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静岡の緑VS新潟の緑!高体連屈指の技巧派集団対決!静岡学園高校×帝京長岡高校マッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグWEST第8節】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史静岡学園高校のディフェンスリーダー・矢澤怜士
苦しんできた“静岡の緑”が、確実に復調しつつある。プレミアリーグWESTではまさかの開幕5連敗。先の見えない状況が続いていた静岡学園高校は、第6節の米子北高校戦でようやく今季初勝利を手繰り寄せると、第7節のサガン鳥栖U-18戦も後半アディショナルタイムの失点で追い付かれたとはいえ、限りなく勝利に近いところまでこぎつけ、勝ち点1をアウェイから持ち帰った。
加えて準々決勝から登場したインターハイの静岡県予選でも、初戦で常葉橘高校を3-1で下すと、準決勝でも富士市立高校に3-0で快勝。迎えた決勝は藤枝東高校に先制を許しながらも、岩田琉唯と大木悠羽のゴールで見事な逆転勝利を収め、全国出場権を獲得。公式戦5戦無敗と好調をキープして、今回の試合に臨む。
6度目の挑戦となった昨年末のプレミアリーグプレーオフを勝ち抜き、悲願の昇格を果たした“新潟の緑”がリーグに新風を吹き込んでいる。開幕3試合こそ1勝2敗と黒星が先行していた帝京長岡高校は、第4節の鳥栖U-18戦に3-0で勝利すると、そこから怒涛の3連勝を記録。第7節では大津高校に1-6と大敗を喫したものの、ここまで4位と初めてのプレミアで健闘を続けてきた。
こちらもインターハイ新潟県予選を戦い抜いたばかり。3回戦では新潟江南高校に苦しめられながら、2-1で辛勝。以降は準々決勝で東京学館新潟高校を6-1、準決勝で日本文理高校を3-1で退け、開志学園JSC高等部と対峙した決勝は安野匠の2ゴールもあって、5-0という大勝で県制覇を成し遂げている。
静岡学園のゴールマウスを任されているのは、2年生守護神の有竹拓海だ。184センチという恵まれた体躯を誇りながら、自身でも「もともとビルドアップは得意」と語るように足元の技術も水準以上。さらにシュートストップに磨きを掛けるべく、昨季は神田奏真(川崎フロンターレ)と、今季は大木や山縣優翔と自主練を重ねることで、確かな自信を培ってきた。
ここ2年の静岡学園を最後尾から支えてきた中村圭佑(東京ヴェルディ)の存在は、もちろん意識していないはずがない。「圭佑くんは目標の選手ですし、去年は間近でプレーを見ることができて、凄く良い環境にいたんだなと思います。ただ、『去年の圭佑はこうだったぞ』と言われるんですけど、自分は自分の良いところを出していきたいです」。中村を上回るビルドアップ能力を武器に、有竹は自分が描くゴールキーパー像を極めていく。
この人が帰ってきたことが、静岡学園の守備陣にとって非常に大きかったことは、結果が証明している。186センチの大型センターバック、矢澤怜士のことだ。開幕戦の後半に負傷交代してから、5節まで戦線離脱していたが、復帰戦となった米子北戦で好パフォーマンスを発揮し、チームの今季初勝利にきっちり貢献。そこからチームは公式戦無敗を続けている。
こちらも目標にしているのは、2歳年上の“先輩”だという。「行徳くんみたいに点を獲れるディフェンダーになりたいです。そうすればチームを引っ張っていけると思いますし、行徳くんはしんどい時にメッチャ点を獲っていたので、あれ以上は獲りたいですね」。2022年度のキャプテンを務めていた行徳瑛(名古屋グランパス)が、プレミアで記録したのは7ゴール。それ以上を目指して攻守に奮闘する矢澤の躍動から、目が離せない。
今季の帝京長岡でキャプテンマークを巻くのは、センターバックに入っている山本圭晋だ。去年の春まではボランチが主戦場だったが、「自分は試合に出られるならどこのポジションでもいいという考え方」とポジティブにコンバートを受け入れると、プレミアプレーオフからレギュラーに定着。高校選手権でも好プレーを披露したことで、今年に入ってからはU-17日本高校選抜も経験してきた。
「プレミアは去年の3年生が残してくれた“ギフト”だと思っていて、毎週末が全国大会みたいな感じなので、週末のために平日のしんどいトレーニングでも苦労は買って出るというか、そこに自分から飛び込んでいきたいとは思っています」。先輩たちの想いも背負ってプレミアを戦うキャプテン。山本のリーダーシップがこのグループをしなやかに束ねている。
2年生だった昨季から守護神を担っているゴールキーパー、小林脩晃の存在も語り落とせない。FC東京U-15むさし時代には、準決勝と決勝のPK戦で活躍した夏の全国大会でMVPも獲得。昨年のインターハイ予選決勝でも、やはりPK戦で相手のキックをストップして勝利の主役をさらっており、“11メートルの1対1”には絶対の自信を持っている。
今年に懸ける想いを口にした言葉も頼もしい。「性格的には自分を犠牲にしてでも、周りやチームのことを優先したいタイプなので、今年は自分よりもチームのために、他の人のために頑張って、それが結果的に自分へ返ってくるような1年にしたいですし、自分がチームを引っ張るぐらいの気持ちでやって、チームを勝たせられるような選手になりたいと思っています」。常に最後方からチームメイトへ指示を送り続けている、帝京長岡の背番号1の“声”にも要注目だ。
とにかく前に突き進めるゴリゴリ系ストライカー、安野匠がプレミアのステージで暴れ回っている。7節までに叩き出した6ゴールという結果はもちろんだが、躊躇ないアグレッシブなプレーが周囲の選手の得点へ間接的に繋がることも。「オレが点を獲るためにチームメイトを動かして、というのは中学校のころからイメージしていました」という姿勢で、個性あふれるアタッカー陣を逞しく牽引している。
ボランチでもサイドハーフでもプレーでき、ここまでのプレミア全試合にスタメン出場している水川昌志とは、中学時代に所属していたシュートJrユースFCからのチームメイト。「昌志とはずっと一緒にやっていて、イメージの共有はできていますね。オレがワガママということはわかっているので、合わせてくれる感じです(笑)」。盟友の後押しも受けながら、チーム伝統の14番を背負う安野のパフォーマンスが、帝京長岡の勝敗に大きな影響を及ぼすことは間違いない。
なお、静岡学園の川口修監督と帝京長岡の谷口哲朗総監督は、1973年生まれの同級生。攻撃的なサッカーを志向する者同士として、お互いに意識していることを隠さない間柄だ。そんな2人が築き上げてきたチームがぶつかる、高体連屈指の技巧派集団対決。この90分間が面白くならないはずがない。
チーム伝統の14番を背負う帝京長岡高校・安野匠
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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