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【スーパースポーツ世界選手権 第5戦イモラプレビュー】~大久保のチームメイト、ケナン・ソフォーグルの引退レース
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ600ccのスポーツバイクで争う「スーパースポーツ世界選手権」の第5戦がイタリアのイモラサーキットで5月11日(金)~13日(日)に開催されます。今回もJ SPORTSでは日本人ライダーの大久保光(おおくぼ・ひかり)が出場するこのレースを5月13日(日)に生放送。また、J SPORTSオンデマンドでもLive配信されます。
第5戦の開催を前に衝撃的なニュースが飛び込んできました。大久保光のチームメイトであり、600cc「スーパースポーツ世界選手権」の大スター、ケナン・ソフォーグルが今回のイモラのレースをもって引退することを発表しました。マイスターの突然の引退発表には本当に驚きましたね。今回は引退レースとなるケナン・ソフォーグルについて改めて彼のキャリアを紹介しておきましょう。
ソフォーグルはトルコ出身のライダーで、2003年に「スーパースポーツ世界選手権」にデビューしています。その後、ヨーロッパ選手権に参戦した後、3年のブランクを経て2006年にホンダからフル参戦で復帰。2007年には早くも「スーパースポーツ世界選手権」のチャンピオンに輝いています。その後、王道コースとして「スーパーバイク世界選手権」にテンケイト・ホンダからステップアップを果たすも、再び「スーパースポーツ世界選手権」に舞い戻り、このクラスのマイスターとしての道を歩み始めます。
2010年にはホンダで2度目のチャンピオンに。翌2011年はロードレース世界選手権・Moto2に参戦し、オランダGPではマルク・マルケスに2秒差に迫る2位表彰台を獲得。現在MotoGPクラスで活躍するトップライダーが数多く参戦していた時代ですから、これは彼の実力を改めて感じる結果ですね。
そして2012年からは三度「スーパースポーツ世界選手権」に舞台を移し、今度はカワサキから参戦。移籍初年度からカワサキにチャンピオンをもたらし、その後も2015年、2016年と連覇。「スーパースポーツ世界選手権」で5度のタイトルを獲得した600ccマイスターとして君臨してきました。5回のチャンピオンは圧倒的な歴代最多記録です(アンドリュー・ピットとセバスチャン・シャルパンティエのそれぞれ2回が歴代2位)。
「スーパースポーツ世界選手権」はメインカテゴリーである「スーパーバイク世界選手権」へのステップアップカテゴリーという側面があり、長くこのレースに参戦するライダーは多くはありませんが、その分、毎年、勢いある若手が現れる連覇が難しいシリーズでもあります。高い旋回スピード域と巧みなコントロール能力が求められ、誰よりも勢いが無いと勝てないレース。今でもまだ33歳の若さではありますが、ソフォーグルはジュール・クルーゼルやブロック・パークスなどの強力なライバルを打ち破り、近年はマイケル・ファンデルマーク、パトリック・ジェイコブセンらの壁となってきたのです。
しかも、トルコというレース文化があまり根付いていない国の出身。母国でレースを始め、そこからヨーロッパに来て、恵まれた環境で成長してきたヨーロピアンライダーたちを打ち負かしてきたのですから、ソフォーグルの作った功績は非常に大きいと言えるでしょう。今季は「スーパーバイク世界選手権」にトプラック・ラズガットリオーグルという21歳の新人が参戦し、良い走りを見せていますし、ソフォーグルのフォロワーとも言えるトルコ人選手も頭角を表し始めています。
そんな現役レジェンド、ケナン・ソフォーグルですが、昨年はオフ中の怪我で序盤2戦を欠場。復帰後は勝利を重ね、チャンピオン争いに追い付くというスター選手ぶりを見せつけました。引退もほのめかしていたとされる今季でしたが、またも怪我で3戦を欠場。ヤマハの躍進もあり、引退が早まったという形でしょう。
ソフォーグルはカワサキのトップチーム「Kawasaki Puccetti Racing Team」からイモラの引退レースに挑みます。カワサキに3度のタイトルをもたらしたレジェンドの引退で、今後は日本人ライダーの大久保光にカワサキのエースとして頑張ってもらわないといけないわけですね。昨年、タイトルを争ったシェドリアン・モライスも代役で参戦し、ヤマハの隊列の中に割って入る走りを見せていますし、ソフォーグルの引退は大久保にとっても大きなターニングポイントになるはずです。
今季の「スーパースポーツ世界選手権」はヤマハが圧倒的な強さを発揮。チャンピオンのルーカス・マヒアス、ランディ・クルメナッハー、サンドロ・コルテセ、ジュール・クルーゼルと4戦で4人のウイナーが誕生していますが、全てヤマハ。そんな状況下で引退レースとなるソフォーグルがどんなパフォーマンスを最後に見せるのか。引退レースで奇跡の優勝?それもありえそうなのがケナン・ソフォーグルの偉大な存在感なのです。
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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