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2010/07

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このブログについて

2000年の番組開始から15年以上に渡り、良質かつ多彩な企画で人気を博してきた、J SPORTSオリジナルサッカー番組「Foot!」。
2011年8月から、週5日放送のデイリーサッカーニュースとしてリニューアルし、世界のサッカー情報を余す ことなく紹介する。

ワールドカップ 2010年07月12日

(64)決勝 オランダ×スペイン

foot!
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決勝
2010/7/11 20:30 サッカー・シティ(ヨハネスブルグ)
オランダ×スペイン

天候:晴れ時々曇り 気温:14度 観客:84,490人
主審:ハワード・ウェブ(イングランド)

【オランダ】
GK
1 マールテン・ステケレンブルフ
DF
2 グレゴリー・ファン・デルヴィール
3 ヨニー・ハイティンハ
4 ヨリス・マタイセン
5 ジオヴァニ・ファン・ブロンクホルスト①(C)
MF
6 マルク・ファン・ボメル
8 ナイジェル・デ・ヨンク
11 アリエン・ロッベン②
10 ウェズレイ・スナイデル⑤
7 ディルク・カイト①
FW
9 ロビン・ファン・ペルシー①
SUB
16 ミシェル・フォルム
22 サンデル・ボスフケル
12 ハリド・ブラルーズ
13 アンドレ・オーイエル
14 デミー・デ・ゼーウ
15 エドソン・ブラーフハイト
18 スタイン・スハールス
20 イブラヒム・アフェライ
23 ラファエル・ファン・デル・ファールト
17 エルイェロ・エリア
19 ライアン・バベル
21 クラース・フンテラール①
監督
ベルト・ファン・マルヴァイク(オランダ国籍)

(4-2-3-1)
-------ファン・ペルシー-------
------------------
--カイト---スナイデル---ロッベン-
-----デ・ヨンク--ファン・ボメル-----
-------------------
-ジオ-マタイセン-ハイティンハ-ファン・デル・ヴィール-
-------------------
-------ステケレンブルフ-------

【スペイン】
GK
1 イケル・カシージャス(C)
DF
15 セルヒオ・ラモス
3 ジェラール・ピケ
5 カルレス・プジョール①
11 ジョアン・カブデビラ
MF
16 セルヒオ・ブスケッツ
14 シャビ・アロンソ
8 チャビ・エルナンデス
FW
18 ペドロ・ロドリゲス
7 ダビド・ビジャ⑤
6 アンドレス・イニエスタ①
SUB
12 ビクトル・バルデス
23 ホセ・マヌエル・レイナ
2 ラウール・アルビオル
4 カルロス・マルチェナ
17 アルバロ・アルベロア
10 セスク・ファブレガス
13 ファン・マヌエル・マタ
20 ハビ・マルティネス
21 ダビド・シルバ
22 ヘスス・ナバス
9 フェルナンド・トーレス
19 フェルナンド・ジョレンテ
監督
ビセンテ・デル・ボスケ(スペイン国籍)

(4-3‐3)
--------ビジャ--------
-イニエスタ-----------ペドロ-
---------チャビ-------
---X・アロンソ----------
----------ブスケッツ------
-カプデビラ-プジョール--ピケ--S・ラモス-
-------------------
--------カシージャス--------

