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サッカー フットサル コラム 2024年1月9日

ジローナの躍進が教える「相手を引き付けてからパスを出すこと」の重要性

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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ヤン・コウト

ドリブル突破を図るジローナのヤン・コウト

ジローナのスペクタクルなサッカーを見ていると、“指導者時代にもっと徹底して教えておけば良かったな”と思うことがある。

それが「相手を引き付けてからパスを出すこと」だ。

「フリーの仲間へパスを出す」ことを教えるのが最重要で最優先なのだが、その次に子供が知っておくべきことは「相手を引き付けてから……」である。

引き付けて出すのと引き付けないで出すのでは、「ボールを繋いで崩す」のと「ボールを繋ぐ」という差になって表れる。引き付けて出せば、引き付けられた選手(自分へのマーカー)が直ちに守備に対応できない。ダッシュが空振りし逆を突かれて姿勢が崩れるから。結果、自分へのマークは甘くなるし、パスの受け手へ寄せる動きも鈍る。

ボールを持つ→引き付ける→パスを出す→相手の体勢が崩れ、自分へのマークが甘くなる→動いてリターンをもらう。以上の一連の動きだけで、引き付けられた選手(=自分へのマーカー)は無効化され、リターンをもらった自分はフリーで、近くの味方との2対1の数的有利ができている。もちろん、以上は一瞬のことで、もたもたしていると相手は体勢を整えてまた数的同数に戻ってしまうのだが。

「崩す」というとドリブルとかトラップ&フェイントとかワンツーとか技術的なレベルの高いプレーを想像するが、スペースと時間に余裕ある自陣なら「引き付けて出す」だけで十分崩すことができる。

引き付けて出すことにはもう2つメリットがある。1つは相手にプレスを強制することで疲れさせること。2つ目は味方にパスコースを作る間を与えることだ。
自陣ゴール前からジローナが足下にボールを繋ぎながらするすると上がって来れるのは、ゆっくりプレーして相手にわざとプレスさせ、同時に周りもボールをもらいに行き、それをかわしてパスを出す、という連続をチーム全体でスムーズに行っているからだ。

彼らのボール出しにはキーマンがいない。誰が絡んでも同じコンビネーションが正確にできる。

これが例えばバルセロナと大違いの部分だ。

デ・ヨングのドリブルとかギュンドアンのトラップ&フェイントとか抜きではボールが出ないし、しばしばパスを緩慢に回しているだけで崩せず前進できない、という状態に陥る。

では、相手がウェイティングでプレスに出て来ない時はどうするか?

これも単純、自分でボールを持ち上がればいい。いつか必ずプレスに出て来るから、その瞬間に味方へパスを出せばいい。

面白いのはジローナはGKへのバックパスの仕方も違うことだ。

バックパスとは「究極の引き付けて出すパス」である。

彼らは普通に出さない。出す前に後ろを向いて少しドリブルする。そうすると相手は喰い付いてくるので、その瞬間に出す。相手がそのままGKへ詰めて行くことで、自分は完全にフリーになる。

この状況でGKのリターン、あるいは味方のクサビ等を経由してボールをもらえばボール出しは終了。敵陣に侵入してサイドへ展開してドリブル突破を狙わせたり、裏へスルーを入れることで決定的なゴールチャンスが生まれる。

ジローナが前半戦を終えても首位レアル・マドリーと同勝ち点で並んでいる。新年最初の試合ではアトレティコ・マドリーとのスペクタクルな撃ち合いを制し(4−3)、3強との直接対決を2勝1敗で終えた。

子供にも教えるべき基本を忠実にこなすことで巨大な戦力格差を克服できること、個人技の高い選手をそろえなくとも面白いサッカーをして勝てることを実証していることは、多くのクラブや指導者にとって励みになるだろう。

木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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