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サッカー フットサル コラム 2023年4月11日

ラ・リーガでのレッドカードの出し過ぎ問題、今季はすでに109枚

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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ラ・リーガ

ラ・リーガのレッドカードの枚数は109枚

「ラ・リーガは世界最高レベルのリーグだが、解せないことがある。なぜプレミアリーグの退場者が28なのにリーガは100を超えているのか?」

セビージャのフェルナンドは試合後そう訴えた。退場者を2人出したセビージャはセルタと2-2で引き分けた。

ラ・リーガでのレッドカードの出し過ぎが問題になっている。移籍情報サイト『トランスファーマルクト』のデータによると、第28節を終えて(バルセロナ対ジーロナを除く)、ラ・リーガのレッドカード(一発退場+イエロー2枚による退場)の枚数は109枚。対してプレミアリーグは28枚。約4倍の差がある。プレミアの方が「激しい」と言われていて、消化試合数も多いにもかかわらず、この大差。

退場は試合を壊す。退場が勝敗が決めて面白いわけがない。ちなみに、私たちが熱狂したカタールW杯では68試合でレッドカードはわずか4枚だった。

ラ・リーガで何が起こっているのか?

諸説ある。この国で言われていることを挙げていこう。

(1)審判を欺こう、という文化がある。

典型的なのがPK狙いのダイブだし、大袈裟に痛がってゴロゴロ転がるというのもある。ダイブの方はVARでずい分減ったが、今季目立つのが顔を手で覆って痛がるアクション。顔に手が当たるとイエローが出るので、それ狙っているのだ。ビデオ再生で見ると、ちょっと当たったくらいで大袈裟なことも多々ある。興醒めである。

(2)反審判のスタジアムの雰囲気。

審判はブーイングの標的にされる。不利なジャッジ1つでスタジアム全体を敵に回すことになる。罵倒を浴びることも普通にある(これは週末の少年サッカーのグラウンドでも同じ)。敵意に囲まれた中で冷静なジャッジをせよ、という方が無理である。
この国には根深いジャッジへの不信がある。「審判はビッグラブを贔屓している」という見方を、クラブのフロントですら口にするのである。

(3)技術レベルが下がっている。

トラップがブレてこぼれたボールに足を入れ合って激突とか、スライディングのタイミングが悪くタックルが相手の足にまともに入ってしまうとか……。とはいえ、技術の精度は上がっているというのが常識。下がっているとしたら、スピードや運動量が要求される今のサッカーで「相対的に下がっている」ということはあるかも。ただ、この説に関しては検証のしようがない。

(4)「選手保護」がいき過ぎた。

今季の開幕前に危険なプレーを厳しくジャッジするよう、示し合せがあった。目的は選手をケガから守る、だ。昨季までただのファウルだったのがイエローになったこともあるに違いない。
だが、イエローの数はレッドに比例するほどには増えていない。なので、示し合せがあったのは事実だが、決定的な要因とは言い切れないのではないか。

そこで、私のオリジナルの意見を一つ。

(5)レッドの垣根が低い。

サッカー界にはルールブックに書いていない暗黙のルールがある。それが「レッドを出すのは慎重に」だ。

2枚目のイエローは1枚目のイエローと同じ基準で出してはいけない。例えば、先週末のセビージャ対セルタで、パペ・グエイェに2枚目のイエローが出されたプレー。彼は相手選手の足を踏んだ。ルールブックを厳密に適用すればイエローなのだが、2枚目だったし「わざと踏んだ」ではなく「踏んでしまった」のだから情状酌量があってもよかった。

もう一つ、同じ週末のエスパニョール対アスレティック・ビルバオで、アレイクス・ビダルに続けてイエローが出て退場させられたシーン。肩から当たりに行っているので1枚目は仕方がないが、アピールによるものだった2枚目は、省く手もあったのではないか。

芝生の上では、言っていけない言葉が思わず口をついたり、やってはいけないジェスチャーをしてしまうことがある。興奮状態で我を失っているからだ。なので、審判の方も時には聞こえなかったフリ、見なかったフリをしてもいいのではないか。

もちろん、試合のコントロールを優先し厳密にルールを適用しない、ということはすでに行われている。

同じ先週末のベティス対カディスでは、ミランダによる喉へのエルボーを流している。試合中のどんなアクションよりも一発レッドに相応しかったが、イエローすら出されず、VARも介入しなかった(その代わりに、ペジェグリーニ監督が血相を変えて怒り、直ちにミランダを下げた)。

あれをわざと見逃したのは、これ以上退場者を出して(あの時点で2人退場)、試合をさらに荒れさせたくない、という判断があったからだろう。それは正しかった、と思う。

今一度、「退場者をなるべく出さない」ためのジャッジを、プレミアリーグを参考に、検討し直すべきではないだろうか。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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