【マッチレポート】
2007年8月25日、サモアの首都アピア。
南アフリカへと続く遥かな遥かな旅路の幕開けとなった
タヒチとニューカレドニアの一戦は
9分、ピエール・ワジョカがPKを決めたニューカレドニアが0-1で勝利した。
この日から数えて世界中で重ねられた予選のゲームは848。
それに南アフリカでの63を加えた911試合が既に終了。
あのアピアの激闘から1051日、912試合目として迎えたワールドカップ決勝。
最後の聖戦。
オランダ王国。2大会連続9回目のワールドカップ。
ヨーロッパ予選は8戦全勝で余裕の首位通過。
南アフリカでもグループリーグを全勝で勝ち抜けると、
スロヴァキア、ブラジル、ウルグアイと難敵をなぎ倒し、予選から驚異の14連勝中。
1974年、1978年、共にホスト国へ屈し、
手に入れられなかった優勝の栄冠を、今日我が物に。
スペイン王国。9大会連続13回目のワールドカップ。
ヨーロッパ予選は10戦全勝でアッサリ通過。
南アフリカでは初戦でスイスにいきなり0-1で敗れ、世界に衝撃を与えたが
ホンジュラス、チリをリアリズムに徹して葬ると、
ポルトガル、パラグアイ、ドイツにすべて最少得点差での勝利。
初めてのファイナルで、そのまま初めての戴冠へ突き進む。
ファン・マル・ヴァイクがこの大舞台に送り出したのは
綺麗に1から11まで背番号の並んだ11人。
出場停止もなく、本来考えられたレギュラーが全員顔を揃える。
一方、デル・ボスケの選択はドイツ戦とまったく同じ11人。
不調のトーレスはベンチから。好調のペドロがスタメンに名を連ねた。

黄金に輝くワールドカップを挟んで両チームの選手が登場。
90分後か、120分後か、あるいはPK戦を経てか、
いずれにしろ試合が終わった時に、あのカップを掲げるのは
ファン・ブロンクホルストか、カシージャスか。
無数のフラッシュが光る中、ハワード・ウェブの笛でキックオフ。
開始46秒、ブスケッツにファン・ペルシーがいきなり危険なキックをお見舞い。
これが長く激しい熱戦の狼煙となる。
スペインの布陣を見ると、ドイツ戦とはイニエスタとペドロの配置が違う。
ペドロが右、イニエスタが左。相手の左SBファン・ブロンクホルストを意識してのことか。
5分、セルヒオ・ラモスがファン・ブロンクホルストに倒されて得たFK、
チャビのキックは、ファン・ペルシーに競り勝ったセルヒオ・ラモスの頭に合い、
ボールも枠に飛ぶが、ステケレンブルフが横っ飛びでファインセーブ。
まずはスペインがセットプレーから決定的なシーンを創出する。
構図はポゼッションのスペインと、前から積極的にプレスを掛けるオランダ。
8分、シャビ・アロンソの横パス、
スナイデルのプレスを受けたブスケッツが軽率に流すと、
裏から忍び寄っていたカイトはボールを奪ってフィニッシュ。
シュートはカシージャスがキャッチしたが、
これもオランダが考える1つの狙い。スペインは命拾い。
スペインはボールを回しながら、
斜めに走り出したビジャを使う裏へのパスが10分までに3度。
オランダCBの背後を突いていこうという意識が垣間見れる。
11分、イニエスタが右へ展開、セルヒオ・ラモスはカイトを振り切って
エリア内から強引にシュートを放つと、ハイティンハが何とかクリア。
その流れからショートコーナー、シャビ・アロンソの右クロス、
ファーでフリーのビジャが左足ボレーで狙うも、ボールはサイドネットの外側に。
スペインがラッシュ。畳み掛ける。
タイトさの象徴となる数字が1つ。
開始15分でファン・ペルシーのパス総数は4、ビジャの総数は2。
どちらも1トップにはボールを入れさせない。前で基点を作るのは難しそうだ。
オランダのファーストシュートは18分、
プジョールがイエローカードを受けながらロッベンを潰して取られたFK、
38mの距離をスナイデルが狙うも、カシージャスはガッチリとキャッチする。
ここからはチャンスこそ少ないものの、激しいつばぜり合いが続く。
22分にファン・ボメル、23分にセルヒオ・ラモス、28分にデ・ヨンク、
30分までにイエローカードは両チーム合わせて5枚。
中でもファン・ボメルは常に激しく、そしていい意味でも悪い意味でも汚い。
ここまでのゲームでも相手を挑発するような危険なプレーは目立っていたが、
それでもギリギリでカードを貰わないさまは、芸術的ですらあったと思う。
ただ、デ・ヨンクのファウルは、スパイクの裏がシャビ・アロンソの胸にヒットしていた。
ファイナルの前半とはいえ、これはレッドカードが妥当だったのではないか。
オランダのハイプレスは効いている。スペインのパス回しも、その激しさにブレる。
ポゼッションと主導権は必ずしも結び付いていない。
34分、珍しいシーン。
カシージャスとプジョールの接触でスペインがボールを外へ出した一連から、
ハイティンハがロングキックでスペインに返すが、
バウンドが弾んでカシージャスはキャッチできない。
ファン・ペルシーはCKをカシージャスに返すと、場内からも拍手が起きた。
37分、オランダのCKはサインプレー、
ロッベンのキックはエリア外から走り込んだファン・ボメルが左へ、
このボールはフリーのマタイセンの下へ送られたものの、シュートは当たらず。
おそらく練習どおりの形だったはずだが、ゴールは陥れられず。
38分、ペドロがドリブルから強引な左足ミドルを枠の右側へ。
これがスペインは26分ぶりのシュート。チャンスはなかなか創れない。
前半終了間際がオランダ、スナイデルが蹴ったFKの流れ、
スペインゴール前でオランダがボールを拾い、ファン・ペルシーの落としから、
ロッベンが得意の右サイドからシュートを放つと、カシージャスが弾き出す。
ポゼッションは44%対56%でスペイン。
シュート数も3本のオランダに対して、スペインは4本。
結果的にここまでで最大の決定機はスペインが掴んだ5分のセットプレー。
オランダがうまくスペインを封じ込めた格好で、ファイナル最初の45分間は経過した。

