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サッカー フットサル コラム 2023年10月14日

ベストの出来でないのに4ゴール! 新しい並びの最終ラインも安定していた

後藤健生コラム by 後藤 健生
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2ゴールをマークした田中碧

2ゴールをマークした田中碧

三笘薫をはじめとして何人かの選手が招集外あるいは招集辞退となった日本代表。森保一監督にとって、それは想定内のことだったのだろう。そして、森保監督はカナダ戦で敢えて代表経験の少ない選手や久しぶりの合流となった選手を積極的に起用した。

最近の試合で多くの出場機会が与えられていた選手はカナダ戦とチュニジア戦に分散させて、その分、さまざまな“新しい組み合わせ”をテストしようという目論見なのだろう。

たとえば、守備ラインでは板倉滉や谷口彰悟、菅原由勢、伊藤洋樹はベンチに置いて、右から毎熊晟矢、冨安健洋、町田浩樹、中山雄太という新鮮な顔ぶれが並んだ。

攻撃陣では、三笘不在の左サイドで中村敬斗が9月の欧州遠征に続いて抜擢され、トップ下にカタール・ワールドカップ以来の招集となった南野拓実が起用されたが、守備陣に比べれば手慣れたメンバーのように見えた。

いろいろなテストを兼ねたカナダ戦は、新しい組み合わせが多かったこともあって「完璧な出来」からはほど遠かった。

だが、それでも日本代表は4ゴールを奪って見事に勝利した。最強メンバーを組んで、最高のパフォーマンスを発揮したからではなく、新布陣のテストをしながらでもこうした勝ち方ができる。そのことが、今の日本代表の強さを示していると言えるだろう。

キックオフから20秒ほどで最初のチャンスを作った日本は、その後も猛攻を続けて、わずか1分20秒で田中碧が先制ゴールを決めた。田中にクロスを送ったのは毎熊だ。9月の遠征で初めて招集されて、アピールに成功したセレッソ大阪の右サイドバックだ。

ゴールシーンだけではない。開始直後に前線のスペースを見つけてタッチライン沿いにグラウンダーのパスを通して、南野につなげたのも毎熊だったし、その後も、同様にタッチライン際のパスで何度もチャンスメークに成功した。

A・デービスの攻撃を抑える毎熊晟矢

A・デービスの攻撃を抑える毎熊晟矢

しかも、毎熊がサイドで対峙していたのは、バイエルン・ミュンヘン所属でカナダの攻撃の軸、アルフォンソ・デービスだったのだ。押し込まれる場面もあったものの、デービスを抑えながら攻撃面でも貢献したのだから、森保監督の毎熊に対する評価は大きく上がったはずだ。

サイドバックといえば、左サイドバックで起用された中山も素晴らしい復帰戦だった。チームとしての約束事なのだろうか、右の毎熊と同じように縦へのスルーパスでチャンスメークをしながら、自らもオーバーラップを仕掛け、中村、田中とのコンビネーションで攻撃の厚みを増した。

左サイドバックには中山雄太が復帰

左サイドバックには中山雄太が復帰

センターバックとしてフィジカル能力の高いツートップを抑え込んだ町田も含めて、新しい顔ぶれの最終ラインは最後まで安定したパフォーマンスを示した。

2023年に入ってからの日本代表で、一つのウィークポイントと思われていた左サイドバックも中山の復帰でメドがついたようである。

さて、2分に先制ゴールを決めた日本代表は、その後も何度かチャンスは作っていたが、10分を過ぎる頃からカナダにパスをつながれて、押し込まれる場面が増えてしまった。

11分に伊東純也がデービスにかわされた場面があり、そこは遠藤航がカバーに入って事なきを得たが、直後には左サイドのFKからサイル・ラリンがヘディングシュート。

その後は、カナダが中盤でワンタッチ、ツータッチの短いパスを交換してからサイドを使って何度もチャンスを作った。そして、19分には左サイドをデービスとジョナサン・デービッドに崩されて、GKの大迫敬介が何とかクリアしたものの、VARが介入してカナダにPKが与えられた。

結局、デービッドのキックを大迫が体勢を崩しながらも残した足でクリアして失点を防いだが、10分過ぎからPKを与えるまでの10分間は明らかに日本が押し込まれていた。中盤でのプレスが効かなくなってしまったのだ。

日本の中盤は遠藤がアンカーで田中、南野が攻撃的インサイドハーフだった。一方、カナダは3バックでやはりインサイドハーフが2人おり、そこに両ウィングバックが関与することで、攻撃に入った時にはカナダが数的優位になってしまったことだった。

つまり、原因は中盤でのミスマッチだった。

ベンチでそれを見ていた森保監督はシステム変更も考えたというが、システムを相手に合わせるのではなく、自分たちのやり方で主導権を奪い返すことを期待したようだ。

結局、カナダにPKが与えられた時点で選手とベンチがやり取りを行い、ピッチ上の選手の感覚を取り入れて日本は遠藤と田中のダブルボランチ、つまり4−2−3−1に変更。この変更によって、日本は再びゲームの流れを取り戻した。

試合中にシステムを変更することによって試合の流れを変えることができるのも、今の日本代表の強さの一つだ。

こうして、25分以降は再び日本がボールを動かして相手を翻弄。さらに、前線でのプレッシングによって相手のミスも誘発させた。そして、伊東のクロスにスタッド・ランスの同僚、中村が合わせたり、中村がFKからゴールを狙ったり。さらには毎熊の強烈なミドルシュートを放つなど、多くの決定機を生み出した。

そして、40分に2点目を奪う。最後はオウンゴールとなったが、中山を起点に浅野、中村、田中、南野が絡んで左サイドで高速のパスが回り、カナダの守備陣が付いていけなかったことによって生まれたオウンゴールだった。

前半ゴールした中村敬斗、後半に足首を負傷し途中交代

前半ゴールした中村敬斗、後半に足首を負傷し途中交代

その直後には、カナダ選手の足が止まったことを見逃さなかった浅野がボール奪って、中村の得点をお膳立て。前半だけで3対0として勝負を決めた。さらに、後半開始直後にも、中山のスルーパスを受けた南野と伊東が浮き球をうまく処理してゴール前に落とし、強烈なボレーシュートで田中がこの日2得点目を決めた。

その後は、両チームが次々とメンバーを変えたことで、散漫な試合展開となったが、4点のリードを奪ったことで、森保監督は余裕を持って多くの選手を試すこともできた。また、中村の負傷は不幸な出来事だったが、このアクシデントによって急遽投入された旗手玲央も期待通りのプレーを見せてくれた。

多くの選手をテストした試合で4ゴールを奪ったことによって、日本代表の強さを改めて証明した試合だった。

中村のゴールを祝福する南野拓実

中村のゴールを祝福する南野拓実

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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