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あの場面でパラシオスがラインコントロールに加われなかったのは、一つにはパラシオスはアタッカーであり、守備の連係に慣れていないからだったし、もう一つの理由はアルアインの選手たちが相当に消耗しており、足が止まり、判断力も低下していたからだ。
しかし、アルアインのエルナン・クレスポ監督は交代カードを切らなかった。唯一の交代は90+2分だった。試合後、クレスポ監督は「交代の必要はないと判断した」と語ったが、ピッチ内の選手たちが疲労をためていたのは明らかだった。
交代できなかったのは、アルアインの選手層が薄かったからだろう。
それに対して、横浜FMは交代で出場した選手たちが結果を出した。決勝ゴールをアシストした宮市も、膝を使って決勝点に結びつけた渡辺皓もともに交代で入った選手だった。
渡辺皓太と共にピッチに送り出され、決勝ゴールをアシストした宮市亮
横浜FMは、5月6日に行われたJ1リーグ第12節の浦和レッズ戦で大幅なターンオーバーを行った。浦和戦の先発メンバーで、アルアイン戦でも先発したのはGKのポープだけだったのだ(アンデルソン・ロペスは浦和戦は出場停止)。
その結果、アルアイン戦では先発選手がフレッシュな状態でプレーできたし、交代出場した選手も浦和戦でプレーしたばかりだったので、自信を持ってプレーすることができた。
DFのエドゥアルドは故障で前半のうちに交代となってしまったが、代わりに入った渡邊泰基は浦和戦でフル出場しており、エドゥアルドと遜色ないプレーをしてみせた。
同点ゴールを決めた植中を筆頭に、横浜FMの若い選手たちのレベルはこの数か月でかなり上がっている。
ハリー・キューウェル監督が投入した選手たちはことごとく期待に応えた。つまり、選手層の厚さと言う意味でも、横浜FMはアルアインを確実に上回っている。
もし、横浜FMが追いつくことができずに0対1のまま第1戦を終えていたら、アルアインは第2戦でも得意のカウンター狙いの試合ができた。横浜FMが強引に攻撃を仕掛ければ、再びカウンターの餌食になってしまう可能性もあった。
だが、横浜FMがホームゲームで逆転に成功したため、アルアインは第2戦ではカウンター狙いに徹するわけにはいかなくなってしまった。アルアインはが出てきてくれれば、横浜FMにとっても得点は狙いやすくなるはずだ。
第1戦での逆転劇によって第2戦は明らかに横浜FM有利となったのである。第1戦で痛い目に遭った相手のスピードを生かしたカウンターへの備えさえしてしっかりすれば、横浜FMの戴冠が見えてくる。
5万人を超えるファン・サポーターが後押しした第1戦、2-1で勝利
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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