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モーター スポーツ コラム 2018年3月30日

SUPER GT第1戦プレビュー 今年のGT500に、「絶対!」はあり得ない?

SUPER GT by 秦 直之
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100号車

今年も全8戦で争われるSUPER GTは、若干カレンダーに入れ替わりはあったものの、幕を開けるのは岡山国際サーキットであるのは例年どおり。また、あの刺激的なバトルに、誰もが魅了されることだろう。今年はレギュレーション的に大きな変化はないが、オフに重ねられたテストでマシンはより洗練され、GT500は3月中旬に行われた公式テストにおいて、早くもレコードタイムが更新された。WAKO'S 4CR LC500を操る大嶋和也によって記された、それは1分18秒017! コンディションに恵まれれば、1分17秒台への突入も夢ではなさそうだ。

今年の開幕戦はどういう展開になるのだろうか? ひとつの指針となるのが、公式テストの結果であるものの、熱心なファンであれば100%鵜呑みにしてはいけないことを、もう察しているはずだ。どんなタイプのタイヤを選んで走っているのか、それだけでも違いは生じるし、もっと先の先のレースを見越して、あえてウエイトを積んで走っている可能性もある。中にはライバルに手の内を明かさないよう、三味線を引く=敢えてペースを走っている車両もあったかもしれない。

全体的に言えることは、今年のGT500に絶対的な車両は存在しなさそうだ。昨年はまだ記憶に残っていると思われるが、序盤戦はレクサスLC500に圧倒的なマージンがあった。これが、ウエイトハンデが厳しくなるにつれ、ホンダNSX-GTが迫り、そして最後にしっかりニッサンGT-Rが詰めてきたという印象ではなかったか。それが今年の公式テストを見る限りにおいて、3メーカーの車両すべてセッショントップを奪っているし、タイム差はごくわずかであるからだ。ただ、一発の速さも重要ながら、本当に重要なのはコンスタントタイム。いかに好タイムを安定して刻めるか、にかかっている。さらに言えば、タイヤにどれだけ優しいか、信頼性の高さなども含まれるため、決勝での強さは単純にタイムからでは計り知れない。

そういった意味では、蓋を開けてみるまで分からない……というのが本当のところで、開幕戦が終わればシーズンの大勢もつかめるのではないか。しかし、それで終わってしまえば、まったく面白くもなんともないわけで。そこで視線を変えて、今年のラインアップについて触れてみよう。そこから何かが見えるかもしれない。

元F1王者・バトンのデビューウィンなるか?

やはり今年、最も期待されているのは、山本尚貴と超がつくほどの大物ルーキーがドライブする、RAYBRIG NSX-GTであるのは間違いない。F1チャンピオンの経験を持つ、ジェンソン・バトンがいきなり勝てば、それはそれはスタンドは湧き上がるだろう。しかし、ヘイキ・コバライネンという、やはりF1の、しかも優勝経験を持つドライバーでさえ、SUPER GTで勝ちに行けるまで1年を要している。中にはバトンとコバライネン、格の違いを訴える者もいるだろうが、「それでもなお」と言わざるを得ない。実際、公式テストの初日は山本が一切乗らず、バトンの習熟に充てられたほど。ただ、デビューウィンは至難の技というだけで、シーズン中の勝利もないとは言い難いのではないか。それだけの実力はあると見る。

その流れでホンダ陣営の話を続けよう。まずARTA NSX-GTは復帰の伊沢拓也が、野尻智紀と新たにコンビを組む。MOTUL MUGEN NSX-GTは武藤英紀と中嶋大祐、KEIHIN NSX-GTは塚越広大と小暮卓史、Epson Modulo NSX-GTはベルトラン・バゲットと松浦孝亮のコンビで、それぞれ変化なし。昨年は岡山で屈辱のレースを強いられたホンダ陣営である。今年は何がなんでも、という意識は強いはず。公式テストでも4セッション中2セッションでトップに立った、KEIHIN NSX-GTがその先鋒に立つのではないか。

続いてニッサン陣営だが、CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rは本山哲と千代勝正のコンビは不動のままだが、体制は一新。従来のMOLAからB-MAX RACINGに改められた。ドライバーとチームのコミュニケーションは、併せて活動するF3で本山も千代もアドバイザーとして帯同していたことから問題はないはず。GT300で優勝経験もあるチームだから、技術力にも問題はないはずだが、新たに挑むGT500との勝手の違い、これが少々気になるところではある。

MOTUL AUTECH GT-Rは、松田次生とロニー・クインタレッリのコンビで不動のまま。昨年の最終戦の勢いが残っていれば、王座奪還の可能性はぐっと高まるはずだ。ひとつ不思議だったのは、岡山の公式テストに続いて行われた、富士でもカラーリングが施されていなかったこと。なんらかのサプライズが用意されているだろうか?

