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サッカー フットサル コラム 2023年5月11日

10番の正当な継承者。青森山田高校・芝田玲が期す「毎試合ピッチの中で一番輝く選手」へのチャレンジ。 【NEXT TEENS FILE.】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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青森山田高校・芝田玲

胸に秘めた野心は、口に出した方がハッキリする。否が応でも注目されるチームで、注目される番号を背負うのだ。であれば、とことん目立ってやろうと自分の中での針を、そちらにもう振り切っている。

「自分が今年の1年間で目標にしているのは、『毎試合ピッチの中で一番輝きたい』ということです。10番についても、そんなに気負い過ぎるつもりはないですけど、軽いプレーはできないという想いは絶対にあるので、そこにはプライドを持ってやりたいなと思っています」。

松木玖生、小湊絆と引き継がれてきた、青森山田高校の10番を託される司令塔。芝田玲は『毎試合ピッチの中で一番輝く選手』へのチャレンジを自身に課している。

風下の前半は、ほとんど何もできないまま時間が過ぎ去った。FC東京U-18に敗れ、リーグ初黒星を喫した前節のホームゲームを受けて、アウェイに乗り込んだ大宮アルディージャU18戦。激しい風雨にさらされた最初の45分間は、1本のシュートも記録することなく、1点のビハインドを負って終了する。

だが、芝田は残された45分間に明確なビジョンを抱いていた。「前半はああいう形で自分もほとんど消えていましたけど、それでも自分の中では割り切っていて、『後半になればオレはできるな』と感じながらやっていました」。

「今年はどの試合も風が凄いんですよ。ホームではまだいいんですけど、アウェイでも強いんですよね(笑)。だから、前半が風下だとどうしても耐えるような試合になってしまうんですけど、自分たちはそういう試合ばかり経験しているので、後半で上手く気持ちを切り替えることはプレミアリーグを通じてできているところなんです」。

正木昌宣監督の喝も入った後半は流れが一変。まずはロングスローから同点に追い付くと、38分に10番が輝く。右サイドで得たCK。右足で蹴り込んだボールは、再び芝田の足元へ帰ってくる。

「いつもだったらインサイドでフワッとした感じで行くかもしれないですけど、あそこは勢いに任せて振り抜きました」。アウトサイド気味に叩いたボールは少し相手をかすめながら、飛び込んだ米谷壮史の頭にドンピシャ。スコアを引っ繰り返した青森山田はさらにもう1点を追加し、終わってみれば3-1と逆転勝利。連敗を阻止したチームは、リーグ首位の座に力強く返り咲いた。

「今年のチームはお互いに吸収し合うというか、人の話もしっかり聞けますし、発信もできますし、『みんなで、グループでやろう』というのは例年に比べてもかなりあるのかなと思います」と話した正木監督が、「芝田は攻守ともにそうですし、発言もそうですけど、自分の行動で示していけるんですよね」と続ければ、「自分はキャプテンですけど、芝田も同じくらいいつもやってくれますし、チームがやっていない時に鼓舞してくれますから」とはキャプテンの山本虎。周囲の信頼を集めていることが、2人の言葉からも窺える。

本人に自身の“発信力”を尋ねると、「自分は思ったことが全部口に出ちゃいますね(笑)。あまり抑え込みたくないので、そこは味方にもちょっと強く言っちゃっている部分もありますけど、その分褒めることもしてカバーしながら、自分の中でうまくやっています。自分が弱気になったらチームとしても終わりだと思っていますし、強気な姿勢は崩す必要はないと考えているので、チームのプラスになり続けたいですね」ときっぱり。やはり自覚的にグループを牽引していることは間違いない。

印象的な出来事があった。今年1月に開催された日本高校選抜の合宿は、3年生を中心にしたチームと、2年生以下で構成されたU-17のチームに分かれていたのだが、合宿期間中に合同で行われたミーティングがあったという。それに参加していたある高校の1年生が、こんな話をしてくれた。

「合同のミーティングの時は、U-17の選手はあまり挙手とかできなかったんですけど、青森山田の芝田くんは挙手して自分から意見を言っていたんです。その時に『明確な目標をいつも自分で持っているんだな』と思いましたし、そういうところで発言するにはメンタルも必要じゃないですか。そういう部分も参考になりました」。

この話を芝田にぶつけてみる。「自分はそんなにビビりたくないというか、そういう振る舞い方をしたいんです。『弱くいたくない』という気持ちもあるので、ピッチ上でもピッチ外でも、ドシッと構えていたい感覚はあります」。やはり自覚的に堂々と振る舞っていたのだ。いつもでどこでも変わらない自分を貫く姿勢は、やはり“10番の先輩”に当たる松木や小湊に通じるところも、確実にある。

この2年間で学んだことを、高校最後の1年間にすべて生かす決意も、きっちりと携えている。「1年生の頃の自分は全然試合にも絡んでいないですけど、勝つのが当たり前だった本当に強いチームを見てきて、去年はいざ自分が試合に出てみた時に、『勝つって当たり前じゃないし、簡単じゃないんだな』ということを思い知らされました」。

「その中で3年生になって、正木さんもコーチ陣も自分たちが掲げた“三冠”という目標に向かって本気でやろうとしてくれているので、『どれかタイトルを獲れればいい』とかそういう感覚ではなくて、『全部勝って、全部獲る』というような、そういう気持ちでやっていきたいです」。

その逞しいメンタルは、このグループの中でも際立っている。青森山田が誇る10番の正当な後継者。芝田の圧倒的な発信力とリーダーシップが、苦しい時ほどチームを救ってくれるであろうことに、疑いの余地は微塵もない。

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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