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2000年の番組開始から15年以上に渡り、良質かつ多彩な企画で人気を博してきた、J SPORTSオリジナルサッカー番組「Foot!」。
2011年8月から、週5日放送のデイリーサッカーニュースとしてリニューアルし、世界のサッカー情報を余す ことなく紹介する。

Ben’s Foot! notes 2016年04月07日

Ben's Foot! notes

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Liverpool children have a clear path to success but boys growing up in Cornwall will struggle. Tony Barrett reports


Times紙のTony Barrett記者:
「リヴァプールの子供たちには、成功への道がはっきりしている。だが、コーンウォールで生まれ育ちの子供は難しい」

●タイムズ紙とナショナル・フットボール・アーカイブが共同で行った調査。

●フットボール・リーグが創設した1888年から昨シーズン終了まで、1部リーグから4部までイングランドのプロリーグでプレーしたイングランド人選手とウェールズ人選手について、全員の生まれた場所を調べて統計にした。

●イングランド・ウェールズのどこで生まれたらサッカー選手になりやすいか、なりにくいか?どこの地方がサッカー選手を育てるのが得意なのか?

●そのデータから分かった傾向と、その理由などを分析する特集記事。


127年間の歴史において、ノースイースト出身の選手が圧倒的に多い。
しかし、21世紀に入ってから、サッカー選手を育てる場所と言えばマージーサイドだ!

●ここ15年間、マージーサイド生まれとしてプレミアリーグ又はフットボールリーグでプレーしたサッカー選手が315人もいる。

●そのうち、Steven Gerrard、Jamie Carragher、Ross Barkley、Wayne Rooney、Scott Dann、Leighton Baines、Robbie Fowler、Joey Barton、Rickie Lambert、Steve McManaman、Callum McManamanなど居る。

●人口に対する比率で比べてみると、人口100万人当たり、マージーサイド出身のプロサッカー選手がここ15年間、225.7人居る。

●2番目に多いのはノースイースト地方のCleveland州で、人口100万人当たり188.2人。

●フットボール・リーグが創設された1888年まで遡ると、人口に対して最も多くのサッカー選手を育てているのはノースイースト地方。

●127年間の歴史において、County Durham州は人口100万人当たり2030人のサッカーも育ててきた。2番目に多いのは同じノースイースト地方のNorthumberland州で1628人。3番目に多いのもノースイースト地方で、Tyne & Wear州で1597人。

●その例:
Durham州: Bryan Robson, Lee Cattermole, Steve Harper, Bobby Robson
Northumberland州: Bobby Charlton, Jack Charlton, Steve Bruce, Fraser Forster
Tyne & Wear州: Chris Waddle, Peter Beardsley, Paul Gascoigne, Andy Carroll

●州別のデータを表・地図で見てみると、地方により、特に南北により大きな差がある。


2000年~2015年のデータ。北部の都会が多くの選手を育てていることが分かる。

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●地図で見てみると、北部出身の選手が多いが、ミナミに行けば行くほど少なくなることが分かる。

●特に、ウェールズとイングランドの中部・南部の田舎では、人口に対してサッカー選手の数が少ない。

●左の表のように、地方を大きく3つに分けると、北部の州(赤)が基本的に上位で、南部の州(緑)が基本的に下位だ。

●但し、最大の都会であるロンドンは割りと多くの選手を育てている。










1888年~2015年のデータ。北部の都会が多くの選手を育てていることが分かる。

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●1888年から全てのシーズンと全ての選手を調査すると、上記の傾向が更にはっきりしている。

●地図で見てみると、北部出身の選手が多いが、ミナミに行けば行くほど少なくなるという傾向が非常に強い。

●左の表のように、地方を大きく3つに分けると、北部の州(赤)が完全に上位で、南部の州(緑)が完全に下位だ。

●人口の多いロンドンでも、北部と比べて全然多くの選手を育てているとは言えない。












背景1:フットボールクラブの密度

●当然なことに、田舎よりも都会のほうがクラブが多いし、移動の負担があまり大きくないので練習に行きやすい。

●イングランドのノースウェスト地方は、フットボールクラブの密度、つまり、面積に対してクラブの数が世界最高だといわれる。


FAのRegional Coach Development Manager、Jack Walton氏が語る

●"If you look at the northwest of England, it has the most densely populated area of professional clubs on the planet. In Taunton, in the southwest, there are only around six professional clubs in a 90-minute radius.
「イングランドのノースウェスト地方を見てみると、世界のどこよりも多くのプロフットボールクラブが密集している。それに対して、サウスウェスト地方のトーントンでは、半径90分以内にプロフットボールクラブが6つしかない。

