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『チームを勝たせられる10番に。ジュビロ磐田U-18・舩橋京汰が痛感する「ゴールを決め切る」意味 高円宮杯プレミアリーグWEST ジュビロ磐田U-18×名古屋グランパスU-18マッチレビュー』
土屋雅史コラム by 土屋 雅史ジュビロ磐田U-18・舩橋京汰
チャンスは間違いなくあった。だからこそ、決め切れなかった自分に対して、苛立ちと腹立たしさを隠せなかったのだ。もう自身の得点が、そのままチームの勝敗を左右することは、はっきりとわかっているから。
「今日も開始早々のシーンを決めていたら、たぶん流れはこっちに来ていたと思いますし、いつもそういう試合展開の中で、ここ3試合は全部自分が決め切れていないので、そこは自分の課題ですね」。
ジュビロ磐田U-18の10番を託されたストライカー。舩橋京汰はひたすらゴールを追い求め、ひたすらゴールを挙げ続けることで、自らの進むべき道を切り拓いていく。
その瞬間、思わず頭を抱えた。シーズン初勝利を懸けて、名古屋グランパスU-18と対峙したプレミアリーグWEST第3節。1点をリードされた61分。川合徳孟の素晴らしいスルーパスに反応した李京樹は、右から完璧なグラウンダークロスを中央へ。だが、右足で合わせた舩橋のシュートは枠の上へ。同点ゴールは奪えず、本人も、チームメイトも、頭を抱えて天を仰ぐ。
この日の10番に決定機は集まっていた。最初は前半の開始22秒。左サイドでボールを受け、そのまま枠内へシュートを打ち込むも、DFにブロックされた軌道はゴール右へ。1点を先制された直後の23分にも、再び左サイドを抜け出してフィニッシュまで持ち込むも、相手GKのファインセーブに阻まれる。
後半の“超決定機”も含めて、この試合で放った6本のシュートは空砲に。「今年はまだ全然シュートが入らないので、ちょっと自分の中で何が足りないのかもう1回見つめ直して、頑張りたいと思います」。0-2で敗れ、この日も白星を得られなかった責任を痛感している表情が、とにかく印象的だった。
昨シーズンのプレミアでは、前半戦こそ1ゴールとなかなか数字が付いてこなかったものの、後半戦に入ると12試合で9ゴールを量産し、チームの上位進出に大きく貢献してみせる。
「去年はケガで離脱した時期に、みんなが勝っているところも生で見ていて、『自分もその中に入りたい』と思っていましたし、悔しい想いは常にあったので、そういうことがあったからこそ、後期で自分が復帰して試合に出られた時に結果を残そうということは常に思っていたので、それが実際に数字として出たのだと思います」。プレミアの舞台で挙げた二桁ゴールは、言うまでもなく大きな自信になった。
今季は2種登録選手に登録され、4月5日にヤマハスタジアムで開催されたルヴァンカップのサガン鳥栖戦で初めてベンチに入ると、1点を追う88分にピッチへ解き放たれる。時間にして5分強。プロのピッチを経験し、舩橋は想いを新たにしている。
「あのサポーターの良い雰囲気の中でやらせてもらって、自分の中でも凄く良い経験になりましたけど、もっと長く出たかったなって。まずはプレミアで点を獲って、自分の価値や結果を出していることを横内さんに知ってもらいたいと思います」。
その試合ではスタメン起用されていた“同級生”の存在も意識しないわけにはいかない。昨年までU-18でともにプレーしていた後藤啓介は、一足早くトップ昇格を決めると、いきなりJ2開幕戦で2ゴールと衝撃のデビュー。以降もコンスタントに出場を重ね、既に4得点を記録。「凄いなと思いますけど、自分も頑張りたいという刺激になっています」という舩橋にとっても、後藤の活躍は小さくないモチベーションだ。
最大の持ち味はスピードを生かした裏への抜け出し。「自分の特徴である裏抜けというのはチームのみんなと共有していますし、今日も何回かは裏抜けがあって、チャンスがあったのに決め切れなかったので、フォワードは得点だと思いますし、そこは決め切れるように頑張りたいです」。結局はそこに集約される。フォワードは得点。あとは決め切るだけ。
この日も磐田U-18の出来は決して悪くなかった。それゆえに勝利の遠い現状にもどかしさが募るが、それを解消するためには自分が仕事を果たす以外に、チームの結果へ貢献する術はない。
「10番はそういう背番号なので、点を獲らないといけないと思いますし、チームを勝たせられる選手にならないとなという自覚はあるので、もっと強い責任感を持って頑張りたいです。マジで点を獲らないと、ですよね。ちょっと力むゾーンに入っているのかわからないので、点を獲れていた時期はどういう自分だったのかもう一度考え直して、次の試合に良いコンディションに持っていければと思います」。
一応補足しておくが、舩橋は初戦の米子北高校戦も、2戦目の神村学園高校戦も、きっちり1ゴールずつはマークしている。ただ、口を衝くのは「決め切れていない」というフレーズばかり。要は勝利に結び付く得点を叩き出して、初めて「決め切れた」という感覚を得るのだろう。
10番が決め切れば、必ずチームに結果も付いてくる。自分の得点で、サックスブルーに勝利の歓喜を。昨年以上にゴールを希求する舩橋には、やはり今シーズンも注目せざるを得ない。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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