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だが、2023年のWBC決勝戦はそれとはまったく様相が異なった。
日本のピッチャーたちは速球で真っ向勝負を挑んでアメリカの強力打線をソロホームラン2本に抑え、日本のバッターたちはMLBのピッチャーからホームランを撃って対抗した。
そして、リードして迎えた8回と9回をダルビッシュ有と大谷翔平の黄金リレーでしのぎ、最後は大谷がマイク・トラウトを相手に100マイルの速球と“エグい”スライダーでねじ伏せた。ゲームの後半、ブルペンとベンチを往復しながら肩を作ってクローザーとして登板した大谷の姿は、まさに信じがたい光景だった。
WBCより4か月前の2022年11月にカタールで開かれたサッカーのワールドカップでは日本代表がワールドカップ優勝経験のある(彼らの優勝は、それほど遠い過去ではない)ヨーロッパの強豪、ドイツとスペインを連破してみせた。
WBC決勝を前に大谷は「憧れを捨てろ」と選手たちに声をかけたが、サッカーの日本代表の場合は、選手たちは「憧れ」という意識も「怖れ」という感情も抱いてはいなかったはずだ。
サッカーの場合、日本代表選手のほとんどはヨーロッパ各国のクラブに所属し、毎週のリーグ戦で日常的にヨーロッパの強豪クラブと対戦しているからだろう。野球の場合、「憧れ」があったのは大半の選手が日本のプロ野球(NPB)に所属していたからだったのだろう。
とにかく、今ではベースボールの世界で日本がアメリカと互角に近い戦いをして勝利することができるようになり、サッカーではヨーロッパの強豪相手に勝利することが可能になった……。
どちらも、30年前には考えられないことだった。
野茂英雄がロサンゼルス・ドジャースで活躍して、日本人投手がMLBでも通用することを証明して見せたのが今から28年前の1995年。シアトル・マリナースのイチローが打者として成功したのが2001年のことだった。
一方、サッカーの世界では30年前には日本はまだ一度もワールドカップに出場したことがなかった。Jリーグ開幕が1993年で、三浦知良(カズ)がイタリア・セリエAのジェノアに入団するのが1994年。そして、「ドーハの悲劇」と「ジョホールバルの歓喜」を経て、初のワールドカップを経験したのは1998年のことだった。
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