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サッカー フットサル コラム 2023年2月21日

なでしこジャパン期待のルーキー・藤野あおばが強豪ブラジル、アメリカ戦で示した真価

サッカーニュース by 松原渓
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アメリカで開催中の女子サッカー4カ国対抗戦「SheBelieves Cup」に、なでしこジャパンが参戦している。
対戦相手はFIFAランク1位のアメリカ、同6位のカナダ、同9位のブラジルという強豪3カ国(日本は11位)だ。
日本は17日(日本時間)の初戦でブラジルに0-1で敗れ、20日にはアメリカと対戦し、0-1で敗れた。

2試合とも相手より多くのチャンスを作ったが、ゴールを決めきることができず、7月のワールドカップに向けて決定力不足は深刻な課題だ。一方、内容面では強豪国と互角以上に戦えており、収穫も多い大会となっている。また、強豪国と対戦する中で、個々の対応力も明確になってきた。

昨季、WEリーグでデビューし、瞬く間にブレイクした19歳のFW藤野あおば(東京NB)は、今大会はブラジル戦とアメリカ戦にフル出場。3トップの一角で持ち味を存分に発揮し、存在感をさらに強めている。
藤野の武器は状況判断の良さや、プレースピードの速さだ。足が速く、ドリブルやシュートモーションから振り抜くまでのスピードも速い。FW植木理子は「あおばの足の振りの速さはリーグでもずば抜けた強みだと思う」と語っていた。

【高校卒業から1年でなでしこジャパンに招集】

「他愛のないことでも、勝負事では勝ちを譲れないところがあって、熱くなってしまう」という生粋の負けず嫌い。プレーにはその負けん気の強さが表れているが、頭はいつも冷静で、感情的になることはない。オフザピッチでは謙虚な礼儀正しさや、どのような状況でも自分を客観視できる聡明さを感じさせる。

藤野は東京NBの下部組織出身だが、トップチームに昇格できず、中学卒業後は十文字高校(東京)に進学した。同校は部員数でも全国有数を誇る強豪校で、規律もある。藤野は同校で1年時からずば抜けた存在感を発揮し、年代別代表でも実力を発揮。3年時には主将を務め、「試合に出られない仲間の気持ちを背負って戦うことで最後まで走り切れたり、体を投げ出すプレーができる。その仲間意識が強まりました」と言うように、ピッチで結果を残し続けた。

そして、高校卒業後に東京NBから声がかかり、愛するクラブに復帰した。昨季、3月以降のWEリーグで毎試合のように結果を残し、昨年8月のU-20ワールドカップには飛び級で選出。背番号10を背負い、日本の準優勝に貢献した。

「(U-20ワールドカップで)世界の選手たちは本当に強いし速いし、なんだこの人!?というすごい選手がいっぱいいて、最初は驚きました。同じスタートで走るとスピードで劣る部分もありましたが、ポジションを早く取ることや相手との間合いを考えること、ボールの置き所を変えることなど、対応力はついてきたと感じます。フィジカルで圧倒されても戦えなくはない、と実感しました」
そのようにして海外勢に対する対応力を学んだ藤野は、高校卒業から1年足らずでなでしこジャパンに招集された。
昨年10月に国内で行われたナイジェリア(2-0)との国際親善試合でA代表デビューを果たし、続くニュージーランド戦(2-0)では攻守に躍動し、鮮烈な印象を残している。

「U-20ワールドカップではハードワークや守備の強さが求められていましたが。代表(なでしこジャパン)では攻撃的な部分で自分の役割を意識しています。そういう意味では、自分自身が出さなければいけない結果はゴールになってくると思います」
代表2試合目で、その明確な目標を口にしていた藤野。11月には、欧州王者のイングランド(0-4)、ワールドカップ同組のスペイン(0−1)との強化試合に出場。「球際での勝負のこだわりや、その強度をチーム内で求め合うことのレベルの高さが違った」と、世界トップクラスのチームとの差を痛感した。その一方で、局面ではボールキープや相手をいなすプレーなど、光るプレーも見せた。

今年1月の皇后杯では東京NBのタイトルに貢献。WEリーグではどのチームも藤野を警戒して二重、三重のマークをつけるようになったが、なかなかボールを奪われず、相手ゴールを脅かし続けた。そして、今年1月の皇后杯では東京NBで初タイトルを獲得した。

【強豪相手に示した調整力】

スピードを生かしたプレーの他に、相手の出方や特徴に合わせて自分のプレーを変化させたり、味方を生かしたりできる修正力も、藤野の特徴だ。

その力を、今大会でブラジルやアメリカにも発揮している。

ブラジル戦(●0-1)では1対1で果敢に仕掛け、チャンスを作り出した。一方、「打てるところでパスを選択してしまったり、最初の選択肢としてシュートが出てこないところが(得点力不足の)原因」と、課題を冷静に受け止めた。
2戦目のアメリカ戦(●0-1)はその反省を生かし、積極的にシュートを放った。前半37分に、ペナルティエリアの左すみで相手DF2人の間をドリブルで強引に割って入ったシーンは無謀にも思えたが、軽やかなタッチと緩急にDFが対応しきれず、MFリン・ウイリアムズがたまらず藤野に体をぶつけて倒した。笛は鳴らなかったが、25,000人を超える観客のため息を誘ったシーンだ。

世界女王のアメリカ相手に「相手の一本のチャンスで負けてしまったので、その責任は強く感じています」と敗れた悔しさを口にしたが、「戦える」という手応えも感じていた。
昨年のイングランド戦から、MF長谷川唯、DF清水梨紗、MF長野風花ら、海外組とのコンビネーションも試合ごとに向上しており、セットプレーのキッカーを任されるなど、チーム内での信頼も少しずつ得ているようだ。

藤野は「いずれは海外でプレーしたい」という思いを公言している。2011年になでしこジャパンのワールドカップ優勝をテレビで見たとき、藤野は7歳だった。
「アメリカの(アビー・)ワンバック選手のフィジカルに圧倒されました。でも、そこで互角に戦っている澤さんがカッコ良すぎて、すごいなと思って見ていたんです」

フィジカルで勝てなくても、世界と戦うことができるーー。そのシーンを目に焼き付けてから12年が経ち、藤野は今大会で自らそれを証明している。

日本時間23日に対戦する第3戦の相手は、東京五輪金メダルのカナダ。試合に出れば、相手は間違いなく藤野を警戒してくるだろう。そこで何ができるか。7月のワールドカップのメンバー入りに向けて、重要な一戦となる。

文:松原渓

松原渓

松原渓

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。

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