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福田師王+大迫塁への大いなる挑戦。神村学園高校・西丸道人が漂わせる唯一無二の存在感 【NEXT TEENS FILE.】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史神村学園高校・西丸道人
どれだけゴールを重ねたとしても、満足することなんて決してない。見つめている背中は、ドイツへ渡った1つ年上のストライカーのそれ。今はメチャメチャ差があるかもしれないけれど、いつの日か必ず肩を並べ、追い抜いてみせると自身に誓っている。
「自分の中のゴールはずっと(福田)師王さんで、とてもすぐに追い付けるようなレベルではないですけど、まずは『神村は西丸だ』と言われるぐらいにまだまだやっていかないといけないですし、目に見える結果というところで、あの人を超えていかないといけないなと思います」。
既に12ゴールを叩き出し、プレミアWESTの得点ランキングトップを独走し続けている、神村学園高校の13番でキャプテン。西丸道人の目指すべき到着点は、まだまだこんなものではない。
「『オレが獲らないと勝てないな』という強い気持ちはあったので。点を獲る努力はチーム内で一番していたと思うんですけど、自分がいつも見ていたプレミアという舞台でこれだけ点が獲れていることには自分でも驚いていますし、間違いなく自信になっています」。
初めてプレミアリーグに参戦している神村学園の中でも、そう語ったストライカーの得点力は際立ちまくっている。開幕戦は昨年王者のサガン鳥栖U-18相手に2-3で敗れたものの、西丸は1得点を記録。左サイドから上がった吉永夢希のクロスを、強引に胸トラップで収め、ボレーで流し込んだ一連は、まさに“先輩”の福田師王を想起させるようなゴラッソだった。
「ボールが来た瞬間に『頭で逸らそうかな』と思ったんですけど、何となく師王さんの胸トラップが思い浮かんで、『これは行けるかな?』と思ってやったらうまく行ったんです。アレはとっさのプレーでしたけど、『上手かったな』と自分でも思いました(笑)」。ただ、この一発はあくまでも“序章中の序章”に過ぎなかった。
第2節のジュビロ磐田U-18戦で驚異の4ゴールをマークすると、続く大津高校戦でも3ゴールを奪い切り、2戦連続でのハットトリックを達成。それだけでは飽き足らず、以降も全試合で得点を挙げ続け、第7節までに重ねたゴールは12。だが、「3試合で8点までパッと行ったので、このまま行きたいと思っていたんですけど、今は『全然獲れていないな』と感じていて、『もっともっと下を突き放していかなきゃな』と思っています」と言い切るように、もう1試合1得点ぐらいでは満足できないぐらい、自身に課す基準を高めている。
引き継いだのは、福田が背負った“13番”だけではない。セレッソ大阪でプロの道へと足を踏み入れている大迫塁が巻いていた“キャプテンマーク”も、西丸の左腕に収まっているが、とりわけその重みを感じたのは、2月に開催された九州新人大会の時だったという。
「決勝の鹿児島城西戦で0-3で負けていた時にメンタルが折れたというか、『オレ、今日点獲れるのかな……』みたいな気持ちでずっとボールを追い掛けていた時間もあって、『キャプテンってキツイな』と思ったんです。その時は自分が声を出せなくて、チームも誰も声を出せなかったので、『それが今の自分の仕事なんだな』と感じたら、凄く難しいなって」。
それでも、その経験を無駄に終わらせるような男ではない。前述したプレミア開幕戦の鳥栖U-18戦も、3点を先行される展開を強いられたものの、西丸はチームメイトを鼓舞し続け、自ら1点差に迫るゴールを叩き込む。「鳥栖戦では0-3になった時に、『オレがやるしかない』と思ってやれていたので、それは九州新人からキャプテンとして少し成長しているのかなと思います」。福田と大迫。2人の偉大な先輩が担っていた役割を、一手に担い切る覚悟ももうとっくに整っている。
まだ年代別代表の招集歴はないが、意欲も十分。「前まではU-18の代表と聞くだけで『オレには無理やろ』と思うところもあったんですけど、ここに来て『やれるな』という実感はあるので、もっともっとプレミアで結果を残して、そこに食い込んでいって、ストライカーとしても世代の中心になっていかないといけないと思っています」。実際にこの活躍を考えれば、そのタイミングが来るのもそう遠い日のことではなさそうだ。
世代最高峰のステージは、新たな感覚を突き付けてくれている。「プレミアの試合だと勢いでは勝てないので、『相手をちゃんと見てサッカーするようになっているな』と感じています。プリンスの時より頭を使っていますし、今までならドリブルでゴリゴリ行くところを、パスで掻い潜ったりというところで、1つ1つのレベルが上がっていくことで、間違いなく成長できているなと思っています。これからもメチャメチャ楽しみですね」。すべては成長するために必要な種。この先で咲かせる大輪のために、あらゆることを吸収する貪欲さもしっかりと携えてきた。
1月の日本高校選抜で知り合った“先輩”たちからも、このゴールラッシュに対して連絡があったという。「和之介くん(古田和之介・履正社高校→関西学院大学)にも『オマエ、獲り過ぎやろ』と言われましたし、絆くん(小湊絆・青森山田高校→法政大学)も『オマエ、超えるなよ』みたいに言うんですけど、『オレは30点獲ります』と言っておきました(笑)」。
今のペースで得点を奪い続ければ、30点だって決して現実味のない数字ではないはずだ。神村学園の13番でキャプテン。西丸道人には周囲が思わず期待したくなるような、唯一無二の存在感が常に漂っている。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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