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シービリーブスカップでカナダに快勝したなでしこジャパン
女子日本代表(なでしこジャパン)がカナダに3対0で快勝した。2月22日(日本時間23日)に行われた「シービリーブスカップ」の最終戦である。
毎年、アメリカで開催されている親善大会「シービリーブスカップ」だが、今年は日本ではテレビ放映もネット配信も実現しなかった。
2011年に女子ワールドカップでなでしこジャパンが優勝して以来、女子サッカー人気は高まり、女子の海外遠征ではほとんどの試合が地上波を含むテレビ中継で視聴できた。
だが、2015年のワールドカップで再び決勝に進出した後、女子日本代表の成績は低迷。2021年の東京オリンピックでも準々決勝敗退に終わり、次第に関心が低下していた。
今年の「シービリーブスカップ」の中継がなかったことは、そんな現実を象徴するような出来事だった。
2011年当時に比べて日本の女子サッカーは選手層が厚くなって、実力は間違いなく上がっており、昨年のU-20ワールドカップでも決勝進出に成功している。しかし、最近の10年間でヨーロッパ各国で女子サッカーの人気が上がり、各国の戦力が急速にアップ。フル代表レベルでは、なかなか強豪国に勝てない状態になっている。
その結果、女子サッカーへの関心は高まらず、女子団体スポーツで初のプロ・リーグとして一昨年発足したWEリーグの人気も低迷。観客動員は目標とされていた5000人に遠く及ばない状況が続いている。
こうした状況を覆すには、やはり代表の活躍は必須。今年の7月にオーストラリアとニュージーランドで開催される女子ワールドカップでの活躍に期待したいところだ。
しかし、東京オリンピックの後、池田太監督が就任したものの強化は簡単には進んでいなかった。
2022年のアジアカップでは準決勝で中国に引き分けに持ち込まれてPK戦負け。その後、“格下”相手の親善試合やE-1選手権(東アジア選手権)では勝利していたものの、昨年11月のヨーロッパ遠征では“格上”のイングランド、スペイン相手に連敗を喫し、「シービリーブスカップ」のブラジル戦、アメリカ戦にも敗れて国際試合で4連敗。しかも、4試合連続ノーゴールに終わっていたのだ。
カナダ戦の3対0の勝利は、連敗を断ち切り、得点力不足を覆す結果だった。カナダは女子代表の待遇改善を求めて協会と対立する状況にあり、チーム状態は万全ではなかったかもしれないが、東京オリンピックで金メダル・チームであり、FIFAランキングでも6位と日本にとって“格上”の相手だった(ちなみに、日本が4連敗した相手はイングランドがランキング4位、スペインが7位、ブラジルが9位、そしてアメリカが1位と、11位の日本にとっていずれも“格上”だった=最新のFIFAランキングは2022年12月現在のもの)。
さて、池田監督の下、女子日本代表は昨年秋以来3バックに挑戦している。
なでしこジャパンはこれまでずっと4バックで戦ってきており、本格的に3バックを採用したのは昨年秋が初めてだった。
思い切った方向転換だった。なにしろ、昨年の10月6日のナイジェリア戦で初めて3バックを採用した時点で、ワールドカップ開幕まで9か月しかなかったからだ。
ナイジェリア戦より前の、2022年7月から8月にかけてコスタリカで行われたU-20女子ワールドカップでも、池田監督が指揮を執ったU-20女子日本代表(ヤングなでしこ)は3バックで戦って準優勝という結果を残していた。
だが、ナイジェリア戦の後、池田監督はU-20ワールドカップよりずっと前から3バックは計画していたとして、「バリエーションを増やしたい」とその狙いを語っていた。
ナイジェリア戦と、続くニュージーランド戦はともに2対0で勝利したが、相手は“格下”。3バックも破綻はしなかったものの、まだ、手探りの状態だった。
その後、女子日本代表は強豪相手に3バックで戦い続けて戦術的な理解を深めていった。ナイジェリア戦は右から高橋はな、三宅史織、熊谷紗希という並びだったが、その後は中央に熊谷、右に三宅、左に南萌華というメンバーで固定することで連携は深まっていった。
11月11日のイングランド戦は0対4という大量失点をしたものの、同15日のスペイン戦、そして「シービリーブスカップ」のブラジル戦、アメリカ戦はいずれも0対1というスコア。強豪相手に3試合連続の1失点というのは、守備面では悪い結果ではない。
問題は、つまり点が取れないことだった。3バックからウィングバックを使ってボールを運び、フィニッシュの形を作ることがなかなかできなかったのだ。
しかし、「シービリーブスカップ」のアメリカ戦では、ランキング1位の「絶対女王」アメリカを相手に、相手の3倍の15本のシュートを放つところまで攻撃力は高まっていた。そして、カナダ戦では相手の攻撃をほとんど完封しながらついに3ゴールを奪うことに成功したのである。
ただ、ワールドカップに向けての準備に使える時間は少ない。
今後の予定としては、4月にヨーロッパ遠征があり(デンマークとの対戦が決定している)、その後は最終合宿と国内での親善試合(対戦相手未定)を経て、ワールドカップ本番に臨むことになる。この期間に、ようやく光明が見えてきた3バックでの戦いをなんとか完成させ、攻撃力を上げていきたいところだ。
一つのポイントはウィングバックの人選だろう。
左サイドでは、杉田妃和と遠藤純が起用されてどちらも安定したプレーをしている。一方、右サイドはまだ流動的。「シービリーブスカップ」ではブラジル戦、アメリカ戦では清水梨紗が先発。カナダ戦では清家貴子が先発して先制ゴールを決めたが、後半は清水が出場している。清水がファーストチョイスなのだろう。清水は4バックのサイドバックとしては日本最高の人材で、MFのダイナモである長谷川唯とのコンビネーションの良さも魅力的。だが、ドリブルでの推進力や得点力という面では、もともとFWで、浦和レッズレディースでは今もFWとしてプレーすることの多い清家の方が力強い。
また、今シーズン、INAC神戸レオネッサで右ウィングバックとして華々しい活躍を見せている守屋都弥は「シービリーブスカップ」で日本代表に初選出されたが、負傷のため離脱となってしまったが、もう一度はチャンスをもらえることだろう。
FWとしてはこのところ急成長し、WEリーグや皇后杯で大活躍している植木理子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)が国際試合でも通用できるように成長することを期待したい。
ワールドカップではグループCに入った日本。昨年のU-20ワールドカップ決勝で敗れるなど、最近、対戦機会の多いスペインと同居となった。おそらく、最終スペイン戦がグループ1位をかけた試合となるはずだ。そして、ラウンド16で対戦するのはグループAのチームなのだが、このグループには日本よりFIFAランキング上位のチームはいない。そして、準々決勝ではランキング1位のアメリカや前回の2019年ワールドカップのラウンド16で敗れた相手のオランダとの対戦が予想される。
ワールドカップ開幕まで、あと半年。女子代表に注目したい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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