人気ランキング
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
コラム&ブログ一覧
池田太監督
7月20日に開幕するFIFA女子ワールドカップを前に最後の準備試合となったパナマ戦で、女子日本代表(なでしこジャパン)が5対0と完勝した。
大量5点を決めたことと同時に、ゴールのパターンの多彩さが目を引いた。
33分の1点目は左サイドの長谷川唯から右SBの清水梨紗への長距離のサイドチェンジのボールを長距離を走った清水がワンタッチでGKの頭上を抜いた。日テレ・東京ヴェルディベレーザの下部組織、メニーナ時代から培った2人の絶妙のコンビネーションだった。
遠くの味方の動きを見る眼は長谷川の大きな魅力だが、イングランドに渡ってマンチェスター・シティの中心選手として、強度の高い中でゲームを作る中で、その「遠くを見る眼」がさらに研ぎ澄まされえているようだ。
今大会の日本代表の浮沈の鍵を握る選手と言っていいだろう。
37分の2点目は左サイドでワンタッチパスを細かくつなぎ、最後は田中美南のスルーパスに走り込んだ長谷川が、今度は自らGKの動木を見てループシュートを決めた。
この場面、左サイドでボールに絡んだ遠藤純と宮澤ひなた、そして田中、長谷川と全員がベレーザ出身の選手だった。
男子日本代表で、最近は川崎フロンターレ出身選手のコンビネーションが話題になっている。たとえば、6月のエルサルバドル戦、ペルー戦では旗手玲央と三笘薫の連携が見事だった。代表チームに同じクラブの選手が何人かいれば、クラブでのコンビネーションを利用することができるのだ。
女子代表の場合も、現在は世界各国のクラブに散らばっているものの、ベレーザ出身選手が多数いるのは日本代表にとっての大きな強みと言っていいだろう。一方、守備的なポジションには浦和レッズレディース出身選手が多数いる。
さて、得点パターンの話を続ければ、3点目(60分)は左サイドを突破した宮澤のクロスを植木理子がスルーし、右サイドから中央に入ってきた藤野あおばが強烈なシュートを決めたもの。ここもまた、ベレーザ勢によるゴールだった。その直後(61分)には左サイドの宮澤から(浦和の)清家貴子につなぎ、清家のパスを長谷川がシュートすると、シュートが相手に当たってゴールに飛び込む。
そして、後半アディショナルタイム(90+2分)には相手のクリアを拾った浜野まいかのロングボールを高橋はなが触り、こぼれたボールをDFの南萌華が決めた。これは、コンビネーションと言えるものではないが、高橋と南は浦和でセンターバックとしてずっと組んでいたプレーヤーである。
ストライカー(前半は田中。後半は植木)にゴールが生まれなかったことと、セットプレーからの得点がなかったのが気がかりといえば気がかりだが、88分には猶本光の直接FKがゴールポストを直撃する場面もあった。
さて、こうして5点を奪った日本は、守備でも狙いを持った組織的な守備でパナマを完封。なんと、シュートを1本も撃たせなかった。
まさに「完勝」だった。
ワールドカップに向けての一つ気がかりだったのはコンディション面だった。
アメリカのクラブでプレーしている遠藤などを除けば、ヨーロッパのクラブでプレーしている選手も日本のWEリーグ勢も、それぞれのリーグ戦が終わってからシーズンオフに入り、かなりの時間が経過している。いわゆる「実戦」から遠ざかっているのだ。
しっかりオフが取れて疲労のない状態でワールドカップに向かえるのだが、逆に試合勘が失われた状況なのは心配だ。
日本代表は6月27日に千葉県内のJFAの施設に集合して合宿を開始。いったん解散した後、7月10日に仙台で再集合してさらに調整を続けてきた(パナマ戦の翌15日にはニュージーランドに向けて出発)。この合宿の間にも、トレーニングマッチを通じて試合勘を取り戻す準備も行って、最後の親善試合であるパナマ戦に臨んだのだ。
パナマ戦を見る限り、選手のコンディションはそろっているようだったし、完全にボールを支配する中でなかなか先制ゴールが生まれずに停滞した時間があったのは事実だが、その中で自分たちでテンポを上げることによって打開することもできた。
チーム状態は、池田太監督のプラン通りに上がっているようである。
