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優雅な守護神に訪れた試練の時間。FC東京U-18・小林将天はすべてを成長の糧に圧倒的存在へと駆け上がる 【NEXT TEENS FILE.】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史来季からのトップチーム昇格が内定しているFC東京U-18・小林将天
激しいポジション争いは今に始まったことではない。青赤に身を投じた時から覚悟は整っている。だからこそ、お互いに認め合う仲間たちと切磋琢磨することだけが、自身の成長を約束してくれると信じて、試合に出ても、試合に出られなくても、ひたすらに今の自分がやるべきことを、やり続けていく。
「中1からFC東京の下部組織に入らせてもらって、一番の目標はトップチーム昇格だとずっと言い続けてきたので、まずはそれが叶ったことが素直に嬉しいです。でも、ここがスタート地点なので、満足することなく、成長するためには日頃の練習を含めてU-18でもまだやれることは残っているので、ここで残された時間を絶対に無駄にしないようにしたいと思います」。
優雅な立ち姿も印象的な、トップチーム昇格を手繰り寄せた若きFC東京U-18の守護神。小林将天は与えられた環境の中で足元を見つめながら、アカデミーで過ごす最後の2か月へと胸を張って歩みを進めていく。
今年の夏。日本一を巡るクラブユース選手権で、FC東京U-18は躍進を遂げる。ファイナルではガンバ大阪ユースにPK戦で敗れたものの、堂々の準優勝。だが、プレミアリーグの前半戦11試合ですべてキャプテンマークを巻いてスタメン出場していた小林は、グループステージの1試合に登場したのみ。他の試合はベンチからチームメイトの躍動する姿を見つめていた。
「プレミアの前期は全然結果を出せなかったので、その中でGKが代わるのは当然のことだと思います。実際に後藤(亘)のプレーも良かったですし、その流れでチームも全国大会で上り調子だったので、その中でベンチメンバーとしてクラ選はやれることを全部やりましたし、何よりチームに勝ってほしかったので、やるべきことはやれたのかなと思っています」。
悔しくなかったはずがない。自分の代わりにゴールマウスに立っているのは1つ年下の後藤亘。複雑な感情が渦巻く中で、それでも優先すべきはチームの勝利だと自らに言い聞かせ、目の前のやるべきことをやり切った末に準優勝という結果をグループの一員として勝ち獲ったことは、新たな自信を小林にもたらした。
リーグ後半戦も出場機会は2試合のみ。しかも、そのうちの1試合では昌平高校相手に6失点を喫し、0‐6という衝撃的な完敗を突き付けられる。「もちろん試合に出たいですよ。でも、試合に出られないのは何かしらの理由があって、昌平の試合で大敗しているというのもその理由の1つだと思っているので、しっかり自分の立場を受け止めて、日々の練習で『いつでも行けるぞ』ということを示し続けるしかないのかなと思って、今は練習に取り組んでいます」。
先日の練習試合には、自ら志願して出場したという。「やっぱり実戦で結果を残さないと、Aチームで試合に出ることは難しいと思いますし、そこで結果を持ってくることによって、試合でスタメンになる確率が少しでも上がるかなと思ったので、自分から出たいということを伝えました」。自分の立ち位置がどうかなんて関係ない。やれることは全部やる。それは1人のサッカー選手として携えてきた、大切なプライドの現れだ。
最近になって嬉しい知らせが届いた。小林にとってはFC東京U-15むさし時代のチームメイトでもあり、年代別代表にも常に一緒に選ばれ続けてきた静岡学園高校のGK中村圭佑が、来季から東京ヴェルディでプレーすることが決まったのだ。
「ずっと圭佑とは仲良くしていますし、ライバル関係でもあるので、前回の代表で一緒になった時も『一緒にプロになれるな』みたいな話をしていたんですけど、これからは同じ東京のチームの選手なので、いろいろ話したりしてキーパー論を共有しながら、2人で切磋琢磨して上へと昇っていきたいですね」。
あるいは近い将来、FC東京と東京ヴェルディがJ1で“東京ダービー”を繰り広げる時に、この2人の親友がそれぞれのゴールを守っていないとは、誰にも言い切れない。小林にその話題を向けると、「その展開は熱いですし、なるべく早くお互いにそこを掴み取れるようにならないといけないなと思います」ときっぱり。そんな最高の瞬間を夢見て、来シーズンからはプロサッカー選手としての日常が幕を開ける。
シーズンも最終盤。アカデミーラストイヤーの最後の最後。周囲から見れば試練の時間が続いているが、それでも小林は穏やかな笑顔でこう言葉を紡ぐ。「トップチームに参加するまでにまだまだU-18でキーパーとしていろいろな技術の土台は付けていきたいですし、もっと試合に出て試合勘を掴みたいです。でも、試合に出ていないからと言って成長できないわけではないので、そこで自分が下を向かないように、ポジティブにキーパーを楽しんで、成長していきたいですね」。
189センチとサイズにも恵まれた、青赤の未来を担い得る大型ゴールキーパー。憧れてきたマヌエル・ノイアーのように、見る者すべてがその力を認める圧倒的存在へ。小林がポジティブに進む成長への道は、自分がその歩みを止めない限り、どこまでも先へ、先へと伸び続けている。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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