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準決勝を逞しく勝ち切って初の日本一に王手を懸けた明秀日立高校
令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技の決勝は、8月4日に旭川市の花咲スポーツ公園陸上競技場で12時よりキックオフされる。
注目の対戦カードは、ともにプレミアリーグ勢に競り勝ってきたチーム同士の関東対決に。4年ぶりの日本一を目指す桐光学園高校(神奈川1)と、初優勝に王手を懸けた明秀日立高校(茨城)が激突する。
2回戦から登場した桐光学園は、初戦で成立学園高校(東京2)を3-1で下すと、続く3回戦も帝京大可児高校(岐阜)に3-0で快勝。準々決勝ではプレミアリーグEASTで3位に付ける難敵の尚志高校(福島)を、MF齋藤俊輔のゴラッソで1-0と撃破。準決勝の国見高校(長崎)戦はPK戦にもつれ込む激闘を制して、2019年大会以来の決勝へと勝ち上がってきた。
一方の明秀日立は、1回戦で優勝候補との呼び声も高かったプレミアリーグWEST首位の静岡学園高校を、2-1で下す衝撃の幕開け。2回戦でも関西大第一高校(大阪2)を2-0で退けると、3回戦で今度はプレミアリーグEAST首位の青森山田高校相手に、終盤に挙げたFW根岸隼の決勝点で大金星をゲット。勢いそのままに準々決勝は高知高校を1-0で、準決勝は日大藤沢高校(神奈川2)を3-1で倒して、初めてのファイナル進出を決めている。
桐光学園は攻守のコレクティブさが際立つ。守備面では最後方からキャプテンのGK渡辺夏樹が常にポジティブな声掛けを続け、DF川村優介とDF平田翔之介の両センターバックも空陸ともに強さを発揮。右のDF杉野太一、左のDF加藤竣と両サイドバックも上下動を繰り返せるハードワーカーで、尚志戦では相手の強力なサイドアタッカーを丁寧に封じ込めた。
ドイスボランチのMF小西碧波とMF羽田野紘矢も、相手の懐に潜ってボールを奪い切れる守備力を完備。激戦となった尚志戦の後には、鈴木勝大監督も「運動量と安斎(悠人)に対してのカバーと、そういう部分に関してはベストに近いパフォーマンスだったんじゃないかなと思います」と称賛を惜しまなかった。
攻撃面では指揮官が「今のウチの生命線」と言い切る両ワイドが躍動。右のMF松田悠世は左利き特有のカットインも、縦への突破も魅力的。左の齋藤は前述したように尚志戦で豪快なゴールを沈めており、決定力も披露した。2トップに入るFW宮下拓弥は基点を創出し、FW丸茂晴翔は周囲を衛星のように動き回れるタイプで、補完性も十分。宮下は帝京大可児戦でハットトリックを達成しており、決勝でもその得点力に期待が懸かることは間違いない。
静岡学園と青森山田を倒して、一躍“台風の目”として脚光を浴びた明秀日立は、高い強度を1試合通して維持できるチーム力が武器だ。2年生守護神のGK重松陽はコーチングの声を絶やさず、仲間を鼓舞。キャプテンのDF山本凌とDF飯田朝陽で組んだセンターバックコンビは、日大藤沢戦でもうまくチームメイトを動かしながら、ゴール前に堅陣を敷き続けた。
サイドバックも個性的。右のDF長谷川幸蔵は攻守に躊躇なく飛び出せるアグレッシブさを有し、左のDF阿部巧実は日大藤沢戦の3点目をクロスで演出するなど、結果に関われる選手と言っていいだろう。
中盤にも実力者が揃う。バランスを取りつつも機を見た攻撃参加も光る大原大和と、左右に散らせる展開力も目を惹く吉田裕哉がドイスボランチとして中央を引き締め、右サイドハーフのMF柴田健成は縦突破で、左サイドハーフのMF益子峻輔はカットインで、相手ディフェンスに脅威を突き付ける。
そして、2トップはともに今大会2ゴールを記録。FW熊崎瑛太は献身的な守備にも特徴を持ち、FW石橋鞘は幅広く動き回って攻撃を活性化。ファイナル進出を手繰り寄せた準決勝では揃ってゴールを記録しており、ノッている状態で最後の1試合を迎えることになる。準決勝の試合後には、チームを率いる萬場努監督も「選手たちは明日のゲームに思い切って入ろうという精神状態になっていると思います」と控えめに自信を覗かせた。
ここまで桐光学園が1失点、明秀日立が2失点と、どちらも守備の安定感が光っており、ロースコアの痺れる展開が予想される中で、ポイントとなるのは後半の攻防だろうか。今大会の明秀日立は後半の飲水タイム以降に4つのゴールを集めており、前述した静岡学園戦も、青森山田戦も、後半アディショナルタイムの決勝点で、シビアな戦いをモノにしてきた。根岸隼や竹花龍生といった“ジョーカー”が終盤に何かを起こしてきた明秀日立と、それを起こさせたくない桐光学園の思惑のぶつかり合いには、決勝でも是非注目してほしい。
なお、この両者は7月17日に練習試合で対戦している。その一戦では3-1で明秀日立が勝利を収めているものの、萬場監督は「尚志とのゲームを見た時に、あの時の桐光学園とは全然別物だと思いました」と気を引き締める。この“18日後のリターンマッチ”という側面が、今回の大一番にどういう影響を及ぼすかも見どころの1つだろう。
普段の主戦場は桐光学園がプリンスリーグ関東2部、明秀日立が茨城県1部リーグを戦っているチームだが、それでもプレミア勢を力強くなぎ倒してきたことからもわかるように、そのクオリティは保証されている。4年ぶりの全国制覇か、初めての日本一か。今からキックオフがとにかく楽しみだ。
桐光学園高校の10番を背負う攻撃のキーマン、松田悠世
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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