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日本一への試金石!真夏の主役候補同士のガチバトル! 前橋育英高校×青森山田高校マッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグEAST第11節】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史前橋育英高校・石井陽
前半戦のラストゲームとなる第11節で、高体連同士のビッグマッチが実現する。昨年度のインターハイ王者の前橋育英高校が、一昨年度のインターハイ王者でもある青森山田高校をホームに迎える一戦は、7月末から旭川で開催される今年のインターハイに向けても試金石となる、大事な90分間だ。
前橋育英高校は10試合を消化して、5勝5敗とまったくのイーブン。開幕戦こそ川崎フロンターレU-18に完敗を喫したものの、そこから3連続完封で3連勝を飾ると、以降は勝ち負けを繰り返しながらも、経験値の少なかった選手たちがプレミアの荒波に揉まれて着実に成長。現在は2連敗中ではあるが、シーズン序盤に比べればチーム全体が格段に自信を纏ってきている。
一方の青森山田高校は、ここまで7勝2分け1敗で首位を快走。負けたのは第4節のFC東京U-18戦のみで、10試合で9失点はリーグ最少。守備の安定感はもちろんのこと、厳しいゲームでもEASTの得点ランキングトップに立つ米谷壮史を筆頭に、きっちり得点を重ねながら、勝ち点も順調に積み上げており、2年ぶりのタイトル奪取に向けて盤石の態勢を整えつつある。
今回の重要なゲームで勝敗のカギを握ってきそうなのは、両チームが伝統的に好選手を輩出してきたボランチの俊英たちだ。
昨シーズンは徳永涼(筑波大)と根津元輝(法政大)という世代有数の2人に加え、青柳龍次郎(早稲田大)まで加わり、激しいポジション争いが繰り広げられた前橋育英のボランチは、過去にもW杯を経験した山口素弘や、現在は同校のコーチを務める松下裕樹、元日本代表の細貝萌など、素晴らしいタレントを輩出してきた。
今季のこのポジションを託されている1人が、3年生の篠崎遥斗だ。昨年10月に手術を受けたこともあり、戦列に帰ってきたのはプレミア開幕直前の3月だったが、自身も「自分の特徴は左右両足のロングキックとゲームをまとめる力です」と言い切るように、高いゲームメイク力を発揮して、ピッチの中央に君臨。ここまで全10試合にスタメン出場を果たし、攻守のキーマンとして躍動している。
本人は小学生時代からタイガージャージに憧れがあり、角田涼太朗や田部井涼らを擁して選手権で初の日本一を勝ち獲った世代の試合は、スタジアムで見ていたという。「涼さん、根津さん、リュウジは風呂でもよく話したりして、『ボランチはどういうボールの受け方をするか』とかはいろいろ参考になりました」と先輩の影響も口にする篠崎が、チームをどうコントロールしていくかは、この試合でも勝敗の大きなポイントだろう。
篠崎とドイスボランチを組むのは、2年生の石井陽。前所属の前橋FC時代にはU-15日本代表にも選出されている16歳は、小柄な身体に高性能のエンジンを搭載しており、とりわけ守備面での予測や球際の強さには、“前橋育英のボランチ感”が漂っている。
篠崎同様にここまで全10試合でスタメン起用されており、「体を張るところや連動した守備はしっかりトレーニングからできています」とチームの成長を口にしながら、「ここからは攻撃のバリエーションを増やしていきたいですね」と課題も明確に捉えている様子。自分の想いや試合分析も含めてしっかり話せる“言語化能力”に優れたナンバー7も、間違いなく対青森山田のキーマンになってくるはずだ。
日本代表として2度のW杯に出場した柴崎岳や、5月のU-20W杯でもキャプテンとしてチームを牽引した松木玖生、その松木とコンビを組んでいた宇野禅斗など、プロの世界にも数々の才能を送り出してきたのが、青森山田のボランチというポジション。高強度という絶対的な軸はありながら、選手によってさまざまなタイプが輝いてきたイメージもある。
昨シーズンから、青森山田の要を任されてきたのが10番を背負う芝田玲だ。ここまでのリーグ戦では全試合にスタメンで登場し、2ゴール4アシストと数字もきっちり残してきたが、最大の魅力はその発信力。「自分は思ったことが全部口に出ちゃうんです」と笑うものの、言葉でチームを引き締められる能力は全国でも屈指だろう。
前節の昌平高戦は、自身が中学時代に所属していたFC LAVIDAの元チームメイトが相手のメンバーの大半を占めており、並々ならぬ気合で臨んだことは容易に想像できるが、その試合でゴールを記録しており、良いイメージで今節にも挑めるはず。プレースキックも含めた“数字”に直結するパフォーマンスを、芝田には期待したい。
その10番とドイスボランチを組んでいるのは、青森出身でもある2年生の谷川勇獅。昨シーズンは1年生ながらプレミアの後半戦から出場機会を得ると、中盤のフィルター役として先輩たちの中で臆せずにプレー。芝田との補完関係も抜群で、その能力を遺憾なく発揮した。
背番号も7番に変わった今季のプレミアは、ここまでやはり全試合でスタメンに指名され、堅守の一翼を担ってきた上に、前節の昌平戦ではショートカウンターからゴール前までスプリントを怠らず、自身のプレミア初得点もマーク。ここからのパフォーマンス次第では、U-17W杯のメンバー入りも夢ではないだけに、個人としてのステップアップを狙うためにも、もう一段階アクセルを踏み込みたいところだ。
昨シーズンの対戦では、どちらもホームチームが勝利しての1勝1敗。過去には高校選手権の決勝でも対峙したように、近年の両校が残してきた結果を考えれば、この一戦を高体連の頂上決戦と表現しても、決して言い過ぎではないだろう。実力者が居並ぶ中盤の攻防に注目しながら、激闘必至の90分間の“ガチバトル”を是非楽しみたい。
青森山田高校・谷川勇獅
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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