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サッカー フットサル コラム 2024年1月23日

リーグの権威を失墜させかねない誤審

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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ゴール後に歓喜するビニシウス(レアル・マドリー)

ゴール後に歓喜するビニシウス(レアル・マドリー)

もしレアル・マドリーがリーグ優勝すれば、決定的な夜としてして記憶されることになるだろう。

レアル・マドリー対アルメリアの99分、ベリンガムの落しに滑り込んだカルバハルが挙げた劇的な決勝ゴール。一時は2点差を付けられた試合を4-3で逆転し、バルセロナとの7差を維持した。首位は消化試合が1つ多いジローナだが、アンチェロッティのチームにとって本当に重要なのはシャビのチームとの勝ち点差である。

ホームで相手はまだ未勝利の最下位アルメリアとなれば「勝利は確実」と誰もが思う。が、30分足らずで0-2とされ、アンチェロッティは初めてハーフタイムに3人の交代を行った。敗れていたら4差、引き分けだったら5差だった。往々にして、こういう計算外に足をすくわれて優勝争いはわからなくなるのだ。

もっとも、忘れられない週末となったのは逆転勝利以上に、それが微妙なジャッジの結果だったからだ。

3度のVAR介入はいずれもレアル・マドリー有利な判定となった。うちアルメリアゴールを取り消すことになったファウルには議論の余地がなかったが、レアル・マドリーの2ゴールに結び付いた、アルメリアDFのハンドによるPKのジャッジと、ビニシウスのゴールがハンドでないとされたジャッジは微妙だった。

まずアルメリアDFのハンドについては、腕に当たっているのは間違いないが、その前にリュディガーが相手DFの両肩に手を掛けてジャンプしているのは不問にされた。

ラ・リーガでは最近VARでの審判間のやり取りがビデオと音声で公開されることになったのだが、ハンドの有無は議論されてもファウルまがいのジャンプについては議論自体がされていなかった。

「ハンドか否かは関係ない。その前にファウルがあった」というアルメリア側の猛アピールがバックグラウンドで録音されていた。主審の解釈次第のアクションだから一概に誤審だとは言えないが、ハンド同様の疑わしいジャンプが無視されたのは、個人的には納得がいかない。

一方、ビジシウスのゴールがハンドではなない=ボールが当たったのは肩であって腕ではない、という判断は誤審である。

主審の最終判断に使われた映像では肩に見えるが、実はもっとクリアに腕に当たっている映像が存在したからだ。不十分な映像で判断した主審にミスはないが、不十分な映像しか提供しなかったVARには明らかなミスがある。

このプレー、生中継で見た時から私にはハンドに見えた。というのも、ビニシウスが体をねじってボールを隅に押し込むのがわかったからだ。

ルールブックによると、体に沿って腕を下げた状態で脇の下のラインから水平に線を引いた上の部分が「肩」(=ハンドではない)、下の部分が「腕」(=ハンド)である。みなさんも実際にやってみるとわかるが、センタリングにぶつけて方向を変えてライナー性のシュートにするには、「肩」だけでは狭過ぎて物理的に不可能、「腕」の助けが必要なのだ(胸に当てれば可能だが胸には当たっていない)。

不十分な映像でジャッジする、というテクニカルで避けられたミスによる誤審が、タイトルの行方を決める、というのは後味が悪過ぎる。この国に根強い「陰謀論」に根拠を与え、ラ・リーガの権威を失墜させるものだった。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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