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サッカー&フットサル コラム 2025年12月19日

華麗さと着実さを兼ね備えた若きクリムゾンレッドが誇る左の翼。ヴィッセル神戸U-18・瀬口大翔が見据えるプレミアリーグの頂 【NEXT TEENS FILE.】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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ヴィッセル神戸U-18・瀬口大翔

U-18を率いるキャプテン。世界大会で得たかけがえのない経験。そして、来季からのトップチーム昇格。周囲から向けられる視線が、以前とは変わってきたことも実感している。もちろんプレッシャーはあるけれど、背負えるものは全部背負って、必ず頂にたどり着く。

「周りからの見られ方も変わって、自分のプレーに期待されているのは感じているので、その期待通りのプレーができるかどうかはわからないですけど、自分は自分のプレーを続けて、チームを勝たせることはファイナルでも意識してやっていきたいと思います」

ヴィッセル神戸U-18をその真摯な姿勢で牽引してきた、しなやかなキャプテン。瀬口大翔はこのアカデミーで戦う最後の1試合にすべてを懸けて、チーム史上初となるプレミアリーグの日本一を引き寄せる決意を固めている。

「1年前からこの優勝を目標にやってきて、それが本当に叶うとは思っていなかったので、ホンマにこれ以上嬉しいことはないなと思います」。高円宮杯プレミアリーグWEST第21節。2位のサガン鳥栖U-18との激闘を制した試合後。瀬口はなかなか涙が止まらなかった。

とにかくシビアなゲームだった。勝てば神戸U-18が優勝、負ければ鳥栖U-18が首位に立つという、まさに大一番。いぶきの森球技場にはいつも以上に多くの観衆が集う中、試合はアウェイの鳥栖U-18が、既にJ2でもゴールを挙げている新川志音のスーパーミドルで先制点を奪ってみせる。

神戸U-18は攻め続けるものの、濱崎健斗のシュートはクロスバーに阻まれ、渡辺隼斗の決定機は相手GKのファインセーブに阻まれる。だが、0-1のままで突入したアディショナルタイムは異例の10分。この残された900秒で、奇跡を演出したのはやはり強い想いを携えていたキャプテンだった。

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90+5分。左サイドでボールを持った瀬口は、2人のマーカーの間をすり抜け、ダブルタッチでもう1人を剥がすと、さらに縦に運んで中央へ。そのこぼれ球を濱崎が蹴り込んだシュートが、ゴールネットを揺らす。驚異の4人抜きが導いた同点弾。スコアは振り出しに引き戻される。

90+11分。中央で前を向いた川端彪英が左サイドへ流したパスを、瀬口はダイレクトで丁寧なラストパス。再び濱崎が冷静なトラップから、ボールをゴールへと流し込む。直後に鳴らされたタイムアップのホイッスル。「みんなが繋いでくれたチャンスでしたし、自分は自分のプレーをしただけで、それが最後に健斗に繋がって入っただけなので、チーム全員のゴールだと思います」と胸を張ったキャプテンのアシストで、神戸U-18は超劇的にリーグ制覇を成し遂げる。

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「優勝が懸かった試合で、この試合ができるのは凄くチームの色が出たなと思いますし、勝因は自分たちの気持ちの強さと周りの方が作ってくれた環境だと思います。プレミアは3年連続2位で、その悔しさは安部さん(安部雄大監督)が一番思っていると思うんですけど、自分の中でもそれが凄く心残りでしたし、僕らは中3から“黄金世代”と言われてきたプレッシャーもある中で、プレミア優勝が叶ったのが嬉しいです」

 

試合が終わった瞬間から、涙があふれてくる。それはようやくタイトルを手繰り寄せた嬉しさと、さまざまなプレッシャーから解き放たれた安堵の入り混じった感情だったに違いない。瀬口はファイナル進出のボードを力強く頭上に掲げると、チームメイトから胴上げされる。

「『ああ、高いな』と思いましたし(笑)、凄く嬉しい気持ちでいっぱいでした。人生でやられたこともないので、メッチャ嬉しかったです」。高いところから眺めた優勝の景色は、本当に最高だった。

11月にはU-17日本代表の一員として、FIFA U-17ワールドカップに参戦。主力として全6試合に出場し、モロッコ戦とポルトガル戦ではゴールも記録するなど、世界レベルの相手を向こうに回し、十分なインパクトを残すことに成功する。

「守備の強度とか切り替えの部分は凄く自分の中でも成長したかなと思いますし、自分の『やってやる』という気持ちが強く出たことでゴールが獲れたのかなと思います」。今まで味わったことのないようなステージでのプレーを経て、さらに視座が高いところへと向けられたことは、あえて言うまでもないだろう。

既に来季からのトップチーム昇格が発表されている瀬口にとっても、12月21日に埼玉スタジアム2002で開催されるプレミアリーグファイナルは、このアカデミーの仲間と戦うことのできる正真正銘のラストゲーム。キャプテンが見据える結果は、明確過ぎるぐらい明確だ。

「ファイナルでは自分のプレーを出したいですね。ボールを落ち着かせるところとか、仲間との連携とか、スルーパスとか、得点に絡むチャンスメイクの部分を出せたらなと思いますし、そういうところがファイナルでどう出るかは楽しみにしてほしいと思います」

いぶきの森で味わった歓喜を、もう一度埼スタの表彰台で味わってやる。チームを華麗で着実なプレーで引っ張ってきた、若きクリムゾンレッド不動のキャプテン。瀬口大翔は優勝カップを掲げる自分の姿をはっきりとイメージしながら、ファイナルのピッチへ堂々と立つ。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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