一方、カルソニックIMPUL GT-Rには佐々木大樹が加入してヤン・マーデンボローと、そしてフォーラムエンジニアリングADVAN GT-RもGT300からステップアップの高星明誠がジョアオ・パオロ・デ・オリベイラと、それぞれ新たなコンビを組むこととなった。ひとつ気になるのは、オリベイラがモラルハザードポイントの蓄積により、公式練習の最初の1時間を走れなくなったことだ。経験の少ない高星の負担が増えることが、どう影響を及ぼすか。

そしてレクサス陣営だが、チャンピオンの証、ゼッケン1を背負って挑むのはKeePer TOM'S LC500の平川亮とニック・キャシディだ。体制に一切の変化はない。今年も開幕戦を制して、そのまま勢いを保つのか? また、やはり変化がないのは、ZENT CERUMO LC500の立川祐路と石浦宏明。このチームもまた王座奪還が至上命令だ。

あれだけ猛威を振るったレクサス陣営でありながら、4チームがドライバーをひとりずつ入れ替えている。まずWAKO'S 4CR LC500の大嶋のパートナーはフェリックス・ローゼンクヴィストに、WedsSport ADVAN LC500の国本雄資のパートナーは山下健太に改められた。このふたりはGT500ルーキーで、山下は昨年までGT300を戦い、またスポットでGT500の経験を持つ。ローゼンクヴィストはSUPER GTそのものが初挑戦となる。岡山の公式テストでは海外レース出場のため、走っていないのが気になるところだが、チームが寄せる信頼は高い。そして、au TOM'S LC500は中嶋一貴と新加入の関口雄飛のコンビに、DENSO KOBELCO SARD LC500は小林可夢偉が新たに加わって、コバライネンと組み、F1経験者によるコンビが結成されることとなった。

今年も引き続きGT500は15台で競われるが、どのチームが勝ってもおかしくなく、やはり予想は困難だとしか言いようがない。しかし、開幕ダッシュを決めたチームが、シリーズを有利に戦うのは間違いないだろう。

GT300はJAF-GT勢が圧倒的に有利?

29台が出場するGT300で、ゼッケン0を背負って挑むのはグッドスマイル初音ミクAMGの谷口信輝と片岡龍也。それぞれ4度目の王座獲得と、まだ果たされていない連覇を目指すが、こと今年に関して、開幕ダッシュは厳しそう……というのがもっぱらの予想だ。
簡単に言えば、テクニカルサーキットとして知られる岡山国際サーキットは、旋回性能の高いJAF-GT有利というのが、もともとの定評だった。ただ、昨年はBoPと呼ばれる調味料が、ほどよくFIA-GT3にかけられていたようだが、今年はJAF-GTにも多くとまでは言わないが、同じようにほどよくかけられている感もある。他のサーキットならいざ知らず、開幕戦ではFIA-GT3勢が、厳しい戦いを余儀なくされそうだ。

実際、公式テストでは4セッション中、3セッションでJAF-GTがトップに立ち、セッション2トップだった松井孝允と坪井翔の駆る、HOPPY 86 MCが最速タイムを樹立。ちなみにセッション3では高橋一穂と加藤寛規が駆る、シンティアム・アップル・ロータスが、そしてセッション4では井口卓人と山内英輝の駆る、SUBARU BRZ R&D SPORTがトップだった。この3台は、もちろん開幕戦の優勝候補に挙げてもいいだろうが、もう1台忘れてはならないのが、TOYOTA PRIUS apr GTの31号車だ。嵯峨宏紀の新たなパートナーとして起用されたのは、GT500で2度のチャンピオン経験を持つ平手晃平であるからだ。公式テストでは、それほど目立った存在ではなかったものの、それはプリウスの特殊な操作に対する平手との合わせ込みを重視していたためで、本番では必ず来るというのが大方の予想。また、中山友貴と小林崇志の新コンビで挑む、UPGARAGE 86 MCも信頼性の向上がはかられていれば、手強い存在になりそうだ。

メルセデスAMG勢より、FIA-GT3を走らせるチームでダークホースになりそうなのは、リチャード・ライアンのパートナーが富田竜一郎に改められた、Hitotsuyama Audi R8 LMSだ。トップにこそ公式テストではつけていなかったものの、絶えず上位につけて高い安定感を示していた。しかし、あくまでテストはテスト。思いがけぬ展開が、待ち構えているかもしれない。

秦 直之

秦 直之

大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。

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