●"That in itself is an obvious advantage. It's not just about coaching, although that's obviously important, it's also about having the opportunity to be spotted and the opportunity is obviously greater if you are in an area with more clubs.
「それが北西部のとって大きなアドバンテージだ。コーチングももちろん大切だが、そもそもスカウトされる機会はどのぐらいあるのか。クラブが密集しているエリアに住めば、発見される可能性が高くなる。」


リーズ大学ビジネススクールのBill Gerrard教授(専門:ビジネスとスポーツ分析論)

●"Geography is crucial. It goes further than just being spotted.
「地域差が非常に大きい。実はスカウトされる機会以上の問題だ。」

●"If you live in a rural area in Cornwall or south Wales and you have a professional club that wants you to train with them, the logistics of getting to training make that commitment much greater than in other parts of the country.
「例えば、コーンウォール州やウェールズ南部の田舎に住んでいる子供が例えプロクラブにスカウトされ、練習に誘われたとしても、移動の負担を考えると、毎週の練習に行くのにコミットするのが都会よりも遥かに難しいことだ。」

●"When I was coaching a team in Leeds, we were within one hour's drive of Manchester United, City, Bolton, Huddersfield and, obviously, Leeds United.
「私がリーズの少年サッカークラブでコーチを務めたとき、リーズ・ユナイテッドだけではなく、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、ボルトン・ワンダラーズ、ハダースフィールド・タウンにも車で1時間以内に行くことが出来た。」

●"It is much easier to commit to joining those clubs and training three or four times a week than it would be if you lived in more remote rural areas.
「週3、4回の練習でも比較的に気軽に行けた。しかし、田舎に住む子供は移動がそれよりも遠く、招待があっても頻繁に行くのが困難だ。」




背景2:マージーサイドの文化

エヴァートンのRoss Barkley選手
●Asked why so many footballers emerge from Liverpool and its surrounds, the Everton midfielder cited genetics. "We're a bit different to anyone else, aren't we? We are aggressive, winners. It must be in our genes."
「リヴァプール生まれ育ちの私達は、他のイギリス人とはちょっと違うよね。私達はアグレッシブだし、負けず嫌いだ。たぶん、遺伝子から来ているのではないか。」


クリスタル・パレスのScott Dann選手
●My earliest football memory is of playing in the street.
「フットボールに関して、最初の記憶は道でプレーしたことだ。」

●That's the way it was where I grew up, in Kirkdale, not far from Anfield and Goodison Park. As soon as you were old enough you went out and played football with your mates.
「私の地元、アンフィールドとグディソン・パークに近いカークデールでは、それが当たり前だった。一人で家を出かけても良い年齢になれば、毎日、友達とフットボールをやりに行った。」

●When you left the house you could go one way and find a game, or a different way and find another. If there was a patch of grass, you'd find lads of all ages going at it.
「家を出て、どの方向へ歩いてもすぐにフットボールをやっている人が見つかる。芝生があれば、色んな年齢の子供が一緒にサッカーをやっている。」

●Older lads wouldn't take it easy on you. I realise now how important it was in terms of realising how competitive football is and how tough, mentally and physically, you have to be.
「相手が年上だからといって、より小さな子どもに優しくしてくれることは無い。ここで私はサッカーの激しさを知り。メンタルにもフィジカルにもタフにならなければならないことを覚えた。」

●That's how we were brought up ― to give absolutely everything ―and that's one of the main reasons so many players from Liverpool make it in the professional game.
「だから、子供の頃から毎日、サッカーに全力を尽くす日々を過ごした。その育ち方が、リヴァプール生まれ育ちのプロ選手がこんなに多い理由の一つだ。」

ベンの補足:トーントンでは、半径90分以内に6クラブがあると言っても、全てがスモールクラブなので、トーントンまでスカウトしに来てくれることがあまり無かった。中学で一緒にフットボールをやっていた仲間の1人はサウサンプトンに誘われたが、片道2時間だったので週1回だけだったし、長くは続けられなかった。私達、トーントンの少年たちも毎日、友達でフットボールをする文化があった。しかし、プロを目指すのが現実的ではないので、あまりそういった夢を持たずに遊びでやっていた。


FAのRegional Coach Development Manager、Jack Walton氏
●"The question then is why does Merseyside excel in the northwest, and again there are a number of reasons. A key one is population, 500,000 is viewed as a sweet spot in terms of the ideal number to allow youngsters to test themselves against one another and that just happens to be the figure for Liverpool.
「ノースウェスト地方の中でも、マージーサイドが何故優れているのか。理由がたくさんあるが、その1つは人口の規模だ。少年たちが地元で切磋琢磨するのに50万人規模の人口が理想的だと見られているが、リヴァプールはちょうどそのくらいの規模だ。」

