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前橋育英高校・雨野颯真
全国高等学校総合体育大会、通称“インターハイ”のサッカー競技が、北海道の旭川市で7月29日に開幕する。各都道府県の予選を勝ち抜き、全国から集うのは52校。真夏の日本一を懸けて高校生たちがしのぎを削るこのインターハイから、J SPORTSでは準決勝と決勝を放送、配信することが決まっているが、今回は大会の顔となり得る注目選手たちをご紹介していこう。
前回大会王者・前橋育英高校の不動のゴールキーパーが、U-17日本代表候補でもある雨野颯真だ。徳島で開催された昨年度の大会も、レギュラーとして日本一を味わうなど、経験値は十分。今シーズンはキャプテンも任されており、「チームの流れを感じて発信する能力は必要だと思っていて、悪いところは自分がチームメイトにビシッと言わないといけないと思っています」とリーダーの自覚もしっかりと持ち合わせている。新チームの立ち上げ当初はほとんど主力が入れ替わったため、なかなか結果が付いてこなかったが、プレミアリーグの日常を積み重ねたことで、グループとしての成長も著しい。インターハイに向けても「一戦一戦どんな相手が来ようと簡単な試合はないと思うので、去年の経験を生かして、後ろからのコーチングやチームを締める役割をもっと徹底して、チーム全体で一層強くなって、全国に向かいたいと思います」ときっぱり。連覇をその視野に捉える守護神の躍動から目が離せない。
大津高校・碇明日麻
ミッドフィルダー登録ながら、プレミアリーグWESTで得点ランキングのトップに立っている、大津高校の10番を背負う碇明日麻も、今大会の主役候補であることに異論はないだろう。187センチのサイズを生かしたヘディングはもちろん、足元の上手さも兼備。「自分がゴールを決めてチームを勝たせたいですし、やっぱり点を決めることが一番楽しいですね」との言葉通り、ここまでのリーグ戦では既に2度のハットトリックを記録しており、10試合の出場で13得点は驚異的な数字。先日には水戸ホーリーホックへの加入内定も発表されたことで、一層注目が集まっている。将来の自分を「日本を代表するような、日本中から応援されるような選手になりたいですし、自分が日本中に夢や希望を与えられるような、目標とされるような存在になりたいと思います」と逞しく展望する、スケール感抜群のアタッカーにさらなるブレイクの予感が漂う。
神村学園高校・吉永夢希
大会ナンバーワン左サイドバックの呼び声も高いのが、神村学園高校の吉永夢希。見事に世界への扉をこじ開けたU17アジアカップでは、U-17日本代表の主力としてハイパフォーマンスを披露。アジアレベルのシビアな戦いの中でも、その能力の高さをきっちりと証明してみせた。春先からJクラブへの練習参加を繰り返す中で、「高校生だとスピードで抜けるところもあるんですけど、プロだったらスピードだけではなかなか抜けなかったので、自分の中で仕掛ける時のタイミングだったり、緩急を付けていくことは意識するようになりました」とプレーの幅も着実に広げている様子。得意の左足を存分に生かしたチャンスメイクは、高校生レベルを超越していると言っていい。珍しい名前については「希望を持って夢に向かう、みたいな感じで付けられました。メッチャ気に入っています」とのこと。希望を持って向かうのは、夢の日本一。神村学園の躍進は、この左の翼がしなやかに担う。
青森山田高校・小泉佳絃
プレミアリーグEASTで首位を快走し、優勝候補筆頭との評価も聞こえてくる青森山田高校。2年ぶりとなる夏の日本一を目指すチームで、センターバックを務めているのが、190センチの体躯を誇る小泉佳絃だ。その圧倒的な高さは守備時に生かされるのはもちろん、攻撃のセットプレー時にも、頭2つ分ぐらい抜け出すヘディングは、戦術上の重要なピース。プレミアリーグでもようやく中断前の前半戦ラストゲームで今季初ゴールを記録し、「ここまでに5ゴールぐらい決めたかったので、ここからたくさん獲っていきたいです」とは言いながら、少しだけ安堵の表情を浮かべていた。昨年度のインターハイ1回戦の帝京高校戦は、終盤に途中投入されたものの、ピッチで初戦敗退を突き付けられた。「去年の自分はスタメンで出られない悔しさもあったんですけど、チームとして負けた悔しさも凄くあったので、今年は改めて優勝を目指してやっていきたいと思います」とリベンジに意気込む“山田のハイタワー”には、攻守両面で注目したい。
静岡学園高校・神田奏真
こちらもプレミアリーグWESTで順位表の一番上をキープし、チームとしての総合力にも磨きが掛かっている静岡学園。そんな高校年代屈指のテクニック集団を、ゴールという確かな結果で引っ張る神田奏真も充実したシーズンを送っている。リーグ戦ではここまで全11試合にフル出場を続け、試合数を上回る12得点をマーク。インターハイの県予選決勝でも敗色濃厚のチームを土壇場で救う同点弾を叩き込めば、延長では勝利を手繰り寄せる決勝点もゲット。ゴールが欲しい大事な局面での勝負強さも際立っている。「去年からプレミアでやってきて、自分のストロングは出せていると感じています。でも、もっともっと強い相手が来た時にもできないといけないので、もっともっと練習して、誰も止められないぐらいの存在になりたいと思います」と宣言する“ガクエンのストライカー”が夏の旭川でどれだけ数字を残せるかが、明確に頂点を目指すチームの成績に直結することは間違いない。
市立船橋高校・郡司璃来
碇や神田、西丸道人(神村学園高校)などWEST勢に得点王候補が居並ぶ中、プレミアリーグEASTで一際異彩を放つこのストライカーを、忘れるわけにはいかない。名門の市立船橋高校で1年時からレギュラーを張り続けてきた、万能系ストライカーの郡司璃来だ。一番の持ち味は縦への推進力と高い技術を兼ね備えたドリブル突破だが、味方とのパスワークでも、機を見た絶妙な裏への抜け出しでも、それこそミドルレンジやロングレンジからでも、あらゆるパターンでゴールを陥れられるのが、この男の最大の魅力である。「自分は自分なりにやろうという感じなので、ライバルは特にいないです」と言い切るメンタルも極めて点取り屋向き。「今年は三冠を目標にやっているので、しっかりそれを獲れるように、自分が頑張って点を獲って、チームを勝たせられるようにしたいです」という“イチフナの10番”が、復活を期す名門を堂々と牽引する。
今回はこの6人にスポットを当てたが、それ以外にもまだまだ真夏の主役候補たちは、ブレイクの時を虎視眈々と狙っている。北海道の地ではどんな選手が爆発するのか。是非J SPORTSでその行方を見守ってほしい。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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