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サッカー フットサル コラム 2024年7月16日

1試合の中で味わった今シーズン初ゴールとPK献上。神村学園高校・鈴木悠仁が探している“きっかけ”の種 高円宮杯プレミアリーグWEST 名古屋グランパスU-18×神村学園高校マッチレビュー

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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神村学園高校・鈴木悠仁

「かなり気合は入っていましたね。試合に絡めない時期が続いていて、自分でも『もっと成長しないといけないな』と思っていた中で、スタメン出ることができたので、『今日は自分のことより、チームの勝利に貢献できるように頑張ろう』と思って臨みました」

神村学園高校の鈴木悠仁は、自身の立ち位置の変化を十分すぎるほどに感じていた。リーグ戦にスタメンで出場するのは4試合ぶり。任されたのはもともと務めてきたセンターバックではなく、ドイスボランチの一角。でも、やるしかない。今年は高校最後の1年なのだ。このまま終わるわけには絶対に行かない。

名古屋グランパスU-18と対峙したアウェイゲームは、前半の飲水タイムまでに3失点を食らってしまう最悪の立ち上がり。「不用意に3失点してしまって、それでちょっと崩れてしまった感じがあったと思います」という鈴木も中盤でフィルターを掛け切れず、相手に自由を与えてしまう。最初の45分間は、0-3という想定外のスコアで推移する。

“きっかけ”を掴みたい試合だった。2年生だった昨シーズンの鈴木は、リーグ後半戦からセンターバックの定位置を確保。「夏を過ぎてから『自分が変わったな』というタイミングがあって、そこで選手権までどんどん成長していけたと思います」と自ら振り返るように、確かな成長を続けた実感があった。

今年の1月にはU-17日本高校選抜にも選出され、他チームのハイレベルな選手たちからも小さくない刺激を受けた。選抜の合宿中に話を聞くと、「センターバックなので責任感は必要ですし、『負けたら自分のせいだ』と思うぐらいのメンタリティがないとプロに行ってもやっていけないかなと思っているので、そういうメンタリティも身につけていきたいと思います」と意気込んでいた姿が印象に残っている。

迎えた今シーズンも開幕からスタメン出場を続けていたが、少し旗色が変わってきたのはインターハイ予選が終わってからだ。1か月の中断を挟み、再開したリーグ戦のスタメンリストからは、鈴木の名前が消えていく。

「去年から試合に出ていたという慢心だったり、自分の成長の少なさもそうですし、試合に出ている時にチームの失点に絡む場面が多かったので、そこを改善しないといけないなとは思っていました」。自分の中でその理由を消化し、信頼を取り戻すために日々のトレーニングと向き合ってきた。

そんな状況下で久々に巡ってきたスタメンのチャンス。こんなパフォーマンスで良いはずがない。後半開始早々の46分。果敢に前線まで飛び出した鈴木は、思い切りよく左足でフィニッシュ。ボールはクロスバーを叩いたものの、この一撃が神村学園に反撃の火を点ける。

54分にエースの名和田我空が1点を返し、以降も積極的にゴールを狙う姿勢を打ち出し続けると、57分に決定機がやってくる。「パスをもらって、良い形で前を向けて、サイドに振って、フリーでゴール前に入れました」という鈴木は、右から上げた佐々木悠汰のクロスに全速力でニアへと走り込み、ヘディングをゴールネットへねじ込んで見せる。

「良いボールが悠汰から来たので、あとは合わせるだけだという感じでした。良いゴールだったと思います」。“大きなワンツー”のような形で奪った得点は、自身にとっても今季のプレミア初ゴールであり、チームにとっても大きな追撃の1点。2-3。仲間の士気も明らかに上がっていく。

ただ、やはりサッカーは良いことばかりが待っているわけではない。追い上げムードに包まれていた76分。右サイドで相手の攻撃に対応していた鈴木が、エリア内へ侵入されたマーカーを後方からの接触で倒してしまうと、笛を吹いた主審はペナルティスポットを指し示す。

「最初は身体を入れたんですけど、もう1回入れ替わってしまって……。サイドの方でしたし、ゴールの近くには行っていなかったので、まだそこまで危なくはなかったんですけど、自分が慌ててしまって足が出てしまったので、あの場面では味方のサポートを待つべきでした」

PKを決められ、再び点差が2点に開く。ファイナルスコアは2-4。「途中までは悪くないプレーをしていましたし、ゴールも決めて『良い感じかな』と思ったんですけど、その気持ちが悪い方向に出たのかなと。最後の最後でああいう大きなミスをしてしまって、自分はまだまだだなと思いました」。今シーズン初ゴールと、PK献上と。最近の自身を取り巻く流れを象徴するような90分間。鈴木は改めてサッカーの難しさを痛感していた。

もちろん再び試合に出続けるために、自分の課題も見つめ直している。「少し守備の時に相手との距離が遠くなっていたことがあって、有村(圭一郎)先生からも『背が大きいんだから、相手に触れるぐらいの位置まで寄せて、守備をすればいいんじゃないか?』とアドバイスをもらったので、相手の近い位置まで素早く寄せるというトレーニングは考えてやってきました」

ただ、いろいろなことを考えすぎてもキリがない。目の前のトレーニングへ真摯に向き合い、与えられた出場機会で力を証明するほかに、スタメンを奪い返す術はないのだから。「ネガティブにならないように、『ここからもう一度ポジションを取り返そう』と前向きに考えて練習をやるような努力は、少しできてきたかなと思います」。ひたすらに努力を重ね、試合に出るためのレベルを追及していく。

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ここからは日本一を目指す夏のインターハイへと、チームもギアを上げていく。自分だけが置いていかれるわけにはいかない。「まずは個人として成長して、スタメンの地位を確立できるように頑張っていきたいですし、チームとしても今日は負けてしまったんですけど、切り替えて、インターハイに向けても、この負けをポジティブに持っていけるように頑張ります」

サッカーなんてうまく行かないことが大半だ。みんなが納得できない自分のプレーに、スムーズに構築できないチームメイトとの連携に、結果の出ないグループの現状に、頭を悩ませ、心を痛め、その上でまた前を向いて、次の日のトレーニングへ、次の週末の試合へ、次の一歩を踏み出していく。

思うようにいかないからこそ、サッカーは面白い。鈴木が直面している状況は、きっとどんな選手も通っていくものであり、そこからどう抜け出すかは、やっぱりいつも自分次第。何かを変える“きっかけ”を掴むための種は、いつだってピッチのどこかに必ず落ちている。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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