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実力者揃い!両雄のハイクオリティな中盤トライアングルに要注目! サガン鳥栖U-18×ヴィッセル神戸U-18マッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグWEST第14節】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史前節で8試合ぶりのリーグ戦勝利を挙げたサガン鳥栖U-18
ピッチに歓喜の咆哮が轟いた。昨シーズンのプレミア王者・サガン鳥栖U-18は、第6節からまさかの7試合未勝利。苦しい時間が続く中で迎えた第13節の名古屋グランパスU-18戦で、選手たちは躍動する。前半に内丸寛太が先制点を奪えば、後半には池末徹平が追加点をゲット。守っても相手の攻撃を無失点に抑え、実に4か月ぶりの勝利をホームで手にしてみせた。
後半戦に入っての大きな変化は、システムを4バックから3バックに変更したこと。失点が多かったことから、時には5バックで守ることも辞さない形を採用しつつも、田中智宗監督は「逆にゲーム中でもオプションとして今までやってきた4枚に戻すこともできるので、そこは両方持ちながらやっていきたいとは思っています」と明言。今回の完封勝利は両システムのポジティブな併用を後押しするはずだ。
対するヴィッセル神戸U-18も、中断を挟んで迎えた後半戦は横浜FCユースに5-2で打ち勝つと、前節で対峙した東福岡高校もアウェイで2-1と撃破して連勝を達成。岩本悠庵や瀬口大翔など、前半戦は出場機会を得られなかった下級生が好パフォーマンスを発揮し、競争力もより高まっている。
「以前も誰かに『ヴィッセルは高体連っぽくていいね』と言われたことがあって嬉しかったんですけど、凄く彼らもポジティブにやってくれていますし、試合に出ていない選手もネガティブな行動もせずにやってくれていて、良い意味で単純なのも良いと思います(笑)」とは安部雄大監督。元気さと一体感も彼らが持つ大きな武器であることに疑いの余地はない。
お互いに連勝を狙って激突する今節のゲームでは、両チームのハイクオリティな“中盤トライアングル”にスポットライトを当てたいと考えている。
鳥栖U-18の前節に当たる名古屋U-18戦の中盤には、アンカーに池末が、インサイドハーフに山崎遥稀とキャプテンの先田颯成が並んでいた。池末は再開初戦となった神村学園高校戦でプレミアデビューを飾ったばかりの選手。前半戦はプリンスリーグ九州に臨むセカンドチームで実戦経験を積み、実力を伸ばしてきたことで定位置を射止めてみせた。
180センチ近いサイズを誇りながら機動力も十分。中盤の底でバランスを取りながら、機を見た攻撃参加にも積極的で、名古屋U-18戦でもゴール前へと果敢に飛び込んでいったことが、勝利を手繰り寄せるゴールに繋がった。これからプレミアの舞台で経験を積んでいけば、さらなるステップアップも期待できそうな注目株だ。
山崎は本来フォワードの選手だが、ここ最近は中盤での起用も増えている。その理由の1つは「プレスは(楢原)慶輝くんに教えてもらいました」と自らも語る守備面での献身性。二度追い、三度追いは当たり前で、プレスのスイッチを入れる役割も担ってきた。だが、今シーズンは全13試合に出場しながら、ここまでノーゴール。得点を渇望する“ストライカー”の覚醒が待たれている。
チームを束ねる先田も、攻守に効果的なプレーを90分間続けられるハードワーカー。2列目からの飛び出しでゴールに迫るシーンも多く、リーグ戦ではチームトップタイの4ゴールを記録するなど、得点力も有している。久々の勝利を掴んだ前節の試合後には「次もホームですし、今日みたいなゲームができればいいかなって。ここでまた負けてしまうと今日の勝利の意味がないですし、これを今後に繋げていきたいと思うので、しっかりここからどんどん勝って、勝って、勝って、もっと上位争いをしていきたいと思います」ときっぱり。これ以上負けられないチームの中で、この男のキャプテンシーはとにかく頼もしい。
東福岡に競り勝った前節の一戦では、神戸U-18の中盤は岩本悠庵、坂本翔偉、濱崎健斗の3人で構成されていた。アンカーの位置に入ったのは岩本。奇しくも鳥栖U-18の池末同様に、この選手も後半戦から定位置を掴んでいる。課題の守備面の改善が出場機会の増加に繋がっているようだが、「キックには自信がありますし、ビルドアップの時に相手を1枚剥がしたり、前に供給したりというのも特徴です」と本人は自己分析。クリムゾンレッドの2年生アンカーが攻撃面で違いを見せることが、勝利を手繰り寄せるためには必要不可欠か。
攻守をコネクトする10番でキャプテン、坂本翔偉の存在も見逃すわけにはいかない。抜群のフィジカルを生かしたドリブルやタックルは迫力満点。決して声を張り上げるタイプではないものの、背中で語るリーダーシップがチームを束ねていることは間違いない。前半戦の鳥栖U-18戦では後半終了間際に執念の同点ゴールを挙げており、相手との相性の良さを感じているであろうことも追記しておこう。
そして最近のプレミアでは“無双状態”に入りつつあるのが、1年生レフティの濱崎だ。東福岡戦でも2ゴールに絡むプレーでチームの勝利に貢献しながらも、「何回かボールを受けて前向きでシュートまで行けたんですけど、最後を決め切るところが課題かなと思います」と無得点だったことへ目を向けているあたりに、強い向上心も滲む。
メッシやディバラを参考にしているという最大の特徴のドリブルは、わかっていてもなかなか止め切れないレベル。「来年にはトップに練習参加して、Jリーグの試合に出て、もう1個上の代表にも入って、日本全体に知られる選手になりたいと思います」と言い切るメンタリティも魅力的。43番を背負う小柄な16歳から目が離せない。
鳥栖U-18と神戸U-18は昨シーズンの覇権を争ったライバルでもあり、最後は勝ち点で並んだものの、得失点差で鳥栖U-18が初昇格初優勝を鮮やかにさらっていった。そんな因縁も含めつつ、上り調子の両雄の激突は好ゲーム必至。とりわけ中盤のハイレベルな攻防には是非注目してほしい。
ヴィッセル神戸U-18・濱崎健斗
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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