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モーター スポーツ コラム 2018年3月23日

スーパーバイク世界選手権 第2戦タイ~メランドリ開幕2連勝で勢力図に大きな変化?

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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「FIMスーパーバイク世界選手権」の2018年シーズンは戦いの舞台を東南アジアのタイ・ブリーラムへと移し、3月23日(金)~25日(日)にチャンインターナショナルサーキットで第2戦が開催されます。J SPORTSでは3月26日(月)にJ SPORTS 3でオンエア。また、J SPORTSオンデマンドでも映像を配信します。

今、最もバイクレースが熱いブームとなっている東南アジア。MotoGPではついにマレーシア人ライダーのハフィズ・シャーリンがデビューし、今回の舞台であるタイ王国のチャンインターナショナルサーキットでは10月に「タイグランプリ」が開催されます。日本では4輪レースの「SUPER GT」が開催されていることでおなじみのチャンインターナショナルサーキット。長年MotoGPの開催を目標に2015年に「スーパーバイク世界選手権」を誘致し、ノウハウを積み重ね、ついにタイでもグランプリ開催が実現しました。バンコクからは交通の便にやや難がありながらも、レースだけでなく多くのプロモーションイベントを開催し、お祭り的雰囲気を作る努力をしているサーキットで、現地の人々の関心が非常に高いレースと言えます。

チャンインターナショナルサーキットでの「スーパーバイク世界選手権」は4回目となるので多くのライダーたちがすでに経験済みのコースとなりました。そういう意味では以前よりも波乱は起きづらくなっていますが、シーズンの流れを占う意味で重要な1戦と言えますから、開幕戦では分からなかった本当の勢力図を見極める良い材料となるでしょう。

さて、開幕戦オーストラリアのフィリップアイランドでは様々な事が起こりました。「Kawasaki Racing Team WorldSBK」で4年連続の王者を狙うジョナサン・レイがレース1でタイヤの急激なグリップ不足から失速。ズルズルと順位を落として行くという波乱の幕開けになったのです。

2月のオーストラリアは季節的にもベストコンデイションではありますが予想外に低い路面温度にピレリが持ち込んだコントロールタイヤが充分に機能せず、安全性も考慮して、レース2は途中にタイヤ交換を義務付ける「フラッグトゥフラッグ」のフォーマットに急遽変更。非常にドタバタしたレースウィークになってしまいました。

レース1では残り4周でマルコ・メランドリ(ドゥカティ)がトップに立ち開幕戦優勝。チームメイトのチャズ・デイビス(ドゥカティ)が3位とドゥカティワークスが好調な滑り出しを披露。一方でカワサキワークスはトム・サイクスが2位表彰台を獲得したものの、ジョナサン・レイは結局5位まで順位を後退させることになってしまいました。今季からレブリミット制限による新しい車両規定レギュレーションもあり、ストレートスピードはドゥカティ優勢。直線番長カワサキは苦しい立場に追い込まれていることも分かりました。

タイヤ問題から「フラッグトゥフラッグ」式となったレース2ではタイヤの心配をする必要がなかったジョナサン・レイが快走を披露。しかしながら、勢いに乗るマルコ・メランドリがチェッカー目前でジョナサン・レイに追いつき、僅か0.021秒差で逆転して開幕2連勝を果たしました。「スーパーバイク世界選手権」名物とも言えるドゥカティvsカワサキのクロースフィニッシュ劇に、グダグダになりかけたレースウィークを危惧したオーストラリアのファンも拍手喝采。結果として興奮度の高いレースになりましたね。

ということで、ドゥカティのメランドリが開幕2連勝というスタートになった今季の「スーパーバイク世界選手権」。開幕戦はカワサキのレイが見事なスタートダッシュを見せて。その後は連勝を重ねて行く展開が続いていましたから、「ああ今年もか」というパターンにはならなかったことはシーズン全体の波乱を予感させます。

実際にレイも週末を通してドゥカティに対して足りない部分があったことを認めていますし、ドゥカティとカワサキの差は例年以上に詰まっていると言えます。今季はシーズン中の性能調整により、ドゥカティやカワサキに対抗するライバルメーカーが一気にポテンシャルアップする可能性があります。そういう意味では2大メーカーは選手権を考えれば着実にフィニッシュし、コンスタントにポイントを重ねておく事が何よりも重要なミッションとなります。

開幕戦フィリップアイランドではチャズ・デイビス(ドゥカティ)がレース2で転倒リタイアに終わってしまった一方でカワサキワークスのジョナサン・レイとトム・サイクスは苦しみながらも着実にポイントを獲得しました。攻めの走りで勝利を重ねるか、じっくりシーズンを戦い、来るべきチャンスに備えるか。今季も2大ワークスの戦いとなることは確実ですが、例年以上にその競合いは熾烈を極めそうですね。

第2戦タイはジョナサン・レイがこれまた得意とするサーキットでもあります。ここでの過去6レースの内、優勝5回という圧倒的な強さを見せています。レイが優勝を逃した1回で勝ったのはトム・サイクス。ということで、過去3年間、優勝したのは全てカワサキなのです。その中でサイクスはフィリップアイランドでもポールポジションを獲得し、これで通算43回のポール回数で過去最多を持つトロイ・コーサーに記録に並びました。タイでポール獲得となれば、サイクスは「ミスターポールポジション」の称号を名実共に獲得することになりますが、実はタイではまだサイクスのポール経験はありません。タイでその壁を打ち破る事ができるでしょうか。

今季は2大ワークスだけでなく、中段の混戦模様も楽しみの一つ。ヤマハのチームメイト対決も昨年以上の激しさを期待できますし、開幕戦ではホンダに移籍したばかりのレオン・キャミアが印象的な走りを見せました。4月に始まるヨーロッパラウンドを前にタイで流れを掴むのはどのライダー、どのメーカーでしょうか。注目の1戦です!

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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