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サッカー フットサル コラム 2023年2月28日

バレンシアに敗れたシルバ不在のソシエダ、失点シーンの分析で見えてくるデメリット

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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久保建英

久保建英

レアル・ソシエダがバレンシアに敗れた(1-0)。久保建英はいつものレベルではなく、73分に途中交代した。とはいえ、チーム全体が低調で特に彼が悪い、というわけではなかった。

唯一の失点は久保のボールロストからだった。この失点シーンを分析することで、久保の特性と今のチームの問題点が見えてくる。

この日の久保は[4-3-3]の1列目右でスタート。15分過ぎにはポジションチェンジして久保が左、オヤルサバルが右になるものの、[4-3-3]は維持したままだった。

で、問題の39分がやってくる。

この時、久保はオヤルサバルと同じ左サイドで2度のボールロストをする。2度目のロストでボールを奪ったのは相手右SBフルキエ。フルキエが前進するとボールをもらいに来たのは相手1トップ、ウーゴ・ドゥーロ。クサビを受けたウーゴが間髪置かず逆サイドの左SBラトへ展開(このプレーがうまかった!)。ラトが左ウイングのリノに渡してセンタリング。それがカットしようと飛び込んだ右CBスベルディアに当たってオウンゴールとなった。

不運の失点のように見えるがそうではない。
右サイドの久保が左に行けば右サイドが空く。そこをカバーするはずのブライスはトップ下の位置にいて間に合わない。この時点でソシエダの右サイドは久保とブライスが不在で右SBバレネチェア1枚のみになっていた。

守備の頭数が2枚も欠けて失点しないわけがない。スベルディアは相手シューターに囲まれていた。オウンゴールにならなくても失点は間違いなかったろう。

問題はなぜ久保が左にいたのか、ということだ。
先週のこのコラムで、久保が左に流れる可変システムには「メリットよりもデメリットが大きい」と書いた。そのデメリット──久保が放棄した右サイドに穴が開く──が現実になったシーンだった。
ただ、失点後も久保は左に流れ続けた。「可変」と呼ぶにはあまりに長い時間、こだわり続けた。

そのうち、“久保が[4-3-3]の右トップではなく、[4-4-2]中盤ダイヤモンド型の頂点、つまりトップ下としてプレーしているのかも”と思うようになった。

[4-4-2]にしてはオヤルサバルが左サイドに張り付き過ぎて左FWとして機能していないし、セルロートも右FWというよりもCFとして振る舞っているようにも見えた。よって[4-3-3]の可変にも見えたのだが、久保がトップ下ならば再三、左に流れることをチームが許容していることも理解できる。

ここからは久保が[4-4-2]、ダイヤモンド型の頂点、つまりトップ下だったと仮定して、久保トップ下の問題点を指摘しておきたい。

あの失点シーンでトップ下久保はなぜ左に流れたのか? 言うまでもなく得意技のドリブルを出すためだ。

トップ下は「司令塔」と呼ばれる。長短のパスを操ることで周りを動かすからだ。
例えば、シルバであれば得意技はパスだから司令塔らしく振る舞える。左から崩そうとしても彼自身は左へ動くことなく、左へパスを送り込めばいい。

だが、久保は違う。得意技はドリブルだから左から崩そうとすれば彼自身が左へ動かないといけない。で、動けば守備に穴を開ける可能性は常にある。

加えて、ドリブラー(久保)はボールロストの当事者になり易く、ロスト後のプレスでは背走しないといけないからファーストプレスには間に合わない。対して、パサー(シルバ)がパスミスをしたとしても前へのパスであれば、ロスト地点に真っ先に駆け付けることができる。

まとめれば、トップ下のパサーはチームの陣形を崩す危険性が低く、ロスト後のリカバリーもし易い。久保のようなドリブラーがトップ下になると陣形を崩す危険性が高く、自分ではリカバリーも難しい。

何度も書いてきた通り、ソシエダの[4-4-2]中盤ダイヤモンド型のトップ下を務められるのは、シルバしかいない。彼不在なら何か手を打たないといけなくて、それが「久保主導の可変システム」とか「久保トップ下」だと思うが、いずれの理由にせよ、久保が左に流れて右サイドを空けるのはメリットよりもデメリットの方が大きい。

シルバの復帰は3月の予定だが、今日(2月27日)現在、まだ全体練習には合流していない。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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