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『チームを勝たせる“絶対的な存在”へ。名古屋グランパスU-18を支える那須奏輔と石橋郁弥の決意と覚悟 高円宮杯プレミアリーグWEST 横浜FCユース×名古屋グランパスU-18マッチレビュー』
土屋雅史コラム by 土屋 雅史名古屋グランパスU-18・那須奏輔(13番)
笑顔で話していた3年生のフォワードは、少しだけ表情を引き締めて、こう言葉に力を込めた。
「僕らの代は中学から一緒のメンバーが多いんですけど、僕は小学校から一緒のメンバーもいて、最後の1年になるプレミアリーグは絶対に優勝したいですし、他の大会も全部優勝して、最高の瞬間をみんなで分かち合いたいとは全員が思っているので、それを実現するためには3年生がチームを引っ張っていくべきだと、みんなで意識してやっています」(那須奏輔)。
今シーズンの名古屋グランパスU-18で、ここまで戦ったプレミアリーグWESTの全10試合に出場しているのは3人の3年生と1年生の野中祐吾のみ。そのうちの1人が2トップの一角として、ここまでチームトップの3ゴールを挙げている3年生の那須奏輔だ。
2節まで前線でコンビを結成していたのは同じ3年生の貴田遼河だったが、ルヴァンカップで1試合2ゴールを叩き出した“相方”は、トップチームの戦力として既にJ1でも出場機会を獲得。その後は2年生の杉浦駿吾と連携を深めてきたものの、彼もU-17日本代表としてアジアの戦いに身を投じたため、最近は野中と2トップを組んでいる。
「オフシーズンも遼河と2トップを組んで、横にいる安心感もありましたし、『遼河がいればどんな相手でもやっていける』みたいな感じが自分の中にもあったんですけど、遼河がいなくなっても、相方になった駿吾は十分やれるとわかっていましたし、遼河とストロングは違いますけど、自分のストロングでチームを前進させなきゃいけないという決意はしてきました」。貴田の不在を受け、3年生として自分がチームを牽引するという覚悟をしっかりと定めてきた。
この日も野中が先制ゴールを記録し、右サイドで縦関係を組んだ森壮一朗と八色真人も持ち味を十分に発揮。スタメンに指名された3人の1年生が、のびのびと躍動する姿が印象的だったが、那須はやはり笑顔で“後輩”への想いを口にする。
「1年生はみんな勢いがあってゴリゴリ行きますし、そういう1年生の姿が刺激となって、『自分たちもやらないといけないな』と思いますし、逆に1年生にそう思わせているのは自分たち3年生だとは古賀さんも言っていたので、1年生を引っ張る存在にもっとなっていきたいです。ああ、僕は引っ張っていくキャラでは別にないです。1年生とかたぶんオレのことをナメていると思いますけど(笑)、仲は良いはずです」。優しい雰囲気と柔和な笑顔は、間違いなくグループの大事な清涼剤になっている。
左サイドハーフの位置から、アグレッシブなドリブルでの仕掛けで攻撃にアクセントをもたらしていたのは、那須同様にここまでリーグ全試合に登場している3年生の石橋郁弥だ。
そのポリバレントぶりは際立っている。開幕節と第2節は左サイドバックで先発出場。第3節こそ本職の左サイドハーフでプレーしたが、第4節では右サイドハーフ起用。複数のポジションを水準以上のクオリティでこなすこの男を、古賀聡監督もスタメンからは絶対に外さない。
「左サイドバックは難しいところもありましたけど、大田(湊真)もカバーしてくれましたし、攻撃では(鈴木)陽人が自分のやりやすい形でボールを受けたりしてくれたので、それは良かったです。違うポジションでも自分の武器を出せている部分もありますけど、自分の得意じゃないところを突かれてしまうと、味方に頼らざるを得ないというか、味方に助けられるシーンが多くて、そこはもっと自分の力を伸ばしていかないといけないかなと思います」。この言葉から、どのポジションにもポジティブに向き合っていることが窺える。
この日の左サイドバックは2年生の池間叶。アタッカー陣には1年生も揃う中で、石橋は自身の経験を“後輩”たちに還元しているという。「自分も初めてプレミアに出た頃は本当に緊張していましたし、縮こまったプレーをしていた中で、その気持ちを打ち破って思い切ってプレーできたのは、後ろにいたり横にいたりした頼もしい先輩のおかげだったので、自分がその立場になった今年は、1,2年生の選手たちが思い切ってプレーできるように、背中でも見せられるプレーを意識してやっています」。ここまでのチームを引っ張っている選手として、彼の名前を挙げる選手が多いのも、その意識の高さの一端を垣間見れば、大いに納得できる。
彼らには、どうしても良い結果を届けたい仲間がいる。長期離脱から帰ってきた矢先に、再び負傷に見舞われてしまい、今季中の復帰が難しくなってしまったという3年生の源平倭人だ。
「倭人とは中学生の頃から結構息の合ったプレーをしてきて、ユースでは1,2年はあまり一緒にプレーすることはなくて、3年生になってちょっとプレーできたんですけど、やっぱりやっていて凄く楽しかったんです。今は自分たちが勝利するごとに倭人も喜んでくれていますし、一生懸命リハビリもしているので、勝つ姿をずっと見せたいと思います」(那須)「自分は小3から倭人と一緒にやってきて、中学も高校も一緒にやってきたので、倭人のサッカーに対する愛情や熱量というのはよく知っています。復帰して3か月でまたケガしてしまったんですけど、その3か月も本当にもがき苦しみながら、その中でも楽しさを見出して生き生きとやっていたので、自分も倭人のためにも頑張らなきゃという想いはあります」(石橋)。大切な仲間の想いも背負い、彼らはピッチに立ち続けている。
再び表情を引き締めた那須が、口にした決意が印象深い。「僕はこのチームの1日1日の練習の強度は全国で一番だと思っているので、毎日の練習を大切にして、もっと成長して、このチームを勝たせる絶対的な存在になりたいと思います」。
この日のダメ押しゴールを記録した野田愛斗も、ファインセーブを連発したGKのピサノアレクサンドレ幸冬堀尾も、ここまでのチームを逞しく支えている3年生だ。それぞれが欠かせない『チームを勝たせる“絶対的な存在”』へ。今年も最上級生を中心に、名古屋U-18は着実に良いグループへと進化し続けている。
名古屋グランパスU-18・石橋郁弥
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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