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神村学園高校・名和田我空
全国高等学校総合体育大会、通称“インターハイ”のサッカー競技が、福島県で7月27日に開幕する。各都道府県の予選を勝ち抜き、全国から集う精鋭は52校。真夏の日本一を巡って各校が激闘を繰り広げるこのインターハイから、J SPORTSでは準決勝と決勝を放送、配信することが決まっているが、今回は大会注目のタレントをフィーチャーしたいと思う。
今大会のスター候補を挙げるのであれば、この男の名前を語り落とすわけにはいかない。1年時から名門の神村学園高等部でレギュラーを勝ち獲り、昨年はFIFA U-17ワールドカップのメンバーに選出されると、スペインからゴールも記録。高校年代ナンバーワンMFの呼び声も高い名和田我空だ。ここまでのプレミアリーグでは全試合にスタメンフル出場を果たし、既に昨シーズンの得点数と同じ9ゴールを叩き出しており、その決定力にも磨きが掛かっている。また、アウェイゲームで各地に赴いた際の試合後には、子どもたちを含めた大勢のファンに囲まれて、サインや写真攻めに遭うシーンも多々。誰もが名和田の一挙手一投足に注目している様子が窺える。ただ、インターハイは2年続けて初戦敗退を強いられている鬼門の大会。同校にとって初の全国制覇を達成するためには、この14番の躍動が絶対に欠かすことのできない重要なファクターであることは間違いない。
日章学園高校・高岡伶颯
そんな名和田と並んで大きな注目を集めているのが、やはり昨年のFIFA U-17ワールドカップで世界の列強から、大会を通じて4ゴールを奪い、脚光を浴びることになった日章学園高校の高岡伶颯だ。多くの人が関心を寄せていた進路も、イングランド・プレミアリーグのサウサンプトンへの入団が内定。高校卒業後はヨーロッパの舞台へと挑戦することになる。最大の特徴は1試合を通じてピッチを走り回ることのできる無尽蔵のエネルギーと、果敢に縦へと仕掛けていく推進力。その馬力は高校生の中でも群を抜いている。「自分は注目されることをプレッシャーではなく、楽しさに変換できるというか、それだけの人が見てくれる中で活躍すれば、小さい子たちに夢も与えられると思うので、みんながワクワクするようなプレーをしたいですし、今年はぶち抜ける力を付けて、全部の大会で優勝したいと思います」。全国のステージで暴れ回るための準備は整っている。
大津高校・嶋本悠大
2人と同じ九州の高体連という観点で見ると、破壊的な攻撃力でプレミアリーグWESTを席巻し、前半戦を首位で折り返した大津高校の中でも、10番を背負う嶋本悠大のクオリティが際立っている。シーズン開幕前にはサイドハーフにもトライしていたが、プレミアでは主にボランチを任され、その攻撃力の高さをいかんなく発揮し、ここまでチーム2位の7得点をマーク。「個人としても去年より全然やれていますし、できることの範囲が大きくなったと思います」と自身の成長もしっかりと実感している。その人間性にも定評があり、常に口を衝くのは謙虚な言葉。「今はみんなに気持ちよくプレーさせてもらっているので、しっかり結果で応えたいですし、個人としてはまだ代表にも入ったことがないので、そこは自分の目標にしながら、チームとしても慢心せずに、しっかりと良いチームを作っていきたいなと思っています」。大津が目指す悲願の日本一は、嶋本のパフォーマンスがそのカギを握る。
昌平高校・大谷湊斗
日本代表でワールドカップも経験している玉田圭司監督が新指揮官に就任した昌平高校で、個性派揃いのテクニシャンたちを圧倒的なスキルで束ねているのが、今シーズンのキャプテンに指名された大谷湊斗だ。昨シーズンの終盤戦から新たにトライしているボランチでのプレーもすっかり板に付き、「自分もボールを触りたいタイプなので、後ろからボールを持てますし、パスもドリブルもできますし、楽しいですね」とポジティブな姿勢で、どんな試合でも中盤の中央で抜群の存在感を発揮。それでも「あのポジションならゴールも狙えると思いますし、クロスの入り方だったり、ボールを持っていない時の動き方にフォーカスして、得点を目指してやっていきたいです」と自身の出すべき結果にも貪欲に向き合っている。「1人で局面を変えられる選手になって、個人でも結果を残して、日本一になりたいです」。世代有数のコンダクターは、昌平の初タイトル獲得へと続く道をしなやかに突き進む。
市立船橋高校・岡部タリクカナイ颯斗
プレミアリーグEASTで無敗を続けていた流通経済大柏高校を、千葉県予選の決勝で粘り強く打ち破り、全国切符を手繰り寄せた市立船橋高校。そのチームのキャプテンマークを巻き、ディフェンスラインを統率している岡部タリクカナイ颯斗の著しい成長速度には、驚かざるを得ない。そもそもセンターバックへとコンバートされたのは昨シーズンの終盤戦から。当初は「まだフォワードをやりたいので、自主練の時間もシュート練をやっているんですけどね」と笑っていたが、新ポジションをやり抜くと腹を括ってからは、みるみる守備者としてのポテンシャルが解き放たれ、立ち姿にも風格が漂い始めている。「プレミアにはフロンターレの土屋(櫂大)とか、凄いセンターバックがいっぱいいますけど、その中でもセンターバックで一番いいプレーをして目立ちたいとはずっと思っています」。186センチの体躯を誇る、フォワードのメンタルを持ったセンターバック。岡部も今大会の有力な主役候補だ。
青森山田高校・小沼蒼珠
この男も知名度という意味では、高体連の中でも三指に入るレベルにあることは疑いようがない。昨年度のプレミアリーグと高校選手権の二冠を達成した青森山田高校の中で、そのスペシャルな飛距離を有するロングスローと、短く刈り込んだ坊主頭で一躍名を馳せた小沼蒼珠だ。今季はチームのキャプテンにも就任。「大きいものを背負っているからこそ、自分が一番やらないといけないですし、自分の成長にも絶対に繋がるものがあるので、今は誇りとプライドを持ってキャプテンマークを付けさせてもらっています」と確かな自覚を持って重責に取り組んでいる。昨年の大会では3回戦で明秀日立高校に不覚を取っただけに、「去年のインターハイは、プレミアファイナルや選手権に比べると隙があったことを感じているので、今まで以上に山田のやるべきことを積み上げて、まずは去年獲れなかったインターハイで一冠を獲りたいなと思っています」と3年ぶりとなる夏の日本一だけを見据えている。
真夏の高校サッカー界を彩るビッグトーナメント。福島を舞台に真剣勝負へ挑む高校生たちの今を、大いに楽しみたい。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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