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狙え、開幕連勝!多摩川クラシコ 2024春 FC東京U-18×川崎フロンターレU-18マッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグEAST第2節】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史FC東京U-18の右サイドバックを務める金子俊輔
先週のオープニングマッチを白星で飾った両雄が、開幕連勝を目指して激突する『ユース版多摩川クラシコ2024春』。どちらのチームにもリーグの主役を張り得るタレントが揃うだけに、楽しみな一戦であることに疑いの余地はない。
クラブのレジェンド・佐藤由紀彦新監督の初陣となったFC東京U-18の開幕戦は、アウェイで前橋育英高校と対峙。ややボールを持たれる時間こそ長かったものの、安定した守備でゲームを落ち着かせると、49分に中野裕唯が先制点をゲット。終盤の90+4分には浅田琉偉が追加点をマークし、2-0で逞しく勝ち切っている。
左サイドバックに鈴木楓、右サイドハーフに尾谷ディヴァインチネドゥと、昨シーズンとは違ったポジションで起用された選手も持ち味を発揮。「始動から観察というところでは、ポジションも含めて選手の特性にかなり注目して見ていた」という佐藤監督の色が垣間見えるような90分間でもあった。
一方の川崎フロンターレU-18は、ホームに大宮アルディージャU18を迎えての開幕戦。14分にややアンラッキーな失点で先制を許したが、前半のうちに加治佐海が同点弾を叩き込めば、後半には香取武、恩田裕太郎、関徳晴がゴールを重ね、結果的に4-1で逆転勝利を収めている。
昨シーズンの反省を生かして、今季の川崎U-18がとりわけ意識しているのは『後半に足が止まらない』ことと『ひっくり返す力』。そういう意味では長橋康弘監督も「明らかに去年のこの時期と比べると、後半は足が動いていたかなと思います」と認めた通り、早くもバージョンアップを窺わせるような勝ち方を披露したと言っていいだろう。
お互いに連勝を狙う好カード。まずホームチームのFC東京U-18では、右サイドバックの金子俊輔に期待が懸かる。前橋育英戦でも右サイドを尾谷と永浦煌士との連携で鮮やかに抜け出すと、力強い突破から正確なクロスを送り込み、中野のゴールをアシスト。「縦への推進力、縦からのクロスは得意なところ」と自己分析するストロングを明確な結果に結び付けてみせた。
好きな選手に菊池流帆(ヴィッセル神戸)を挙げるだけあって、感情を表に出すようなスタイルも魅力的。今季の目標を尋ねられ、「優勝争いみたいなワクワクする戦いがしたいですし、自分のプレーをしっかり出して、人の心を揺さぶれるようにしたいです」と言い切った青赤の“右の槍”には、シーズンを通して注目していきたい。
もう1人のFC東京U-18のキーマンに指名したいのは、昨季からストライカーナンバーの9番を背負う山口太陽だ。プレシーズンはトップチームのキャンプにも参加。同じポジションのディエゴ・オリヴェイラや長友佑都から刺激を受けつつも、思ったようなパフォーマンスは見せられず、「もっと早くああいうところで対等にやっていけるように、結果を残していかなくてはいけないなと思いました」と自身の立ち位置を見つめるきっかけも掴み、U-18へ帰ってきた。
開幕戦はノーゴールに終わったものの、やはりチームが勝つためには、この男の得点が絶対不可欠。「チームで獲れるタイトルは全部獲って、その中で自分も多く点を獲って、どんどん結果を残していきたいです。プレミアでは20点以上獲りたいですし、もちろん得点王も獲りたいです」とアカデミーラストイヤーに意気込む山口から目が離せない。
2年ぶりのタイトル奪還に向け、好発進となった川崎U-18のキャプテンを務めるのが、センターバックの土屋櫂大だ。こちらも山口同様にトップチームのキャンプにフル帯同。「丸山(祐市)選手の経験値は言葉で言われなくても隣で感じる部分が凄くありました。常に声を出して周りを動かせる選手だったので、そういうリーダーシップも含めて、『凄い選手だな』ということは肌で実感しました」とベテランから小さくない学びを得たという。
世界を体感した昨年11月のU-17ワールドカップを経て、置くべき基準は今まで以上に上がっている。「フィジカル面やスピードと自分に自信のあった部分でも、ワールドカップでは消されていた部分もあったので、そこは改めて見つめ直しています」。筋トレによるサイズアップやスピードの強化にも真摯に取り組んでいる様子。この男が最終ラインで放つ圧倒的な存在感には、未来に期待したくなる大器の予感も漂う。
多士済々のアタッカー陣からは、万能系ストライカーの香取武をフィーチャーする。今季から託された背番号9の前任者は、昨シーズンのプレミアEASTで得点王に輝いた岡崎寅太郎(桐蔭横浜大)。ただ、「寅太郎選手の後ということで、プレッシャーはありますけど、9番がもらえたことを自信に変えて頑張っていきたいです」と本人は意気に感じ、ポジティブに捉えている。
開幕戦では冷静な逆転ゴールをマークし、大事な勝利にきっちり貢献。幸先の良いスタートを切っている。「二桁得点は自分の中で掲げていて、それ以上は行きたいですし、得点王は絶対に意識していきたいと思います」。川崎U-18の新ストライカーを任された香取がゴール前で発揮する鋭い嗅覚には、どのチームのディフェンダーも最大限の注意が必要だ。
最後に両監督にまつわる“因縁”をご紹介しておこう。FC東京U-18の佐藤監督と川崎U-18の長橋監督は、ともに静岡の名門・東海大一中出身。長橋監督が1歳上の先輩に当たり、同じグラウンドでボールを追い掛けた間柄だ。また、1995年からは2シーズンに渡って清水エスパルスでもチームメイトに。佐藤監督の記念すべきJリーグデビュー戦には、長橋監督も出場していた記録が残っている。
愛するサッカーを介して、出会ってから30年以上が経過している中学時代の先輩後輩が指導者となり、プレミアリーグの舞台で監督として向かい合うという、何とも不思議な因縁。この一戦では是非2人の指揮官のそんな関係性も頭に入れつつ、試合を楽しんでいただけたら幸いだ。
川崎フロンターレU-18・香取武は開幕戦で逆転ゴールを奪う!
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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