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U-18日本代表が、0対1のスコアで同韓国代表に敗れた。静岡県内各地で開かれているSBSカップ国際ユース大会の初戦だった。
各カテゴリーの日本代表は、このところ久しく韓国に負けていなかった。
2021年3月に札幌で行われたフル代表の親善試合で日本が3対0と完勝。以後、たとえば国内組だけで行われたE-1選手権や各年代別の対戦で日本は勝利を続けた。しかも、ほとんどが同じ「3対0」というスコアだった。
最近では、7月にあったU-17アジアカップ決勝でも日本は韓国を3対0で破って優勝を決めている。
かつて、1960年代から70年代にかけて日本が韓国に1勝もできない時代もあった。Jリーグができて日本が強化されてきてからでも、韓国に連勝することはなかなか難しいことだかった。
そんな歴史を考えれば“夢のような”時代なのだが、韓国側からしたらたまったものではない。韓国にとって、サッカーというのは第2次世界大戦前の日本の植民地統治を受けていた時代から「日本人に勝てるスポーツ」としての自負があったはずだ。
それだけに、8月17日に静岡市の草薙陸上競技場で日本と対戦した韓国チームはかなり本気度が高かった。
日韓両国のU-18代表は2025年に行われるU-20ワールドカップを目指して立ち上げられたばかりのチーム。現在はまだ「選手の発掘」の段階で、一つひとつの試合の勝敗はさして重要ではないのだが、韓国は現段階での最強メンバーを組んで来日したらしい。
それでも、序盤戦は完全に日本がゲームを支配していた。
選手が動き直しをして細かくポジションを変えることによって複数のパスコースを作り、ワンタッチ、ツータッチのパスを回す。また、裏に走る選手がいれば、ロングボールも織り交ぜて、日本はバリエーション豊かに攻撃を組み立てた。
一方、韓国も後方からビルドアップを試みるのだが、パスコースが単調なので日本の守備陣に簡単にカットされてしまう。
そんな展開を見て、僕も「おやおや、また3対0かな?」とついつい楽観的な気持ちになってしまった。
しかし、そんな楽観は長くは続かなかった。
12分、韓国は右サイドバックのチェ・スングから左に大きく展開。そして、今度は左サイドハーフのペク・ミンギュが右に大きく折り返す。そして、右サイドでイ・ゴニがスピードあるドリブルで右突破。イ・ゴニが入れた強いクロスは日本のDFに当たって、日本のゴールポストを直撃した。
この韓国の決定機を機に、韓国が攻撃を仕掛ける場面が増えていった。16分にもFKからつないで、左右に大きく振ったダイナミックな攻撃で韓国はCKを獲得している。
韓国は、序盤の戦いを通じてパスをつなぐ能力では日本に劣っていることを自覚したのだろうか、この2度のチャンスの後はスピードと高さを生かして、徹底してロングボールとサイドチェンジ、そして強いクロスを武器に日本に闘いを挑んできた。
日本はワントップには突破力があり、フィジカル勝負でも韓国のDFに負けない塩貝健人(慶応義塾大学)がいたが、2列目にはテクニシャンタイプが並んだ。右から松田悠世(桐光学園高)、鈴木陽人(名古屋グランパスU-18)、中川育(サンフレッチェ広島FCユース)である。そして、ボランチは川崎フロンターレの尾川丈と大関友翔が組んだ。
また、左サイドバックの池田春汰(横浜F・マリノスユース)はインナーラップ、オーバーラップを多用。左サイドハーフの中川と入れ替わるように仕掛けた。また、右サイドバックの桑原陸人(明治大学)は松田とのコンビネーションを使ってサイド攻撃も多彩だった。
ちなみに、GKは静岡学園高の中村圭佑。CBは喜多壱也(京都サンガU-18)と中光叶多(サンフレッチェ広島FCユース)だった。
日本がパスをつないで、あるいはドリブルを仕掛けて攻撃を試みるが、韓国は強い当たりで日本のパスを分断。前半の日本はボールを握る時間は長かったものの、アタッキングサードでのパス精度を欠いたことで、ボール保持率が高かった割りに決定機を作れなくなってしまった。
そして、後半に入ると韓国のダイナミックなパス回しに対して日本は明らかに劣勢となり、45分(後半5分)には日本側から見て左サイドのイ・ゴニが入れたクロスからゴール前に混戦が生まれ、逆サイドから詰めてきたカン・ミンソンに決められてしまう。そして、その後も韓国が優勢なまま80分が終了。韓国が勝利を飾った。
もっとも、劣勢に陥ったも日本にもカウンターからチャンスが生まれ、ポゼッションで上回っていた前半以上に多くの決定機が生まれたのは皮肉なことだった。
この数年、日本の若い世代の選手たちはフィジカル・コンタクトでも韓国にけっして劣ってはいなかった。だが、この静岡での対戦ではフィジカルと走力の劣勢は明らかだった。
攻撃陣でフィジカル勝負で戦えたのはトップの塩貝だけだった。もう1人、大きくて強いFWがほしいところだった。たとえば、今大会からU-18代表を率いるのは船越勇蔵監督だが、船越監督の現役時代のようなタイプの選手がほしいところだ。
あるいは、もっとパスの精度とスピードを上げて、韓国の守備陣をかいくぐるだけの能力を付けたいところでもある。
もっとも、現在のU-17日本代表は、先日のアジアカップでも見せたように得点力の高いチームであり、強さを持つストライカー・タイプの選手が何人かいる。11月のU-17ワールドカップが終われば、彼らも次のU-20ワールドカップに向けて合流してくるので、そこで解決への道が見えてくるのかもしれない。
さて、静岡の日韓戦は前半のうちからフィジカル勝負ともなり、激しいプレーが増えて、23分までにボランチの尾川と大関がそろって警告を受てしまった。今後も、アジアの戦いでは日本相手にフィジカル勝負を仕掛けてくる相手も多いはず。そうした戦いの中でも冷静に戦うことは必要だ。
現在のU-18日本代表の弱点が立ち上げの段階で明らかになったことはプラスに捉えたい。
最近の韓国は日本相手にもパス・サッカーで対抗しようとすることが多く、日本のストロングポイントが引き出され、その結果、日本の勝利に終わることが多かった。
しかし、日本が韓国と対戦するときに怖いのはやはりフィジカル勝負、スピード勝負に持ち込まれることだ。日本に対して久しぶりに勝利したU-18韓国代表の戦いはそんな構図を見せてくれた。今後も、韓国は日本の弱点を突いて戦ってくることだろう。
そんな相手の意図を克服して、韓国がフィジカル勝負を挑んできても、それを跳ね返し、また技術の力でこじ開けて勝利できるようにする……。それは、世界大会で日本が欧州勢、南米勢と戦うときにも必要な要素だ。韓国という、地理的にお隣の強豪国と戦わないのはもったいない。日韓両国の交流の活発化を期待したい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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