後半もまず立ち上がりはスペインがラッシュ。
48分、チャビのCK、プジョールのヘディング、カプデビラは空振り。
49分、シャビ・アロンソはイニエスタとのワンツーでエリア内へ入ると
ファン・ボメルともつれて倒れるも、ホイッスルは鳴らず。
52分はオランダ、珍しく20秒以上近いキープから、
最後はロッベンがやはり右サイドから狙ったミドルはカシージャスがキャッチ。
それでも、このシーンもそうだが徐々にオランダも
ボールを保持しながら左右の幅を使うようなシーンが出てきている。
キーマンはやはりロッベン。
前半からそうだったが、スペインもここは当然相手のキーだと、
彼が持った時には必ず2人以上で寄せるような形を採っていたにも関わらず、
ファウル以外で止めるのはなかなか難しく、手を焼いていた。
3戦目からの登場だったが、もう本調子と言っていいだろう。
これで本調子じゃなかったらどんだけ凄いんだ。
55分のスペイン、セルヒオ・ラモスが倒される。
倒したファン・ブロンクホルストにはチーム4枚目のイエローカード。
右27mのFKはチャビ、ボールは枠の右に外れる。
セットプレーは取れているが、スペインも流れの中からはいいシーンが生まれない。
57分、ビジャへのファウルでハイティンハにもイエローカード。
スペインはボールをタッチに出し、ファン・ボメルはお返しとして右足アウトで
スペイン陣内深くのスローインになるようなボールを蹴り出す。
場内からはブーイング。スペインの控え選手もベンチ前へ出てくる。
デル・ボスケも嫌味たっぷりに拍手。チャビも元チームメイトの行為に激しい口調。
ルール上は問題ないが、サッカーとして見ればいただけない。
ファン・ボメルは涼しい顔。
60分、先に動いたのはデル・ボスケ。ペドロに替えてヘスス・ナバスを投入。
よりファン・ブロンクホルストのサイドを徹底して攻略する構えか。
しかし、62分にここまでで最大の決定機を掴んだのはオランダ。
カイトとの接触で一旦ピッチを離れたピケが戻った直後、
スペインが一瞬フワフワしたラインコントロールになる。
中盤で高く浮いたボールがこぼれ、拾ったスナイデルはすぐさまスルーパス、
ピケは背後に気付かず、カプデビラはラインコントロールし切れない。
2人の間から抜け出したのはやはりロッベン。完全にGKと1対1。
ギリギリまで動かないカシージャス。ロッベンもタメる。
カシージャスが重心を傾けると、ロッベンは逆にシュート。
直後、頭を抱えるロッベン。ガッツポーズでカシージャスへ駆け寄るプジョール。
体はシュートと逆方向に流れながら、右足だけが反応してボールを弾き出すカシージャス。
これを見たら、他のGKに軽々しく“守護神”なんてフレーズは使えないだろう。
まさにゴールへ立ちはだかった“神”。オランダが掴んだ先制機は泡と消える。
これで勢いを得たスペインが、ここからはオランダを一方的に攻め立てる。
69分、チャビがイニエスタとのワンツーから右へ展開、
ヘスス・ナバスは対面のファン・ブロンクホルストを抜き切らずに高速クロス、
ハイティンハのクリアは小さく、ビジャの目の前へボールはこぼれたが、
ハイティンハが倒れながらシュートブロック。
そのCK、チャビのキックはカイトがクリア、拾ったシャビ・アロンソのクサビから、
カプデビラの枠内シュートはステケレンブルフがキャッチ。
この時間帯、特に“槍”としてチームへ推進力を与えたのはヘスス・ナバス。
オシムさんにはエゴイストだと評されていたようだが、
古くはチキやミチェル、そしてムニティスやデ・ペドロ、ホアキン、ビセンテなど
常に重宝されてきたスペイン代表の純粋なサイドアタッカーの系譜を
今回の代表ではただ1人継承している、この24歳のアグレッシブな仕掛けに、
堅い堅いオランダ守備陣も苦労していたのは間違いない。
ファン・マルヴァイクも71分に動く。
守備に忙殺されていたカイトに替えて、エリアを投入。
ヘスス・ナバスに蹂躙されていた左サイドに、抑止も兼ねてか切り札を送り込む。
74分、イニエスタがハイティンハに倒されて獲得したFK、
中央左、ゴールまで26m、ビジャのキックはゴール右へ外れる。
76分、ヘスス・ナバスはシャビ・アロンソとのワンツーで右サイドを抜け出し、
ファーサイドまで届いたクロス、ビジャのボレーはヒットせず。
1分後、チャビは左に大きく開いたビジャへ展開、
受けたチャビはワンタッチでビジャへ、ビジャはチャビへリターン、
チャビはトラップで中へ入り、自ら空けたスペースにラストパス、
ビジャのシュートはファン・デル・ヴィールがブロックしたものの、
2人だけで4本のパスを繋いでのフィニッシュ。当たり前だがレベルは高い。
直後のCK、チャビのキックにまったくのフリーでセルヒオ・ラモスが
ヘディングで合わせるも、ボールはクロスバーを越える。
スペインからすればあまりにも痛い逸機。スコアを動かせない。
81分、右サイドからシャビ・アロンソのパスを
イニエスタは超人的なファーストタッチでハイティンハを置き去りにして、エリアへ侵入。
ここをスライディングで止めたのはスナイデル。
イニエスタは倒れたが、明らかにボールへ行っている。
イニエスタをスナイデルが抱き起こし、2人は笑顔。フェアな攻防だ。
そして83分、耐えていたオランダにこの日2回目の決定機が訪れる。
デ・ヨンクのクリアをファン・ペルシーが頭ですらすと、
ピケとプジョールを後方から爆発的なスピードでまくったロッベンが追い抜く。
前に入られたプジョールは退場覚悟ですがりつくが、
振り払ったロッベンは右にドリブル、
ところがこれも完全に読み切ったカシージャスが飛び出してキャッチ。
一瞬で押し寄せた恐怖を、またも“守護神”が拭い去る。
90分で決着付かず。
ゲームは前回大会のファイナル同様、延長戦へ突入した。

