『197センチ、90キロ』の摩天楼が纏い始めた守護神のオーラ【U-20日本代表・ピサノアレックス幸冬堀尾（名古屋グランパス）】

名古屋グランパスU-18時代のピサノアレックス幸冬堀尾

「自分は身長が高いので、ハイボールやクロスに対しては全部守るぐらいの気持ちでやっています」。まだ“190センチ”だったころから、そんな頼もしい言葉を発していたのは、『FIFA U-20ワールドカップチリ2025』に臨むU-20日本代表の守護神候補、ピサノアレックス幸冬堀尾だ。

同じ愛知に本拠を置くFC.フェルボール愛知でプレーしていた中学2年生の時に、練習参加したことで縁ができ、高校進学時には名古屋グランパスU-18へ。ただ、まだ『186センチ、68キロ』だった1年時は、上級生にも優秀なゴールキーパーが揃っていたため、なかなかプレミアリーグでの出場機会を得られない。

『190センチ、74キロ』になった2年時も、基本的な立ち位置はセカンドキーパー。プレミアにも2試合に出場したが、それぞれ3失点と4失点を喫し、どちらのゲームもチームは敗戦。U-18に加入してからの2年間は、厳しい時間を過ごすことになる。

それでも、元来のポジティブな性格はプラスに作用する。クラブのレジェンド・楢崎正剛GKコーチ(当時)と重ねた日常の練習の中でも、できないことができるようになった時には、大きな喜びを感じていたという。「もともと自分はキックが苦手だったんですけど、1年と2年の時に結構蹴り込みましたし、自分がいいパスを通せた時には、『ああ、サッカー楽しいな』と思ったんですよね」

U-18で最高学年になった時のサイズは『194センチ、81キロ』。代表活動での欠場以外では、ほとんどのリーグ戦にスタメンで登場し、高いパフォーマンスを継続。夏過ぎには「明るく振る舞うことで自分たちの流れも作りやすくなると思うので、そこが今一番伸びてきているのかなと思っています」とメンタル面での成長も口にしていたことも印象深い。

プロ2年目。2025年シーズンの飛躍は、あえて詳しく紹介するまでもないだろう。トップチームで定位置をもぎ取ると、7月にはEAFF E-1選手権でA代表デビューも経験。目まぐるしく変化する環境の中で、確かな自信とオーラを纏っていく様子は、ゴールマウスに立つ姿からも窺えた。

2年前のU-17ワールドカップは、メンバー入りこそしたものの、出番は最後まで訪れず、今年2月のAFC U20アジアカップには招集もされなかった。そこからの急成長で掴んだ、世界と対峙する絶好のチャンス。目の前にある晴れ舞台を踏みしめる覚悟なんて、もうとっくに整っている。

『197センチ、90キロ』の摩天楼。ピサノアレックス幸冬堀尾は何が何でも正守護神の座を手繰り寄せ、さらなる高みへと駆け上がる。

文：土屋雅史