ただ、ワールドカップ本番で強豪と戦うなら、さらに一段とギアを上げていく必要がある。
パナマ戦では、高い位置からプレスをかけて中盤で相手を囲い込んで狙い通りの位置でボールを奪うことができていた。
だが、それはパナマとのチーム力の差のおかげでもあった。プレッシングの強度がそれほど高くなくても、パナマの選手がミスを引き起こしてくれていたからだ。
最新の(6月9日付の)FIFAランキングによれば、日本は11位でパナマは52位。それだけの差があったのだ。
男子の(6月29日付の)ランキングでは日本は20位。そして、52位を見るとアイルランドが位置している。
男子の日本代表がアイルランドと対戦したとしても、そう簡単には勝てないだろう。ちなみに、51位はコートジボワール、53位はサウジアラビア。いずれも強敵であることは間違いない。
つまり、女子の場合は男子よりもランキングの上位と下位の実力差が大きいのである。ランキング20位のチームが10位以内の国に勝つことは、相当難しい。パナマ戦の「完勝」を評価する時には、その点も考慮する必要がある。
ただ、幸いなことに女子ワールドカップで日本が初戦で対戦するのはFIFAランキング77位とパナマよりもかなり下にいるザンビアであり、2戦目も36位と日本にとって“格下”に当たるコスタリカだ(ザンビアが準備試合でドイツに勝っているというのは不気味な情報だが)。
もし、FIFAランキングはかなり信用していいものだとすれば、日本はグループリーグでまず2勝できる公算が大きい。格下との対戦ではあるが、ワールドカップ本大会という緊張感を伴う2ゲームを通じてプレー強度を上げて、そして3戦目に強豪(ランキング6位)のスペインと対戦できる。
その時点で日本もスペインもすでに2勝してグループリーグ突破を決めている可能性も高いが、そうなれば、比較的楽な精神状態で対戦して、さらに調子を上げることもできる。
こうして、日本代表はグループリーグ3戦を通じてチームをベストの状態に持って行って、ラウンド16以降の戦いに備えることができるのだ。
この恵まれたスケジュールをうまく利用して、ザンビア、コスタリカ、スペインとの3戦をどのように戦ってチーム状態を上げていくのか……。それが、今大会の目標であるベスト4進出のために非常に大事になるはずだ。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
あわせて読みたい
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
人気ランキング(オンデマンド番組)
-
日本トリムPresents 第16回全国女子選抜フットサル大会 ~トリムカップ2024~ 決勝 埼玉県選抜 vs. 福岡県選抜
11月17日 午後1:30〜
-
【限定】Foot! THURSDAY Presents 土屋雅史の高円宮杯U-18プレミアリーグ 深堀りレポート!2024 #20
11月21日 午後10:00〜
-
サッカーニュース Foot! THURSDAY(2024/10/24)
10月24日 午後10:00〜
-
FIFA フットサル ワールドカップ ウズベキスタン 2024 決勝 ブラジル vs. アルゼンチン
10月6日 午後11:45〜
-
【会員無料】高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ 2024 WEST 第12節 大津高校 vs. ヴィッセル神戸U-18
11月1日 午後4:00〜
-
高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ 2024 EAST 第17節-2 尚志高校 vs. 前橋育英高校
10月6日 午前10:50〜
-
高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ 2024 WEST 第18節-1 ヴィッセル神戸U-18 vs. サガン鳥栖U-18
10月12日 午後2:50〜
-
サッカーニュース Foot! THURSDAY(2024/10/03)
10月3日 午後10:00〜
サッカー人気アイテム
J SPORTSで
サッカー フットサルを応援しよう!