ここから輝いたのは、86分にシャビ・アロンソとの交替で
華麗な中盤にさらなる彩りを加えるべく送り込まれたセスク。
正確な技術は言うまでもなく、十分なエネルギーも搭載している。
92分、中央からの崩し、セスク、イニエスタと繋いで
セスクが接触で転倒、イニエスタも接触で転倒、エリア内でチャビも転倒。
ハワード・ウェブの笛は鳴らず。
チャビのキックは、背後から寄せたハイティンハの左足を捉えていたが、
PKは取ってもらえない。ここでその笛は吹けないか。
95分、オランダのパスを中盤でブスケッツが引っ掛けて縦へ、
イニエスタのスルーパスがセスクに届く。GKと1対1。
シュートはステケレンブルフが左足でブロック。
スペインも決定的なチャンスを迎えたが、ここでもゴールは生まれない。
96分はオランダ、スナイデルのCKに飛び出したカシージャスとセスクが接触、
フリーのマタイセンが頭に当てたが、枠には飛ばせず。
99分のスペイン、今度はセスクのスルーパスからイニエスタが抜け出すも、
判断が一瞬遅れるとファン・ブロンクホルストが体を寄せてピンチを摘み取る。
ここでファン・マルヴァイクは2枚目のカードを切る。
デ・ヨンクを下げて、ファン・デル・ファールトを投入。120分で試合を決めに来たか。
101分はスペインにビッグチャンス、
カシージャスのスローイングはセンターサークルのセスクまで届く。
ビジャが右へ流し、受けたヘスス・ナバスは強引にシュートを狙うと、
対面のファン・ブロンクホルストに当たり、
ステケレンブルフも逆を突かれるが、ボールはわずかに枠の左へ外れる。
104分には中央からセスクがスルスルとドリブルで持ち上がり、
3人に囲まれながら放ったミドルはゴール右へ。
105分、ブラーフハイトとの交替でファン・ブロンクホルストがベンチへ下がる。
南アフリカの地で偉大な選手のキャリアが、その幕を閉じた。
スペイン圧倒もゴールは記録されず、勝負は最後の15分間へ。