●"In terms of park space, Liverpool is second only to London, so that enhances opportunity.
「公園面積もロンドンに次いで2番目に広いので、フットボールをする機会も多い。」

●"Then you have the cultural issues, which everyone is aware of, particularly the sense of football being a religion on Merseyside, a feeling that is enhanced by having two successful clubs in one city and the rivalry and competitiveness that engenders.
「それから、文化の特徴も良く知られている。マージーサイドではフットボールは宗教のようなものだ。街にビッグクラブが2つあり、そのライバル関係も地元のフットボール文化を盛り上げる。」

●"Football in Cornwall, at the other end of the spectrum, gets a lot of competition from rugby, but in Liverpool football is dominant. If you were to create a bespoke area for football development, Merseyside would be it."
「それに対して、例えばコーンウォール州ではラグビーも人気がある為、子どもたちはフットボールだけに集中しない。マージーサイドではフットボールが全てなので、フットボール育成には理想的な環境だ。」

●"What it boils down to is opportunity and experience, and in both areas Merseyside scores highly. It is a perfect storm."
「機会と経験が大切たが、マージーサイドは両方ともたっぷり提供できる。完璧な状況だ。」




背景3:社会経済的な背景
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●地方により、特に南北により、サッカー選手の数が違うということが分かった。

●実は、それぞれの州の社会経済的な状況を見てみると、同じような格差と傾向が見られる。

●左の表は、州によって1人あたりの平均収入(2013年度)を表している。

●同じように、南部の州(緑)と北部の州(赤)にはっきりした格差がある。

●サッカー選手を多く育てる北部の州が基本的に収入の低い順位にある。

●一方、比較的にサッカー選手を育てていない南部の州では、収入が高い。

●社会経済的な状況と、サッカー選手の数が反比例しているようだ。



出典:英国政府の統計






背景3:社会経済的な背景

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●左の表は、前ページのデータを地方別にしたものである。

●つまり、地方によって1人あたりの平均収入(2013年度)を表している。

●この州は、地方によって失業率の最新データを表している。

●サッカー選手が最も少ない南部の田舎3地方は1番・2番・3番、失業率が低い。

●一方、1888年から最も多くのサッカー選手を育ててきたノースイースト地方は、圧倒的に一番失業率が高い。


出典:英国政府の統計 / 国家統計局


背景3:社会経済的な背景

リヴァプール大学のKieran Maguire先生(専門:フットボールの経済学)
●"Social background matters. Football is still predominately a working-class game.
「社会的な背景が重要だ。フットボールは今でも、主にワーキングクラスがやるスポーツだ。」

●"Middle-class kids still play football but will have a greater range of alternative activities and parents who are more likely to limit the amount of time the kids devote to football.
「もちろん、ミドルクラスの子どもたちもフットボールをするが、他にも活動・娯楽の選択肢が多い。またミドルクラスの親は、(勉強などに集中させるべく)子供のフットボールする時間を制限することも多い。」

●"Working-class families are more likely to see football as a career option for their son than someone from a wealthier background.
「それに対して、ワーキングクラスの親は息子の将来キャリアとして、フットボールを現実的な選択肢と見なす可能性が富裕層より遥かに高い。」

●"Then you have population concentration. Large cities mean that there's a lot of young players in a relatively small geographical area. This increases competitiveness and playing standards."
「それから人口密度も重要だ。大都市では、比較的に狭いエリアに若いフットボール選手の人数が多い。これにより競争が激しく、レベルが良くなる。」


これから変わるかもしれない?

FAのRegional Coach Development Manager、Jack Walton氏
"But there is more improvement to come throughout the country. Our team of grassroots, full-time coach developers increased from 16 to 40 last summer, so we now have a full-time coach educator working in each county. They are putting more coaches through courses that are more flexible and affordable."
「今後、全国規模で向上を図りたい。FAとしてグラスルーツでコーチを育てる、専任の『コーチ・デベロッパー』を去年の夏、16人から40人まで増やした。その為、今はどの州にもコーチ・デベロッパーを置けるようになった。より多くの地方に於いて、より柔軟な形とより手頃な値段で、より多くのコーチに指導を提供するのが目的だ。」


ベン・メイブリー


参考:この特集で使われている「州」
*言い方の相違:
×Salop → ○Shropshire
×Hereford and Worcester → ○Worcestershire

なお、単一自治体の導入により、行政としての「州」が無くなったものもあるが、スポーツなどローカルレベルで活動があるところでは、現在もこの歴史的な「州」がベースとなっている。(各州に協会がある、など。)


参考:データで使われている「地方」

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