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サッカー フットサル コラム 2025年7月14日

アカデミーの大先輩・槙野智章に憧れる人間性抜群の闘将。サンフレッチェ広島F.Cユース・林詢大がとにかく声を出し続ける意味 【NEXT TEENS FILE.】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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サンフレッチェ広島F.Cユース・林詢大

ピッチ上で放つ圧倒的なエネルギーが、一際目を惹く。仲間を鼓舞し、周囲に指示を出し、自らの好プレーにも雄叫びを上げる。この紫のユニフォームに袖を通し、キャプテンマークを渡されたからには、とにかくオレがチームを100パーセントの熱量で引っ張ってやる。

「サンフレッチェユースのキャプテンというのは、偉大な先輩たちが務めてきていて、日本の中でトップレベルの人ができるポストなので、その立ち位置の意味はずっとサンフレにいるからこそわかりますし、その責任は今までキャプテンをやってきた先輩の誰よりも理解してやっているのかなと思います」

2025年を戦うサンフレッチェ広島F.Cユースのキャプテンを託された、人間性抜群の頼れる闘将。林詢大は自身に課せられた役割と全身全霊で向き合いながら、みんなで誓った結果を手繰り寄せるべく、今日もいつものグラウンドに轟くような、大きな声を出し続けている。

プレミアリーグWEST第5節。広島ユースは静岡学園高校と対峙するアウェイゲームに臨んでいた。前節でガンバ大阪ユースに0-3と完敗を喫し、必勝を期して挑む一戦。試合が始まると、3バックの中央でチームメイトに声を掛け続けている、白いユニフォームの4番に目が留まる。

「開幕から自分の納得がいくパフォーマンスができていない中で、今日は入りから集中していましたし、キャプテンとして声というところにはこだわって、自分がチームを引っ張って勝ちに貢献するということを意識していました」

標準以上のビルドアップ能力は言うに及ばず、その高精度キックを生かしてセットプレーのキッカーも務めている。センターバックがCKを蹴るのはかなり珍しい光景だが、得点の可能性をはっきりと漂わせるその軌道を見れば、それにも納得。プレーヤーとしても極めてハイレベルであることは間違いない。

試合は後半終盤にPKを献上し、1-1と追い付かれて勝利には届かなかったものの、林は「今シーズンの中で一番良いゲームになりましたし、自分のプレーはできたかなと思います」と一定の手応えを口に。結果的に以降の広島ユースは4勝2分け1敗とハイペースで勝点を積み上げ、3位まで浮上して前半戦を終了。2年ぶりのWEST制覇に向けて、チーム力は確実に高まっていると言っていいだろう。

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ジュニア時代からサンフレッチェアカデミーに在籍してきた林にとって、『声を出すこと』は少しずつ自分の中で武器として挙げられるまでにブラッシュアップしてきた、大事な特徴だ。

「自分では意識していなかったんですけど、小さいころから自然と“声出すキャラ”みたいになっていました(笑)。ただ、以前は単純に声を出していた感じだったんですけど、サンフレのアカデミーでずっと育ってきて、ジュニア、ジュニアユース、ユースと上がってくる中で、そこが武器だということはいろいろなスタッフの方から言ってもらえて、そこでやっと自分の武器というところに気付けたんです」

「声を武器にするというのは意識してもできないことですし、今では自分の本当の武器だと思っています。プレーで魅せる以上に一番お客さんの目にも付きますし、そこではピッチの中で誰にも負けないぐらい、『声を出すこと』は意識して、チームをまとめながら引っ張ってやっています」

目指すべきメルクマールは、自分でもそのキャラクターに親近感を持っている、アカデミーの大先輩だ。「槙野(智章)さんはユースの先輩として、何回も僕らの寮に来てくださっていて、あれだけ人間力が素晴らしくて、プレーでも声でもチームを引っ張って行ける選手はなかなかいないですし、ファイターという感じが本当に自分の中でもお手本になるので、人間性と声というところは参考にさせてもらっています」。

2年生だった昨シーズンは、前半戦こそ何度もベンチに入りながら出場機会は得られなかったが、後半戦初戦のヴィッセル神戸U-18戦でスタメンに抜擢されると、そこから全試合にフル出場を果たし、キャプテンの木吹翔太(現・いわきFC)の横で、実戦経験を積み重ねた。

その時間で確かな手応えを掴んでいたからこそ、今季のトップチームのキャンプに招集されなかったことは、林の中で強烈な発奮材料になったという。「去年からプレミアにも出させてもらって、今年はトップのキャンプを目指してやっていた中で、そのメンバーに選ばれなくて、本当に年始から悔しい想いをしました。それこそ自分と一緒に出ていた宗田(椛生)選手や小林(志紋)選手はキャンプに行けて、自分は行けないという状況に置かれた時に、今まで以上に筋トレをしたり、オフの時間にもサッカーを考える時間が長くなりましたし、取り組む姿勢は本当に変わったと思います」

7月末には夏の全国大会、クラブユース選手権の開幕が控えているが、キャプテンとして求めるのはやはりチームの結果。1年前の同大会に後悔が残っているという林の中で、自分の為すべきことはもうはっきりと見えている。

「自分はこのクラブユースに特別な想いがあって、去年はベスト8でグランパスと当たった試合で、自分の目の前のマークの選手に押し込まれて負けたので、苦い思い出のある大会ですけど、まず今年の一冠目として日本一を獲れる大会なので、去年の結果をまずは超えられるように全員で戦っていきたいと思いますし、自分が先頭に立ってチームを日本一に導きたいです」

元気溌剌。深謀遠慮。天衣無縫。千思万考。いくつもの魅力を携えた、若き紫熊を束ねる広島ユースのキャプテン。ピッチのどこにいても、すぐにその居場所がわかる林詢大の大声は、きっと真夏の全国の舞台でも明るく、ポジティブに、響き渡っているはずだ。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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