デル・ボスケもここで最後のカードを切った。
満を持して登場したのはトーレス。替わるのはビジャ。
今大会5ゴールの得点王から、ノーゴールのエースへ。
ここに来てデル・ボスケが勝負師の顔を覗かせる。
トーレスはファーストタッチもボールが足に着かない。
この状態で何か違いを生み出せるのだろうか。
109分、セスクのクサビをイニエスタがダイレクトで落とすと、
チャビもダイレクトでラストパス、抜け出しかけたイニエスタをハイティンハが倒す。
オランダに出された7枚目、両チーム通じて10枚目のイエローカードは
初めて同じ選手へ2度目の提示。
ハイティンハ退場。残り11分、スペインがここで数的優位を得る。
チャビのFK、21mの距離もボールはクロスバーの上へ。
どうもこのボールとの相性は悪いままだ。
オランダは空いたCBにファン・ボメルが下がった
115分、エリアがドリブルから奪ったFK、
ここまで5ゴールのスナイデルは30m強の距離を直接狙うと、
カベのセスクに当たってゴールの左側へ逸れる。
明らかなコーナーキックだったが、ハワード・ウェブはゴールキックを指示した。
そしてサッカー・シティが鳴動する。
スペインはエリアのドリブルをセスクとセルヒオ・ラモスでストップ、
プジョールがヘスス・ナバスへ付けると、ドリブル開始。
10m、20m、30m、グイグイと突き進み、中へ入るとブラーフハイトがカット、
拾ったイニエスタはノールックのヒールパス、
セスクのパスはロッベンに当たるも、拾ったヘスス・ナバスは左へパス、
受けたトーレスは精度の低いクロスを送るが、
ファン・デル・ファールトは左足に当てるのが精一杯、
こぼれたボールをセスクが拾って、素早く右に開いたイニエスタへラストパス、
浮いたトラップにも構わず、右足をボレーで振り抜くと、
ボールはステケレンブルフの手を弾いて、ゴールネットへ到達した。
その時間、115分55秒。
ベンチからも全員が疾走。広がる歓喜の輪。
カシージャスはゴール前で泣いている。
ユニフォームを脱いだイニエスタのアンダーシャツには
「DANI JARQUE SIEMPRE CON NOSOTROS」の文字。
スペインに、そして亡き友人に捧げた魂の一撃。
これがアンドレス・イニエスタ。スペイン、土壇場で1点のリードを奪う。
着実に1秒1秒と時間を殺していくスペイン。
焦るオランダはパワープレーも精度が上がらない。
セルヒオ・ラモスが、プジョールが、カプデビラが跳ね返す。
トーレスが倒れた。再び負傷か。ピッチの外へ運び出される。ここで人数は9対9に。
ステケレンブルフのキック、2本のヘディングが繋がるも、
ボールはスペインのラインを割ってゴールキックへ。
122分49秒、ヨハネスブルグの闇夜に今大会最後となるホイッスルの音が溶けた。
ピッチに映し出される勝者と敗者の残酷なコントラスト。
ワールドカップにその名を刻む8番目の王者はスペインに!

