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サッカー&フットサル コラム 2025年11月26日

すべては成長するためのエネルギー。大貫琉偉がU-17ワールドカップメンバー落選で手にした“反骨心”の価値 高円宮杯プレミアリーグEAST鹿島アントラーズユース×川崎フロンターレU-18マッチレビュー

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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鹿島アントラーズユースの実力派ボランチ・大貫琉偉

目前に迫ったプレミアリーグEAST優勝を手繰り寄せるためにも、とにかく重要だったホームゲーム。メルカリスタジアムで開催された大一番で、その男は1ゴール1アシストを記録して、チームの勝利に大きく貢献してみせる。

「やっぱりワールドカップに行けなかったということに凄く悔しい想いがあって、ここで自分が見返してやるというか、『自分を連れて行った方が良かったんじゃないか』と思わせたいという想いがありましたし、スタジアムでできることもあって、凄く気持ちも高ぶっていて、絶対に点を獲りたいと思っていたので、ここで自分が点を獲れて、アシストもできて、気持ちの良い試合でした」

鹿島アントラーズユースをしなやかに支える不動のボランチ。大貫琉偉にとってこの日の一戦は、自身の実力を証明するうえで、ただの1試合以上の重みを持つ、極めて意味のある90分間だったのだ。

10月17日。FIFA U-17ワールドカップに臨むU-17日本代表メンバーが発表される。鹿島アントラーズユースからは吉田湊海、平島大悟、元砂晏翔仁ウデンバと3人が選出された一方で、9月の国内合宿にも招集されていた大貫の名前は、そのリストに書き込まれていなかった。

「『あ、行けなかったんだ……』って。それがどういう感覚なのかは自分でもわからなくて、悔しいという気持ちもありましたけど、発表があった週にプレミアのレッズ戦もあったので、『ここで気持ちが落ちたら自分もダメだな』と思って、うまく切り換えようと考えていたんですけど、結構ショックはあったと思います」

「代表に入り始めたのは最近でしたけど、『自分もワールドカップに行ってやる』という気持ちがすごく強かった中で、メンバーから外れてしまったので、そこはキツかったというか、『自分だけ行けないのか……』という感覚が強かったですね」

鹿島勢も揃って活躍を披露し、日本がベスト8まで勝ち上がったU-17ワールドカップ。大貫も葛藤はありながら、試合自体の映像はチェックしていたという。

「見たくない気持ちは強かったですけど、やっぱり鹿島の3人には頑張ってほしい気持ちもありましたし、一応試合は見ました。ボランチの(和田)武士や(川本)大善、(野口)蓮斗は自分が持っていないものを持っていますし、自分の方が持っているものもある中で、『オレだったらな』という気持ちもあれば、『コイツだったら選ばれるよな』という気持ちもあって、そこに関しては『凄いな』というリスペクトもありながら、やっぱり悔しい想いはありました」

11月22日。代表メンバー落選後は初となるプレミアのリーグ戦。川崎フロンターレU-18との試合には、U-17日本代表組とキャプテンの大川佑梧が欠場することになったが、もちろんホームで負ける選択肢なんて存在しない。背番号6は強い気持ちを携えて、ピッチへと飛び出していく。

18分。その得点感覚が解き放たれる。中川天蒼、三好凌月と回ったボールを受け取ると、大貫はペナルティエリア外から思い切り良く左足一閃。軌道は右スミのゴールネットへと転がり込む。

 

「ああいうシーンでは結局パスを出してしまうことが多かったんですけど、今日は結構アップからいいイメージはできていましたし、タイミングとテンポをずらしたらちょっとシュートコースが空いたので、『打てるな』と思って股を狙ったら、コロコロではあったんですけど入りましたね。そういうところは自分が成長したところかなと思います」。リーグ戦では第2節以来となる、今シーズン2点目。大事な試合で、はっきりとした成果を残す。

高円宮杯プレミアリーグ特集サイト

前半のうちに正木裕翔のゴールで2点を先行した鹿島ユースは、後半に入って62分と70分に連続失点を喫し、追い付かれてしまう。だが、この状況を打開したのも、やはり6番の右足だった。

74分。左サイドで獲得したCK。キッカーの大貫が丁寧に蹴り込んだボールは、GKの前に立っていた佐藤湧斗の頭へドンピシャで届き、ゴールネットが揺れる。

「いつもスタメンで出ているメンバーがいない中で、みんなちょっと不安はあったと思うんですけど、点を獲ったのも湧斗と正木で、後ろも(朝比奈)叶羽中心に攻撃力の高い相手を最後はしっかり抑えて、勝ちに持っていけたというのは、3年生の力が凄く響いていましたし、力強かったなと思います」

試合はそのまま3-2で終了。翌日に2位の青森山田高校、翌々日に3位のFC東京U-18がともに敗れたため、鹿島ユースのEAST制覇が決定する。実質的に優勝を引き寄せることになった川崎U-18戦において、1ゴール1アシストという明確な結果で勝利に貢献した大貫は、改めて自身が持つ価値を鮮やかに示してみせた。

残された3試合のリーグ戦を経てから迎える、WEST王者と対峙するプレミアリーグファイナルには、クラブユース選手権、Jユースカップとの『三冠』が懸かってくるが、既に『二冠』を主力として経験した大貫は、冷静に、力強く、最後のタイトルに向けての意気込みを口にする。

「Jユースカップも『絶対に優勝してやる』という気持ちを強く持って取り組んでいた中で、そこでも結果で示せれば、『アイツを連れていけば良かったな』と廣山さん(廣山望・U-17日本代表監督)も思ってくれるかもしれないと考えていましたし、実際に自分は優勝まで連れていける選手だということを示せたので、今の自分には“反骨心”という言葉が一番合っていると思います」

「今日はゴールを決められたんですけど、自分の一番良いところは、走ってチームを助けられるところなので、そこだけは絶対に忘れたくないですし、アントラーズとして負けていい試合は1つもないと思うので、全部勝つという意味でこのまま突っ走って、絶対ファイナルでも勝って、年内三冠を獲りたいです」

世界へと続いていく扉は、これからの努力次第でいくらでも開かれている。鹿島ユースのボランチを1年時から任されてきた、自分の才能を磨けるコントロールタワー。大貫琉偉はこの秋に手にした“反骨心”を胸に、誰もがその実力を認めざるを得ないステージまで、一歩ずつ、着実に、必ず駆け上がる。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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