、このサーキットで向かうところ敵なしの無双ぶりを見せていました。昨年のレース2でレイに勝利を譲るまで、ドニントン9連勝だったという強さでした。そんなサイクスは第4戦・アッセンでの勝利でスランプから脱出。第5戦・イモラでも連続表彰台を獲得しました。ここは、地元でのダブルウインを達成し、地元イギリスでのレイによる新記録達成を阻止したいところでしょう。同じカワサキのチームメイトながらサイクスも負けるわけにはいきません。

また、優勝の可能性が高いイギリス人ライダーといえば、チャズ・デイビス(ドゥカティ)もドニントンパークでは表彰台の常連。ランキング2位につけるデイビスは首位のレイに対して47点とほぼ1ラウンド分の差を付けられていますから、ここでの優勝は逆転チャンピオンに向けてはもはや必須の条件となってきます。

イギリス人ライダーで初優勝の期待を背負うのはアレックス・ロウズ(ヤマハ)も同じ。今季は表彰台がわずかに1回とチームメイトのマイケル・ファン・デル・マーク(ヤマハ)にエースの株を奪われつつありますから、地元で「スーパーバイク世界選手権」の初優勝を飾りたいところでしょう。まだまだ戦闘力に安定感がないヤマハですが、昨年のレース1でロウズは3位表彰台に上がり昨年の最初の表彰台を得ていますから、データ的にも相性が悪くはなさそうで、ロウズの攻撃的な走りが見られると地元のファンはより盛り上がるでしょう。

また、怪我で欠場していたレオン・キャミア(ホンダ)も復帰予定で、地元イギリスでのレースでカムバックを印象付ける良い走りに期待。さらに「英国スーパーバイク世界選手権」をレギュラーで戦うレオン・ハスラム(カワサキ)も前戦・イモラに引き続きワイルドカード参戦。父親のロン・ハスラムを彷彿とさせるエルフのカラーリングを施したマシンで出場しますから、イモラに続いて注目を集めそうです。

イギリス人ライダーが年に1度、他のレースにはないほどの火花を散らしあうドニントンパークでの戦い。そんな大混戦のレースでジョナサン・レイはカール・フォガティの記録を抜くことができるかどうか、見応えのある1戦が始まります!

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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