15試合目で初めて土が付いたオランダ。
“美しく散る”ことを美学とし、
いつの時代でも“いいサッカー”を貫いて来たオレンジ軍団が、
勝利を何よりも希求する指揮官に率いられ、
内包していたモロさを取り去ることで、強いチームを築き上げた。
その挑戦はあと一歩で過去と同じ結果を強いられることとなったが、
やはりオランダは今回も“美しく”散ったと言っていいだろう。

1934年に初めてワールドカップへ参加してから76年。
過去12回の出場中、ベスト8の壁を突破したのは1回のみ。
勝負弱さに定評のあったスペインを、
バルサの成功が、そしてアラゴネスに率いられたEUROの成功が劇的に変えた。
その勝者のメンタリティは、初戦の敗戦から立ち直り、
決勝トーナメントの4試合すべてで1-0の勝利を挙げてきたことによって
十分に証明されただろう。
“一番うまいチーム”から“一番強いチーム”へ。
南アフリカでワールドカップの歴史に新たな伝説が書き加えられた。

オランダ 0×1 スペイン

【得点者】
スペイン:イニエスタ②(116分)
【警告/退場】
オランダ:ファン・ペルシー①(15分)、ファン・ボメル①(22分)、デ・ヨンク①(28分)
      ファン・ボロンクホルスト①(54分)、ハイティンハ①(57分)②(109分)→退場
      ロッベン①(84分)、ファン・デル・ヴィール①(111分)、マタイセン①(117分)
スペイン:プジョール①(16分)、セルヒオ・ラモス①(23分)、カプデビラ①(67分)
      イニエスタ①(118分)、チャビ①(120+1分)
【交替】
オランダ:カイト→エリア(71分)
      デ・ヨンク→ファン・デル・ファールト(99分)
      ファン・ブロンクホルスト→ブラーフハイト(105分)
スペイン:ペドロ→ヘスス・ナバス(60分)
      シャビ・アロンソ→セスク(87分)
      ビジャ→トーレス(106分)
【AD的Man of the Match】
アンドレス・イニエスタ(スペイン)

写真は、関係ないシリーズから
なんか龍馬が降りてきそうな「高知・桂浜」
64試合終わりました。
皆さん、ありがとうございました。
126katsurahama.jpg
AD土屋

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