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最下位脱出へ!実力者・大津と相対する履正社の『堺決戦』! 履正社高校×大津高校マッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグWEST第16節】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史履正社高校の守備陣を束ねるキャプテン・石塚蒼空
大阪の雄・履正社高校にとっては、苦しい時間が続いている。現在はリーグ戦7連敗中。最後に勝利したのは5月20日にホームで行われた、第7節の米子北高校戦。実に4か月以上も白星から見放されていることになる。
前節のサガン鳥栖U-18戦が延期になったため、現状では直近のゲームとなる第14節のジュビロ磐田U-18戦にも1-2で敗れたことで、残留圏内となる10位に付けるその磐田U-18には4ポイント差を付けられ、暫定ではあるものの最下位。まずは浮上のきっかけを掴むために、久々の1勝を手繰り寄せたいところだ。
対する大津はここまで白星先行の暫定5位。34得点はリーグ2位の多さを誇り、攻撃力はプレミアの舞台でも十二分に通用している。さらに、後半戦に入った第12節の静岡学園高校戦以降は、4試合のうち3試合で無失点を記録しており、課題だった守備面も向上の一途を辿っている。
「夏に結構タフに試合ができたので、ちょっと大味な試合から、粘って粘ってというゲームができるようになってきています」とはチームを率いる山城朋大監督。良好な攻守のバランスを持続させられれば、さらに上位へ食い込んでいくことも十分に可能だろう。
履正社のキャプテンを任されている石塚蒼空は、ご紹介しておきたい好タレントだ。ここまでのリーグ戦では全15試合にスタメン出場。大半のゲームではセンターバックで起用されているが、メンバー構成によってはサイドバックでもプレー。「熱い気持ちと声が特徴」と自ら語るように、アグレッシブな姿勢が光る。
アピールポイントは「チームを鼓舞することと対人やヘディングの強さを見てほしい」とのこと。今季の履正社はここまで全試合で失点している上、なかなか結果の付いてこない状況だけに、石塚がどれだけディフェンスラインを統率して、相手のアタックを抑えられるかは、勝利に向けての最重要課題。ファン・ダイクや板倉滉を参考にしているという背番号5のセンターバックに、是非注目してほしい。
もう1人のキーマンには河野朔也を挙げたい。9番を託されていることからもわかる通り、主戦場にしているのはフォワードだが、第14節の磐田U-18戦では4-1-4-1のシステムを採用したチームの中で、中盤アンカーで登場。慣れないポジションながら奮闘する姿が印象的だった。
実は前半戦のラストゲームとなった第11節の横浜FCユース戦では、右サイドバックで先発出場しており、そのポリバレントさは履正社の大きな武器になっている。ただ、あくまでも本職はストライカー。どこで起用されるかは不透明でも、やはりこの男に掛かる期待がゴール前での仕事であることは言うまでもない。
大幅に失点の減った大津で、ここに来て存在感を高めているのが、最終ラインの中央で定位置を不動のものにしつつある吉本篤史だ。プレミアデビューとなった第3節の神村学園高校戦ではスタメン起用されたものの、5失点を喫して敗戦。そこからしばらくは出場機会が巡ってこない。
だが、インターハイで再びチャンスを掴むと、後半戦は完全にレギュラーへ定着。決して大柄ではないものの、昨年度のキャプテンを務めていた長身フォワードの小林俊瑛(現・筑波大)と練習でマッチアップを繰り返し、自信を深めたという空中戦にも威力を発揮する。「もっともっと良いフォワードとできるように学びながら、もっともっと活躍できるようにやっていきたいと思います」という意気込みも頼もしい12番のセンターバックが、大津のディフェンス陣を逞しく束ねている。
攻撃陣では、1年時から公式戦を経験してきた稲田翼をフィーチャーしたい。今シーズンのここまではフォワードとサイドハーフの両方で起用されており、リーグ戦でも碇明日麻に次ぐチーム2位の8得点を記録。プレミアの舞台でも勝負強さを証明している。
キャプテンの碇がJクラブへの練習参加で不在だった夏の時期には、田辺幸久と2人でチームを引っ張ってくれたと指揮官も認める稲田だが、そんな彼が自分のチーム内での立ち位置を語った言葉が面白い。
「自分は1,2年生と距離感の近い、気軽に話せる先輩になれたらなと思っていて、後輩にしっかり声を掛けることは意識しています。もともと誰とでも仲良くしたいタイプですし、自分たちの学年は人数が少なかったんですけど、少ないなりに絆だったり1人1人のつながりを強くしたかったですし、それが学年の強みになると思っていたので、1年生の時からそういうことをやってきたことが、トップチームでもできているのかなと思います」。
ピッチ内でも、ピッチ外でも、“潤滑油”としての役割を果たしている稲田の、得点に直結するプレーはもちろんだが、チームメイトと積極的にコミュニケーションを取る姿勢も、今シーズンの大津を支えていることは見逃せない。
会場はJ-GREEN堺のメインフィールド。ホームで歓喜の連敗脱出か、それともアウェイでも無失点継続で連勝か。高体連同士の“堺決戦”から目が離せない。
大津高校のマルチアタッカー、稲田翼
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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